季節になると、観たい音曲があるものです
時々の花の第2回 朱夏の巻で「井筒」
愉しみにしていました
「井筒」は世阿弥の夢幻能の代表作です
生誕650年を記念しての企画公演で、日本最古の能楽論
「風姿花伝」など能の「花」について焦点をあてたもので
魅力的な演能です
井筒の作り物が風情あり
今回は時候をえて
本物の薄でした!
荒れ果てた在原寺に
なまめいた美しい女人が
登場するのも日本的な
美意識のひとつ
伊勢物語を縦糸に業平と筒井筒の
幼い2人の戀物語、心を移した業平を
真心を尽くして添い遂げる心根
語られます
そして業平形見の直衣や初冠で
男装し井戸の薄を押し分け
水鏡に映る恋人の面影を
偲ぶ姿!
女人であるシテが男装し
しかし井筒の女として
懐かしむ狂おうしい心情!
妖しい雰囲気を醸し出す場面に
この能の不思議な魅力を
いつも感じます
陳腐な言葉ですが
戀の永遠性をうたいあげた作品だと
あらためて想いました
直衣は貴族の平服ですが
舞台では長絹(女舞のものとばかり
思っていましたが、元服のときには
男子も着るそうです)
古紫に扇面に美しい花尽くしで華やかでした
序の舞は幽玄だけど、すこし眠くなりました 苦笑
台風の様子をみようと夜中に起き、深夜映画を観てしまい寝不足気味の観能
BBC制作で「アイリス」 ジュディ・デンチ扮する哲学者でもあり小説家の
主人公が認知症にかかります
言葉を操ることに長けているアイリスが、徐々にその言葉を失っていく
献身的に世話をする夫、ジョンーでもその老々介護の切ないさや残酷さは
ドキュメンタリーようでした
最終的には、イートン校に入るより困難な素晴らしい施設に入る事が出来ます
時にはいらだつジョンですが
もう認識のなくなったアイリスに
ようやく自分の元へ帰ってきてくれたと!
長年連れ添っていても、どこか
硬い核があったアイリスに
究極の慈しみの姿をみせていました
立場が逆ですが、井筒の女と
なにか共通項を感じました
ドクターが「首相の名前は?」と
訪ねても「トニーブレア」と答えられない
でも自分では忘却を認めたくない!
アイリス扮するジュディの演技はさすがと思わせました
トニーブレア時代のロンドン近郊や滞在していた頃の
雰囲気を見ることができ懐かしいものでした
演能中に眠気が襲いましたが、世阿弥のいう花とは
心の花 技は種 井筒は上花 と解説していました
なかなか奥深いもので、ひたすらよい能に出遭うことが
大切なのでしょう
たしかに鬘物の傑作 こころに叶う秋能 至福のひとときでした
筒井筒 凋める花の残り香は
             風に散らして夢醒めにけり     みみ卯







