折々の言の葉


満開から一週間がすぎて、櫻は散り染めています

春の櫻花を詠った歌は、古来より数々ありますが

散りぎわをうたったものも多いですね

  「さくら花 ちりぬる風の名残りには

             水なき空に波ぞ立ちける」  つらゆき


  「風にちる 花の行方は知らねども

             惜しむ心は身にとまりけり」  西行


花に託して移ろう春に哀感を詠った歌にも心ひかれます


折々の言の葉

櫻吹雪になっても、なにか趣のあるひとひら!

弥生は、心うきうきと過ごした月でしたが

図らずも老年に関する映画を観ました


折々の言の葉


伝説的な名作、「八月の鯨」! 実年齢91歳のリリアン・ギィシュが

眼の不自由な姉を小まめに面倒をみてはたらいている姿に驚嘆!

姉役のベティ・デイヴィスは76歳、この配役の妙が素晴らしかった

老姉妹の静かな海辺でのひと夏、二人の青春の想い出でもある

入り江に現れる鯨をめぐってのやりとりー

2人の味わい深い演技には感動させられました

かなり我がままな姉が、鯨に何かの希望をたくして妹を

励ましたりと、行く末に明るさを感じさせ、なにか穏やかな

気持にさせられた秀作!さすがですね


折々の言の葉

イギリス映画で「マリーゴールドホテルで会いましょう」

高級ホテルで魅惑にみちた老後を!というふれこみで

インドへ降り立った7人の老人たちー

でも待ち構えていたのは、ボロホテルと喧騒の街!

ユーモアとペーソスにみち、それぞれが何か新しいものを

見つけていく7人の冒険に元気づけられました

老いてもそれぞれ精神的に自立していて見習うべきとー

よくテレビなどで見ていた俳優たちも巧みで面白かったー


折々の言の葉


フランス映画「愛、アムール」  音楽家夫婦の老後のあとさき!

映画というより、今の老々介護の実録といってもいいかも知れません

ピアノ教師として実績もある妻が、病にたおれ半身不随となり

その病状が悪化していくー夫は献身的に介護していきますが

追い詰められついに手にかけるという重いテーマです

長年つれそい、愛しているがゆえの無理心中と思えました

老い、病、死についてこれほど冷静に残酷に描かれた作品は

稀有かもしれません

病ゆえか段々配慮を失っていく妻の姿に、哀しい現実を

観ました、やはり切なくて行き場のない気持にさせられました

単なる愛ゆえとは思えなくて、深い闇のような人間の性を

感じ、ひたすら哀しいものでした

折々の言の葉


櫻花のように散りきわをきめられない人間たち!

  「いざ櫻 吾も散りなむひとさかりありなば

          人にうきめ見えなむ」   そうく法師

昔のひとは、より移ろう儚さを感じていたように想います


2040年には、高齢者が現在より2倍ちかくになる日本

老々介護の悲劇は、頻繁にニュースで報じられています

近未来であると思うと、心穏やかではいられませんが

その時々、最善を尽くすーことしか思い浮かびません

せめて明日を想い、今日を精一杯生きることでしょうか


弥生のおわりは、やはりこの歌で一服しましょう

     「見わたせば 柳櫻をこきまぜて

           都ぞ春の錦なりける」  素性法師


折々の言の葉


勝手に「都乃春錦」と銘をつけた浮島です

京の都を想うと同時に、忘れがたい景色も託してみました


折々の言の葉


ロンドン郊外のテームス河畔、八重櫻が満開になると

柳も芽吹き、まさに柳櫻をこきまぜた風情!

住めば都!の春だと、毎年愉しんでいましたけー

日本以上に寒さが厳しかったヨーロッパ

まだ咲いてはいないでしょうね


折々の言の葉