原作 小野不由美(講談社X文庫刊「悪霊シリーズ」より) 脚本 會川昇 音楽 はい(←漢字が出ない)島邦明 企画 堺三保 谷山麻衣;宮村優子
悪霊狩り~ゴーストハントCDシネマ1 ヲリキリさまの鬼火
悪霊狩り~ゴーストハントCDシネマ2 ウラドは其処に居る
悪霊狩り~ゴーストハントCDシネマ3 えびす異神論
悪霊狩り~ゴーストハントCDシネマ4 悪夢の棲む家
あなたはCDドラマというものを知っていますか?かつて私が学生だった時分、ラジメーションとか言われて文化放送を中心に声優のラジオ番組が腐るほど流され、その番組内でタイアップしている作品のドラマを流すというもの(今も形式自体は同じかな?)が全盛を極めていたのです。声優ブームとも相まってと声のみで作られるドラマとの相性は抜群ではないかと思わせたのですが、実際落ち着いてみると何だかな~という粗製濫造に終始してブームは去ってしまいました。で、当時馬鹿みたいに購入したCDドラマを整理していて発掘したのがこれです。この作品と白倉由美プロデュースのリーディングストーリー群は、今改めて聴き直しても遜色なく音の世界に浸ることの出来る作品となっています。
音と声のみで世界を構築するのは絵がついていない分、脚本に対する負担は増大する。説明や情景描写を延々とすれば聴く側としては辟易するし、かといって想像力のみに頼るにしても限界がある。おそらく言葉の余韻を楽しむ詩的な作品にこそ馴染む形式なのかな?しかし、この「ゴーストハント」はそれとは違う。原作、脚本、音楽に元からお互いがお互いを認め合っていた一流の才能が結集することが出来たという本当に幸せな作品となっている。
私がこの作品を知ったのは、「波乗りアニメジャーナル」 というラジオ番組(毎週、ハガキを投稿しては読まれて悦ったり、受験生とか関係なく公録とか行ったり、まさに青春の一ページといえる本当にはまっていた番組でした)での告知がきっかけで、その後宮村優子がパーソナリティーを努めていた「直球でいこう」という番組内で放送されました(ただし、「悪夢の棲み家」はCDのみ)。
元々小野大先生の大ファンだったのでどのような出来となるのか大変不安だったのですが、まったくの杞憂でした。原作は、事件の謎を解明するという柱(そもそも怪奇現象なのか自然現象なのかを含め)、ナルが何者なのかという各巻を通して少しずつ明らかになる謎、そして麻衣とナル(厳密には違う)の恋愛がどう発展するのかという3つの柱から成り立っている傑作です。
特に、悪霊シリーズとは名付けられてはいますが、安易に霊とか化け物に原因を求め調伏してお仕舞いというよくありがちなパターンではなくて、むしろ科学的、合理的にその原因を調査していき、その裏側にある関係性の解明に重きをおくというやり方が斬新でした(そもそも自然現象と怪奇現象の割合が半々位ある)。詳しくは小説もしくは現在刊行が止まっています(丁度CDドラマ3の途中)が、なかよしKCからいなだ詩穂氏が漫画化していますので是非お手元に(X文庫のピンクの表紙は若干抵抗感を覚えるかもしれませんが)。
ドラマ化するにあたっては先にあげた3つの柱のうち、事件の謎解明は外せないとしても、思い切って麻衣の個人的な感情に重きをおいた再構成を行い大成功しています。またCDドラマ2では、各話の題名にRPGの要素を取り入れてみたり、3では各話の間に踏み切りの音を取り入れてみたりといろいろと遊びがあり大変楽しませてくれます。4についてはいきなり…です。そして何よりも原作はホラーではないのに、恐ろしいまでに盛り上がる音楽と相まってかなり怖いホラーになっています。特にヘッドホンをして聴くと細かいところまで聴き取れて怖さ3割り増しです。どこからか自分が見られているような錯覚さえ起こります。
アリッサ=シアーズとしてもいかんなく、歌という名の電波攻撃を見せ付けているけれどそれにしても宮村優子の歌は凄いね。