責難するは容易い、けれどもそれは何かを正すことではない | あざみの効用

あざみの効用

或いは共生新党残党が棲まう地

国を治めるということは、政を成す、ということですよね。いかに成すべきかを考えなければなりませんでした。どんな政を布けばいいのか、国をどう治めるべきなのかを考えて、国のあるべき姿を求めなければならなかったんです。…でも、砥尚様は、本当にそれを考えたことがあったのかな


(中略)


その理想って、ひょっとしたら、ただひたすら扶王のようではない、ということでできてたんじゃないかなって思うんです。扶王の課した税は重かった。だから軽くすべきだと砥尚様は考えたわけですよね。すると国庫は困窮し、堤ひとつ満足に作ることができなくなりました。飢饉が起こっても蓄えがなく、民に施してやることもできなかった。─そうでしょう?


人を責めることは容易いことなんですよね。特に私たちみたいに、高い理想を掲げて人を責めることは、本当に簡単なことです。


でも私たちは、その理想が本当に実現可能なのか、真にあるべき姿なのかをゆっくり腰を据えて考えてみたことがなかった気がするんです。扶王が重くしているのを見て、軽いほうがいいのにってすごく単純にそう思っていたような感じがする…


道に沿った理想の先に答えはあって、それ以外の答えはあり得無かった。試しに、とか、今のところは、なんてことさえ、砥尚様にはなかったような気がします。妥協を一切受け付けないほど、砥尚様は自分の抱いた華胥の夢に絶対の確信を持ってました。けれどもその確信は、扶王を責めることで培われた夢だったんです


                               小野不由美「華胥の幽夢」



780 :イラストに騙された名無しさん[sage]:2009/10/02(金) 22:44:16 ID:mkWxCpQy
本日の産経新聞の投稿欄に

「責難は成事にあらず」 この言葉とこのセリフが出てくる小説を鳩山さんは参考にして欲しい。

という旨の記事が載ってた。


954 :780[sage]:2009/10/04(日) 17:40:52 ID:swJNnTU8
ごめん、記事というより読者の投稿


「鳩山首相はこの作品参考に」

「責難は成事にあらず」。人を責め、非難することは何かを成すことではない。
小野不由美さんの小説「華胥の幽夢」の中にある文だ。小説は―
 王の施政を非難する人物が王になる。国権を欲しいままにし、国庫を食い荒らしてきた多くの官吏を罷免した。と、国の業務が立ち行かなくなった。
 また、猾吏の搾取によって困窮した民に重税を課すことはできない、と民を哀れみ税を軽くした。すると、国を治めるだけの費用をまかなえなくなった。結果は、国を荒廃させたまま退位することになる。
 高速道路無料化、ガソリン税などの暫定税率廃止、公共事業の見直し・・・鳩山内閣がやろうとすることは、国民にはうれしいことの山盛りのようにめるが、本当はどうなのだろう。自民党と官僚が行ったことを目くじらを立てるように排除するのではなく、きちんと考慮した上で施政にあたってもらいたい。


955 :イラストに騙された名無しさん[sage]:2009/10/04(日) 17:44:13 ID:PVBPggd+
>>954
初出時は、村山社会党のことかって言われてたんだよね。
時が過ぎるのは早いね。


743 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/20(土) 14:03:54 ID:2dWx8xpx
NG余裕でした

思ったんだが前世漫画事件の時のように
自分は胎果!あちらにいけば王!って騒ぐアホとか発生しなかったのかな
公表されてないけどそのせいで続き書く気なくしたとかさ


785 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/21(日) 22:31:34 ID:Zs+VpOKF
>>743
そりゃ「ぼくたま」って漫画かな?
時代もあるだろうけれど、何より元が小説だとなかなかそうはならんと思う

それと、「ぼくたま」は恋愛要素や、「疎外されたワタシ」とか「環境になじめないワタシ」とか「特殊能力のあるワタシ」的な、若者受けする要素がふんだんに盛り込まれているが、
「十二国紀」はファンタジーではあるが、ある意味リアルな根性モノ&説教系なので


