陸前高田の海岸のあった七万本もの松が、あの大津波で
流され、一本だけ奇跡のように残った!
この映像をみて、こみあげるものがありました
根が海水に浸され、蘇生は難しいようですが
モンニュメントとして立木のまま保存してほしいものですね
被災者のみならず、永久に風化させない心の拠り所に
なると思いますがー
夥しい流木のなかから(大木が積み重なり息をのむような景色)
楓や松を選んでヴァイオリンを制作したニュースも記憶に
新しいところです
ヴァイオリンの裏に描かれたのは、奇跡の一本松!
三台作られ、制作者は「千の音色でつなぐ絆」として
演奏をつなげて欲しいそうですが、いつか聴いてみたいものです
全国各地、松の名所は数々ありますが
東北の松には思い入れが強くなりました
これは山形の千歳山の萬松寺の阿古耶の松!
どこか一本松と形姿が似ていますね
この松に由来する能「阿古屋松」あこやのまつを
観ました
世阿弥自筆本による復曲能で、上演記録が定かではなく
650年ぶりの初演とか、貴重な観能でした!
観世文庫には9本の自筆本がのこっており
その4つの能本(作品台本)が復曲されました
一番下が「阿古屋松」で、展示をみると
とても細かく文字が綴られています
古文はよく読めなくて残念!
さて能「阿古屋松」の上演前に、萬松寺の住職や
シテの清和師、松岡心平教授の解説講義を
聴いていたので、より本番が期待されました
能の筋は、藤原実方(さねかた)が国司として
陸奥に赴任、天皇より歌枕「阿古耶の松」を
みてまいれといわれたのは、当時は中央政府の
調査官としての任務もあったらしいー
また行平と清少納言を奪い合いとなり左遷された説
「さることありて陸奥の国へ下りー」は意味深長だともー
いろいろ古歌は面白いですね
さて探索の旅で老いた山人(じつは塩竃明神)に
在処を尋ねますが、実方の高飛車な物言いに
なかなか教えようとしません
今はここ陸奥になくて、出羽にあると答えます
さらに笑われるのですが、昔は33国だったが
今は66国に分かれたと、出羽国の成立などが
語られる問答などセリフ劇のようで緊張感に
あふれ、この老人がただ者ではないと感じさせました
「心の奥もいかならん、げにや名にし負ふ心の奥ー」と
2か所詠われるのは、みちのくの人の心の奥は
いつしか分かるだろうという都にたいしての思い、
どこか現代にも通じるものを感じました
そして「塩竃明神とはこの翁よー」と中入り
間狂言で千歳山萬松寺の阿古耶姫伝説が語られます
詩歌管弦に堪能な姫の琴に、緑衣の壮夫が笛と手に
現れて、二人は、管弦の友になり夫婦となります
しかしわれは千歳山に立つ老松が精で、名取川の橋材に
伐られ命運尽きぬと、或る夜姿を消します
阿古耶姫は悲しみ、この老松のかたわらに松樹をうえ
わが夫の宿樹なりと唱え、阿古耶松と命名されたこと
この伝承は代々残っていて
明治天皇が行幸した折、この松枯れを悲しみ
勅撰として植えられたのが、今の松だそうです
後場で気品のある老体の塩竃明神は
「陸奥の、阿古屋の松に木隠れて
出づべき月の出でやらぬ」と
各地の松の名所などをあげ、阿古屋松の名高いことを
謡い舞ます
この舞は、塩竃明神が実方の都での花やかな舞姿を
二重写しにした夜遊でー、老い木になっても年どしに
若緑立ち枝の幾春の恵みを現しているにかなと
思いました
解説では「服属儀礼としての芸能」とか
実方が担う役割についてなどすこし難しいものでした
舞は品格にみち、古今松は神の憑代として
崇められたいたことを思わせました
シテの立ち姿はとても大きく映り、ある華やぎと
静謐な心境を醸し出していました
当世の若手実力者の囃子は、力強く素晴らしかった!
いろいろ資料を踏まえての一からの復曲ですから
節附けや囃子の手組もとても新鮮な感じました
これで4曲の自筆本による能をみることが叶い
満足しました
因みに奇跡の一本松は、アカイアカマツで その種の種子が
KEWガーデンの種子バンクに永久保存されたとでていました
本園とは離れた谷あり丘ありの場所で見学したことがありますが
要塞のような建物でしたね
世界中から種子を集め、保存している事業は
英国ならではと感心したものです
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