吾輩は暇である。
仕事はまだない。
いつになったら仕事が決まるのかとんと見当がつかぬ。
いつも薄暗いじめじめした部屋で酒を吞みながらウゥーウゥー 呻いている事だけは記憶している。

吾輩は食事などの買い物はイオンと決めている。
吾輩はそこで印象的な一匹の三毛猫と一人の透明な女に出会った。

その三毛猫は猫なのに実に堂々とイオン内をウロウロし、くりくりとした可愛らしい澄んだ瞳で周りの人間達を鋭く観察していた。
でもどこか少し、もの悲しそうでもあった。

そういえば最近、とんとその三毛猫を見かけぬ。
何処か旅にでも出かけたのだろうか。
何処かの家に拾われてお世話になっているのだろうか。
どちらにせよ、どうか元気でいて欲しい。

吾輩は、その三毛猫に憧れているのかもしれない。
その澄んだ瞳に。
その堂々とした自由奔放さに。


もう一人の透明な女は、いつも微笑んでいて、なんだか、人生を面白がって生きているように見えた。
そして、いつもフレンチブルドッグを連れて来ていた。
女はそのフレンチブルドッグを「ハッカイ、ハッカイ」と呼び、可愛がっていた。
吾輩は、何故だかそのフレンチブルドッグに嫉妬していた。

女は日本酒とポテトチップスが大の好物らしく、いつも買い物カゴは八海山と大量のポテトチップスの袋が山になっていた。

たまにすれ違ったりして眼が合うと、その微笑みはさらに強くなり、吾輩の何もかもを見透かされているみたいでドギマギした。

その女のほうも最近は見かける頻度が減り、2、3ヶ月に1回、たまに見かける程度になった。
仕事のほうが忙しいのだろうか。
いろんな意味でプライベートのほうで忙しくなって、なかなか自由な時間が取れなくなったのか。
どちらにせよ、次に見かける時も、微笑んでいて欲しい。

吾輩は、フレンチブルドッグだけでなく、その女にも嫉妬しているのかもしれない。
その透明感に。
その人生を面白がって生きているように見える達観さに。



へっくしょん!

さっきからくしゃみが止まらない。
夏風邪かな?
最近めっきり冷房の冷たさに弱くなってしまった。
それとも苦沙弥先生が吾輩の噂でもしてるのかな?

吾輩のメールの通知音が鳴った。
開いて見ると、先日インディードから 応募した会社からのお祈りメールだった。

南無阿弥陀仏。