786 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/21(日) 22:36:29 ID:MjR2/csD
うん、ある意味ストイック。
木蓮になりたい奴は山程いるだろうけど、普通の神経なら、陽子と成り代わりたい奴はそうはいない。


801 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/22(月) 02:12:27 ID:94cPO7Yr
>>785
>>786
厨ってのは恐ろしい生き物で見たくないとこは見ないんだよ
十二国記だって充分「疎外されたワタシ」「環境になじめないワタシ」「特殊能力のあるワタシ」「選ばれたワタシ」だってついてくる

ブームだった時にゆとりファンが「陽子かっこい~☆」「尚隆かっこい~☆」「あの二人くっつけばいいのに」「陽子には楽俊がいるじゃん♪」「陽子って逆ハーレムだよね~」
みたいな話で盛り上がってるのを聞いて、え?かっこいいとかこれそういう話なの?とアイデンティティが崩壊して以来どんなファンがいてもおかしくないと思っている。エロ同人や腐同人だってあるみたいだしな




確かに私には主上が非道に陥ったとは思われない。けれども、非道でないことが即ち正道であるとは限らないだろう。主上が間違いなく正道を歩んでおられるのなら、台輔に不調の起こるはずがないし、国の治まらないわけがない…



現実の人間には疵がある。不備があるんだ。全員が兄のように完璧じゃない。私は兄の語る理想が、まるでこの園林を作ろうとするもののように聞こえた。だが、国を作るということは本当の深山幽谷を作ることなんじゃないのだろうか。こんな小さな石じゃないんだ、現実は。本当の岩壁を動かして美しい峰を作り、水を動かし樹木を動かして景色を整えることなど、果たして人間にできるんだろうか


(中略)


私には兄の語ってくれる才が、美しい夢幻のように聞こえた。けれども、きっとそれをこそ理想と言うのだろうと、そう思っていたんだ。理想の才など作ることができるはずもない。そんなことは兄も承知で、常に念頭に置いて、一歩でも近づけるよう目指す─理想とはそういうもので、だからどんなに高くてもいい、高いからこそ理想と言うのだろう、と


(中略)


でも、兄は本当にそれを実現しようとしている。けれど─その国は、私に言わせれば牢獄だ


(中略)


だってそうだろう?兄の思い描く国には、愚かで無能な者の居場所などないんだ。官吏は総て道を弁え、決して私欲に溺れず勤勉で有能でなければならない。民は総て道を守り、善良で謙虚で、働き者でなければならない。そうでない者の存在など、端から織り込まれていないのだから。ではそうでない民はどこへ行けばいいんだ?国を追われるのか、殺されるのか、それとも絶対に悪心や怠惰を起こすことがないよう、監視され矯正されるのか?




今の状況に一番苦しみ、動揺しているのは砥尚であって当然ではないのか。砥尚には高い理想と自負があった。にもかかわらず、失敗してしまった。砥尚は失敗を認めないふうを装っているが、少なくとも才が華胥の国などではないことは、痛いほど分かっているだろう。もっと良い国にできるはずだった、良い王になれるはずだった─それを一番疎んじているのは、当の砥尚ではないのか




私たちは大逆など─してない、と言えるのだろうか。我々は革命に当たり、尊い地位を与えられながら、砥尚を助け、朝を助けることができなかった。みすみす民を苦しめ、不義をなし、主上に不忠をなしたことには違いない。ならば大逆の誹りは決して不当ではないだろう。大逆によって死を賜るなら、それも致し方ないように思う。




華胥華朶の見せる華胥の国は、理想郷の名ではないんだと思うんです。国のあるべき姿を見せてくれるんじゃない。


華胥華朶は正道を示さない。使った者の理想を形にして夢として差し出すだけなんだって



砥尚は王だ。我々とは違う。我々が問われるのは、官吏としての器量だが、砥尚が問われるのは王者としての器量なのだ





鳩山首相の退陣発言全文
>お集まりのみなさんありがとうございます。そして国民の皆さんありがとうございました。昨年の暑い夏の戦いの結果、日本の政治の歴史は大きく変わった。国民の判断は決して間違っていなかった。若く素晴らしい国会議員がすくすくと育ち、国会の中で活動を続けています。国民の判断のおかげであります。


