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「セレブ・モンスター」
夫バラバラ殺人犯・三橋歌織の事件に見る、反省しない犯罪者
橘 由歩/著 河出書房新社 2011.1
内容注記 :  
彼女はなぜ夫をバラバラにして捨てることができたのか? 
夫バラバラ殺人犯・三橋歌織の生い立ち、事件、結審までの人生から、
現代の殺人犯の「心の洞」に迫る渾身のノンフィクション。 
著者の橘さんは女性らしい視点で、この事件を読み解いている。
この事件はおそらく女性の視点でしか理解できないのではないだろうかと、
私は思う。

女性の社会進出が著しいのは解っているけれど、
まだまだ抜きんでた才能を持っていない一般女性が、
ある程度の経済的な立場を得るのはやはり男性よりはまだ難しいと思う。
若年層は男性がそれほど優遇されていないのかもしれないけれど、
やはり私と同年代(40代)の女性達は
もがいてももがいても空を掴むような立場だったと自身の体験を思い起こす。

そういう親に育てられた世代は、自身の価値観をもって生きる人と、
親の価値観を背負って生きるひとがいるのは当たり前だ。

そしてこの犯人は母親の「DVに耐えてまでも、
自分の経済的に優遇された生活を選ぶ」という選択肢を身につけてしまったのか。

人間の根源的な尊厳と、
経済的に楽だということを比べること自体が私には信じられないが、
それは私の育ってきた環境が思わせるのだろうか。

私の時代、まだまだ女性が頑張って掴んだ社会的立場より、
旦那が掴んだ社会的立場が女性の立場を優位にさせる場合が一般的だ。

旦那の社会的価値が妻の社会的価値とイコールとなる。
これでは頑張ってきた意味がないではないか!と私などは思うのだけれど、
そう思わずに、旦那にぶら下がって生きていきたい女性も多いのだろう。

三橋歌織は、DVに耐えてきたからこそ、
この経済的な優位をどうしても手放したくなかった。
離婚はしたいとは思いながらも、経済的に優遇されないのなら、
DVに耐えて生きていくつもりだった。

が、夫の愛人がはっきりして、夫が離婚の意思を示し始めると
そのプライドから一気に怒りが爆発し、犯行に及ぶ。

小さい頃から受けていた父親からの暴力、圧迫。
かばってくれない母親。

その生活の中で歌織は自分を
唯一無二の大事な存在であると認識できなくなり、
その価値を自分以外の物に求める。
それがブランドのバッグだったり、ゴージャスな生活だったりする。

著者は言う。
「何かや誰かや白馬の王子様を待つのではなく、
自らの足で歩いて行っても良いのではないか。」と。

最近の女性誌にしょちゅう特集される
「モテ服、モテ髪、愛されメイク」などの特集に
飛びつくのはもうやめてはどうだろう。

誰かにモテることや愛されることが大事なのではなく、
自分の意志で自分の幸せを見つけることこそが
人生に大切なことなのだから。

どんなにモテても、どんなに愛されても
自分の人生を歩くのは自分自身であり、
人で行くときはたったひとりである。

自分の人生を彩り、共に生きてく人はとても大切なものだと思う。
しかし、自分あってこその恋人、家族であり
自分を掴めない人に、恋人、家族としっかり繋がっていけるだろうか。

自分の心をのぞき込んで、その芯の部分で人と繋がっていく、
そのことが最も大切なこと。

自分を見つめることをせずに、
他人を求めることは非常に危険なことだ。

この事件を通してそのことに気付いて欲しいと心から思う。