折々の言の葉


久しぶりの三番の観能、さすがに眼が疲れました

眼目は「俊寛」  元雅作ともいわれているようですが不明とか

現在能としては珍しくシテは能面をかけます


折々の言の葉


チラシからの転写で不鮮明ですが、室町時代の面

痩せこけた壮絶な面で「俊寛」だけに使われます

演能前にシテと能研究者との話を聴いていたので

なるほどと思うこと沢山ありました

舞いがあるわけではなく、心理的なセリフ劇の要素があります

シテのお話では、ドラマの写実をどう能的に表現するかが難しいとー

観ていて俊寛の激しい感情や失望、哀れさが現れていました

同じ流人の成経,康頼が赦免され、船に乗り込もうとするとき

肩に手をかけて縋りつく強さに、すこし驚きましたし

赦免状を何度も返して見る所作などリアルに感じました

腰蓑は本物のワカメで作られていて、細かく編まれており

途中切れてしまうので、後見があとで拾い集めていました


喜界が島は今の硫黄島で、後日譚では食と絶って死を迎えたとか

薩摩のどこかに渡った伝承もあるようです

僧でありながら不信のすね者の剛腹な俊寛を観ていると

一人だけ清盛に許されなかった訳が分かるような気がしました

引いていたとも綱を切られ、綱がぱっと放たれる場面

綱が舞台から落ちないかと思うほど力が籠っていました

孤島の磯にひとり立ちつくす姿!極限に追い詰められ

人間の弱さを、能は簡素な演出で効果を出していました

歌舞伎の俊寛と異なるところかもしれません


折々の言の葉


あとは「葛城」   醜い顔立ちを恥じた女神

しかし美しい面をかけていますがー

大和舞の小書で、常の序の舞から神楽にかわり

その笛の音が心に沁みました

古今集「しもとゆふ 葛城山に降る雪の

     間なく時なくおもほゆるかな」にある

しもと(マキを束ねる)や雪山のつくりものなど

季節感にあふれていて、なんだか人間に近い神!で

よい演目でした


折々の言の葉


最後の「熊坂」は盗賊の熊坂長範が牛若丸と戦い敗れる有様を

仕方話や、吉次のことなども語られ面白かったけど、

脳天気な話ですがー集中力がキレかかってしまいましたねーあーあー