 政権交代によって国民の皆さんの暮らしが必ず良くなるとの確信の下で、皆さんにお選びいただき、首相として今日までまいりました。皆さん方と協力して「日本の歴史を変えよう。官僚任せの政治ではなく、政治主導、国民が主役になる政治をつくろう」と思いながら今日まで頑張ってきたつもりであります。

今日お集まりの国会議員と一緒に、国民のために予算をつくれたことを誇りに思っています。子ども手当、高校無償化も始まっています。子どもにやさしい、未来に魅力ある日本に変えていこう。決して間違っていないと確信をしています。産業を活性化しなくてはいけない。特に1次産業が厳しい。農業の戸別所得補償制度がスタートしています。1次産業が2次産業、3次産業とあわせて再生する日も近いと確信しています


 さまざまな変化が国民の暮らしに起きています。水俣病もそうです。医療崩壊が始まっている地域をなんとかしないといけない。医療費をわずかですが増やすことができたのも国民の意思だと思っています


 残念なことに、私たち政権与党の姿が国民の心に映っていません。徐々に聞く耳を持たなくなってしまった。そのことは残念でならないし、不徳の致すところと思っています。その原因を二つだけ申し上げます。


この残念なことに~の下りと小沢~のくだりをテレビでは何度も流していましたが、遺言位きちんと読んであげたらいかがかと思わずにはいられません。


 一つは普天間(飛行場移設)の問題でしょう。徳之島の皆さんにもご迷惑をお掛けしております。ただ、本当に沖縄の外に米軍基地をできる限り移すため努力しないといけない。沖縄の中に基地を求めることがあたりまえではないだろうと、半年間努力してまいりましたが、結果として、できませんでした。これからも県外に移すよう努力することは言うまでもありませんが、一方で北朝鮮が韓国の哨戒艦を沈没させる事案が起きています。日米の信頼関係を保つことが東アジアの平和のために不可欠との思いで、残念ながら沖縄に負担をお願いせざるを得なくなりました。沖縄の皆さんにもご迷惑をお掛けしています。


 社民党さんに政権離脱という厳しい思いをさせたことが残念でなりません。国民新党とともに一緒に今まで仕事をさせていただいた。これからもできる限りの協力をと、申し上げたい。さらに沖縄の皆さんにも、できる限り県外に米軍基地を少しずつでも移すことができるよう、新しい政権として努力していくことが大切だと思います。「社民党より日米を重視した。けしからん」との思いも分からないではありません。日米の信頼を何としても維持していかなければいけないという悲痛な思いを、ぜひご理解願いたいと思います。


 いつかは日本の平和を日本人自身でつくりあげていくときを、求めないといけない。米国に依存を続けて良いとは思いません。ここをぜひご理解いただき、鳩山の「少しでも県外に」との思いをご理解願えればと思います。その中に私は普天間問題の本質があると思っています。あなた方の時代に、日本の平和を日本人自身で見詰めることができる環境をつくることを、日米同盟の重要性は言うまでもありませんが、一方でも模索していきたい。社民党を政権離脱という厳しい道に追い込んでしまった厳しい責任は負わないといけない。


最初からマニフェストなどに外交問題は盛り込むべきものではなかった(相手方もいるわけですし、もっと生臭いことを言えば沖縄選挙区を総て落としたとしても政権交代は適っていました)。そして何より期待値を無駄に上げるべきではなかった。最初に素直にこの発言から始めるべきだったでしょう。


 いまひとつは「政治とカネ」の問題でした。自民党を飛び出し、さきがけ、さらには民主党をつくってきたのも「自民党政治ではダメだ。もっとお金にクリーンな政治をつくらねば」との思いでした。結果として自分自身の政治資金規正法違反の問題で大変なご迷惑をおかけしたことは申し訳ない。なぜクリーンであるはずの民主党の代表がこんな事件に巻き込まれるのかと、お怒りになったことと思います。そのような「政治とカネ」の問題に決別する民主党を取り戻したいと思っております。皆さんいかがでしょうか。


