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【 テーマ「かこ」について 】

「かこ」では、私が2008年9月に経験した交通事故について綴っています。

 私自身がこの貴重な経験を忘れてしまいたくないから。
 毎日毎日起こり続ける交通事故、そのひとつひとつ痛み・重みを
 少しでも多くの人に知ってもらいたいから。
 そしてこの経験を踏まえたうえで、
 毎日を楽しんでいる人がいるんだということを知ってもらいたいから。

主観とエゴのかたまりかもしれませんが、お付き合いいただけたら幸いです。

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10月31日。



リハビリを終えたあとのヤスには、帰るベッドがなかった。




ヤスは今日、退院する。





私はいつもと変わらず夜ごはんを食べる。

いつもと違うのは、ヤスのごはんがないこと。

ヤスのご両親は退院の手続きで受付に行ったりナースステーションにあいさつに行ったり、忙しそうだ。



「今夜は何を食べようかしら」とヤスのお母さんは嬉しそう。


「何食べたい?」とヤスに聞くけれど、「なんでもいいよ」とヤスはそっけない。



そんな会話を聞きながら、
私はいつもの病院食を口にする。



「じゃあ…」と言って、ヤスが立ち上がる。



いつもより30分早い。

それは、面会時間が19時半までで、消灯時間が20時までだから。



「明日また、来るからね」


そう言ってヤスは手を振った。




「うん、ありがとう。おやすみ。」



私はそう言うのが精一杯だった。







ヤスの背中を見送る。




病室の扉が閉まった瞬間、

なぜか、泣きたくなった。