坂本さんからの電話もなくなって
すっかり日常に戻った職場。
ある日、帰りのご利用者様の送迎中に、前からフラフラしながら走ってくる自転車の男性を発見。
車にぶつけられても嫌だから端に寄り、自転車が通り過ぎるのを待つことに。
しかし、ゆっくりだな
早く通り過ぎておくれよと
内心思いながら、ふと自転車の男性の顔を見てしまった。
「あっ、坂本さん!」
坂本さんも私に気づいた。
「買い物の帰りでして。待っててもらってすいません
」
いやいや、かなり自転車ふらふらだけど、大丈夫!?転んだりしてないの?
「いや、転んだりするんですよ
」
自転車引いて歩くか、怪我しないようにしないとね。
と声をかけ、手を振り、車を発進させた。
あれは、危ないわ。事故に遭わなきゃいいけど![]()
それから数日後、久しぶりに夜勤中の竹内さんのもとに坂本さんから電話が入る。
たまたまご利用者様のトイレ誘導が重なってしまっていてね。竹内さんも忙しい時間帯だったこともあり、いつものように優しく丁寧に応対できなかったのよ。
「もしもし、久しぶりに声が聴きたくなっちゃったんだ」と話す坂本さんに
「今、ちょっと忙しくてね。ごめん、対応中に電話してると怪我させちゃうかも知れないし、火野さん達に注意受けるから、電話切るね」と素っ気ない態度を竹内さんは取ってしまったらしい。
翌朝、ミーティング中に、竹内さんが気にして報告してきたので、「それは、当たり前の対応だから気にするな」と皆、同じ反応。
1週間後、坂本さんの元ケアマネさんから連絡が入った。
「坂本さん、亡くなったんです。」
えー
なんで?どうしたんですか?
実は、最後の電話が来た日の夕方、
タイムセールで安くなったお弁当を買いに
近くのスーパーへ自転車で出かけた坂本さん。
買い物を終え、大通りの横断歩道もない場所で道を横切ろうとしたところに、走ってきた車とぶつかってしまったらしい。
そういえば、あの日、送迎に出たドライバーさん達が、事故渋滞で車の流れが止まり、全然動かなくてさとボヤきながら遅れて帰ってきたわ。
あの事故、坂本さんだったのか![]()
自宅なんかに帰らないで、ずっとショートで泊まっていたらこんなことにはならなかったのに![]()
皆泣いてるよ。
火野さんはしばらくショックで食欲不振。
竹内さんは、自分を責めてたよ。
冷たく対応するんじゃなかった
って。
あの当時は、辛かったな![]()