率直に企業・団体献金より綺麗な自分のおうちのお金を、お国の為に使わせてもらったとしたほうがよかったね。


 私自身も、この職を引かせていただくことになりますが、小沢(一郎)幹事長にも政治資金規正法の議論があるのは周知のことと思います。先般、2度ほど幹事長ともご相談しながら「私も引きます。幹事長も恐縮ですが、幹事長の職を引いていただきたい。そのことによって新しい民主党、よりクリーンな民主党をつくりあげることができる」と申し上げました。幹事長も「分かった」と申されたのでございます。


 小林千代美議員にも責めを負っていただきたい。高い壇上から申し上げるのも恐縮ですが、クリーンな民主党に戻そうではありませんか。そのための努力を皆さんにお願いします。そうなれば必ず、国民の皆さんがまた民主党に対して聞く耳を持ってくれる。国民の皆さんの声が通る新しい政権に生まれ変わると。


 しばしば宇宙人だと言われております。勝手に解釈すれば、今から5年、10年、20年先の姿を国民に申し上げている姿が、そう映っているのではないかと思います。例えば地域主権。原口(一博総務)大臣が先頭を切って「国が上というのはおかしい。地方が主役になる日本にならなきゃならない」と。国会議員や官僚が威張っていた中央集権の世の中に風穴があいた。一括交付金など大きな変化ができつつある。5年、10年たてば「こういうことだったのか」と分かってくれると。


 「新しい公共」もそうです。今までの仕事を「公」に開くことをやろうじゃありませんか。国民の皆さんが主役になる、そういう政治をつくりあげることができる。まだ「新しい公共」自体がなじみが薄くてよく分からないと思われているかもしれません。官僚独占ではなく、できるだけ民ができるように変えていく、そういう力を貸していただきたいと思います。


 東アジア共同体もそうです。必ずその時代がくるんです。国境を感じなくなる時代をつくっていく。新しい民主党の、新しい政権を皆さんでおつくりいただきたい。


 韓国の済州島に行って、ホテルの部屋の先にテラスがありました。テラスに1羽のヒヨドリが飛んでまいりました。わが家のヒヨドリが飛んできたと勝手に解釈して、この鳥も「早く自宅に戻ってこいよ」と招いているように感じたところであります。雨の日には雨の中を、風の日には風の中を自然に歩けるように、国民の未来を見詰めながら、対話の中で新しい時代をつかみ取っていこうではありませんか。そのことを申し上げながら、ふつつかな私ではありますが、8カ月余り先頭を立って歩ませてもらったことに感謝を申し上げ、国民の皆さんへのメッセージとさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。(西日本新聞 2010年6月2日 12:58)


野党時代から鳩山を嫌ってきたことはこれまで呪詛を読んできた方はご存知のこと、今さら擁護しても逆に寒々しいかと思いますが、「華胥の幽夢」より抜粋したとおり、単に甘かったのだと思いますよ。




そう─正道は自明のことに見えた。なぜなら、扶王が道を失っていたから、扶王の行いは即ち悪だと明らかだったからだ。朱夏らは夜を徹して扶王を責め、国のあるべき姿を語り、華胥の夢を育んだ。確かに、扶王を責めることで、その夢は培われたのだ。


最初は曖昧でしかなかったものが、扶王の施政にひとつ粗を見つける度に、具体的なものになっていった。扶王が行ったことなら、行わなければ良いのだ。─そう短絡すれば、確かに正道を見出すことは容易い。


安直な確信に基づく二十余年、砥尚と共に築いてきた王朝は、扶王の王朝よりも脆かった。


そう…本当に素人だったんだわ。政のことなんて、何も分かってない。分かってないのに、分かった気になっていた。扶王を責めることができたから、自分たちは扶王よりも政の何たるかを分かっていると思っていた…

華胥の幽夢 十二国記 (講談社X文庫―ホワイトハート)/小野 不由美
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▲主上の十二国記を人にお薦めするのは非常に心苦しいところがあるのですが、それでも既刊だけでも十度でも二十度でもそれこそ人生に役立つ指針としても読み返す価値があると思います。ちなみに私は「落照の獄」を宣言通り傍らに置きつつも未だ一頁も読むことなく新刊を待ち続けています。