八代集などの部立には離別歌、羈旅歌があります

その昔、旅立ちは重い別れであったことがわかります


折々の言の葉


世阿弥自筆本のよる複曲能「松浦佐用姫」を観ました

平成になって流派の演目に、正式に入れられた能です

どうして廃曲になっていたのか不思議になるほど

とても面白く、新鮮でした!


折々の言の葉

松浦(まつら)は歌枕になっている肥前の佐賀県あたりの海辺

諸国一見の僧が訪ねきて、釣竿をもつ海士おとめに問いかけます

佐用姫の亡霊は、遣唐使として派遣される狭手彦(さでひこ)と

後朝(きぬぎぬ)の別れを惜しみ、去りゆく船を山上から見送ったこと

このとき領巾(ひれ)を振ったとーこのひれは白絹を折りたたんだもので

古代の女性は首にかけ左右に長くたらした装身具ー

魔力など呪力をもつものとかいてありましたーなるほどね

とにかく「海原の沖行く船を帰れとか 領巾振らしけむ松浦佐用姫」と

詠われているように泪ながらに打ち振ったのでしょう

折々の言の葉


袈裟を授けてもらえれば、お布施として形見の鏡を見せようと中入り

後シテは表に銀箔を貼った円鏡を持って登場します

鏡が煌めいて不思議な効果をかもしだしていました

銀箔の鏡は月のシンボルでもあり妖しい雰囲気でした


倭冠をつけた男体は、佐用姫の執心のあらわれ!

鏡を抱いて船のうえよりかっぱと身を投げる立働きは

狂乱と投身するほどの恋慕の執心が強かったと

思わせていました


いくつかの伝説などが組みたてられた能で

興味深いものでしたが、何故近年まで

廃曲になっていたのでしょう

現代人はこういう濃い情感は持ちえないですね

能では凝縮されたものが詰まっている!

これが惹かれる理由のひとつかも知れません


この日は宗家の佐用姫の面だったそうです

小面よりすこしキリリとした面差しだったような

気持の強さをあらわしているのでしょか

よい観能で満足しました