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【 テーマ「かこ」について 】

「かこ」では、私が2008年9月に経験した交通事故について綴っています。

 私自身がこの貴重な経験を忘れてしまいたくないから。

 毎日毎日起こり続ける交通事故、そのひとつひとつ痛み・重みを
 少しでも多くの人に知ってもらいたいから。

 そしてこの経験を踏まえたうえで、
 毎日を楽しんでいる人がいるんだということを知ってもらいたいから。

主観とエゴのかたまりかもしれませんが、
お付き合いいただけたら幸いです。

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ある日、私はヤスに髪を洗ってもらうことにした。


この病院では、介護の必要な者がお風呂に入れるのは週に2回だけ。

10月下旬で残暑もだいぶ落ち着いたとはいえど、やはり髪だけでも洗いたかった。

看護師さんに頼みたくても、ひとりの患者にそこまで手が回らないのは事実だ。




どうしたら自分たちだけでできるか試行錯誤の末、
洗面台の前で私は車いすに座り、左右にちょっとずつ頭を傾けた。

ヤスは立って、洗面台についているシャワーで私の髪を洗い流してくれる。



「あー気持ちいい。これいいねー!ありがとう。」



流れる水の感覚が気持ちよかった。

ヤスは「熱くない?大丈夫?」と言いながら丁寧に洗ってくれた。





一部始終を眺めていた母が、私の顔に水がかかったのを見て、タオルでそれを拭こうとした。



けれど私は、「いいよ」と言って母の手をはねのけ、自分で自分の顔を拭いた。




そのときの母の怒ったような泣きそうな顔と

ヤスの困った顔が忘れられない。








母はそのまま部屋を出て行った。



ヤスはずっと、そばにいてくれた。

私がつらくならないように。