トマス・ジョイナーはアメリカの心理学者だが、
その彼が『なぜ人は自殺で死ぬか』の著書の中で
興味深いことを書いている。

以下その部分を抜き出してみると

 男性の孤独の原因として挙げられているなか
でも特に興味深いのが、男性は女性と比べて
子供時代や学生時代に友人関係を維持すること
について大した労力を支払わなくて済むために、
「友人間係を維持するためにはどうすればよい
か」というテクニックや能力を取得する機会が
なく、そのために大人になった際に友人を失い
やすくまた新たな友人も得づらい、ということ
だ。
具体的に説明してみると、子供時代や学生時代
というものは男性にしても女性にしても周りは
同年代の人間に囲まれており、価値観の違いも
それほどなく趣味や興味関心なども似通ってい
るために、そもそも友人を作りやすい環境であ
る。
そして、一般に若い男性同士の交友関係は複雑
でなく、大概の男性は自分が特に努力をしなく
ても友人が見つかるしその関係を維持するにも
さほど労力を支払う必要がなく、互いにあまり
気を使わなかったりワガママに振舞っても友人
関係が持続するものである。

しかし、女性同士の友人関係は男性のそれに比
べると若い頃から複雑であり、誰かと友人に
なってその交友関係を維持するためには、相手
のことを気にかけたり会話や連絡を怠らないな
どの労力を支払うことが要求される。
また、男性の友人のほとんどは同性や同年代で
あるが、女性には異性や異なる年代の友人も多
い。
若い女性は人付き合いのコツや対人関係を維持
するためのテクニックなどを年長の女性から聞
かされて教えてもらったりもするものだ。

中略

この点に関してよくあるイメージが「お互いに
気を使わなくてもいい男同士の友情は自然で本
物であり、いろいろと面倒くさい手間をかけな
ければいけない女同士の友情は人工的で偽物だ」
というものだろう。

しかし、学校を卒業して社会人となり歳を取り、
昔からの友人と離れ離れになり会う機会も少な
くなってくると、状況は男性にとって不利になる。
子供の頃から面倒くさい友人関係を経てきた女性
は、学校を卒業した後でも職場や趣味コミュニテ
ィや地域コミュニティなどで新しい友人関係を
構築してそれを維持する能力やテクニックを身に
付けているのであり、歳を取った後にも友人関係
に困ることが少ない。

だが、互いに気を使わない気楽な友人関係を経て
きた男性は、友人とは水や空気のように当たり前
に存在するものだという認識を抱きがちであり、
新しい友人関係を構築してそれを維持する能力や
テクニックを身に付けていない場合が多い。
そして、社会人になってから過ごす環境とは子供
時代や学生時代のように新しい友人関係を構築す
ることが難しい環境なのであり、多くの男性に
とってはいまさら新しい友人を見つけることが
無理に感じられる。結果として、女性は歳を取っ
ても定期的に新しい友人を見つけて交友関係が
持続する一方、男性は歳を経るにつれても昔
からの友人が徐々に減っていきそれを補う
新しい友人を見つけることもできず、孤独に
なりがちである。

中々興味深い考察だと思いませんか。
確かに男性は友情関係は無理に作るものではなく
付き合いの中で自然発生的に出来上がるものだと
思っている節はあります。

ジョイナー曰く
対人関係ということに関して若い女性は若い
男性に比べて要求や束縛が多くて大変な状況
にいるものだが、そのような状況のために
女性は対人関係に関するテクニックを磨く必要
が生じ、その磨かれたテクニックが後々の人生
で助けになる。
一方、気楽で甘やかされた環境にいる男性は
対人関係に関するテクニックを磨くことを怠
りがちであり、このことが数十年経った後に
彼の人生に深刻な影響を与えるのだ。

鋭い指摘だ。
彼はさらに続ける

そもそも男性は女性に比べると社交性が薄く、
他人に対してよりもモノやカネに対して興味を
抱く物質主義的な傾向が強い。
これは文化や社会環境に依るところもあるだろ
うが、赤ん坊の頃から存在する生得的な傾向で
もある。
そして、男性は女性に比べて赤ん坊の頃から
暴力的であり、他人を顧みず、ワガママである。
このため、女性同士がお互いに共感しあい思い
やりあうのに比べて男性同士は互いに無関心で
あり、辛いときに相談したり愚痴を言うことも
しづらい。
赤ん坊の頃や若い頃には家族や社会から許され
たワガママも年を取るにつれて許されなくなっ
ていき、周りの人間が自分から離れてしまう
事態を招きがちである。

そしてまた男性に特徴的なのが「Don't Tread 
On Me(俺様をナメるな)」という態度だ。
男性は他人に対する敵愾心が強いために、初対
面の時点から互いの印象が悪いために対人関係
を結ぶことができなかったり、せっかく築いた
対人関係も自分から破壊しがちである。

男性はSelf-reliance(自立)にこだわる傾向
も強くて、そのため共同作業やコミュニティ
などに参加する程度も女性に比べて低い。
また、男性は自分の弱みを他人に見せることを
忌避しがちであり、辛いときにもその辛さを
自分の内側に抱え込んでしまうのだ。

まるで私の事を指摘されているようで胸が痛い

さらにジョイナーの指摘は続く

 20代後半から40代にかけて、多くの男性は
社会的地位や収入を得ることに血眼になり、対人
関係を築くことや維持することを後回しにしてし
まう。
まだ学生時代からの友人が残っていること、本人
もまだ若くてエネルギーがあることなどのために、
30代までは大して問題に感じないかもしれない。

しかし、40代を過ぎて社会的地位や収入を充分
に獲得した段階になってから、失った対人関係の
重みにようやく気付くのだ。
気が付けば友人もおらず家族とも疎遠になった
男性は「自分には仕事しかない」と思い込んで
ワーカーホリックになったり定年を過ぎても退職
を遅らせて仕事を続けてしまうが、その時間を
対人関係に割いていた方が幸せになれた、という
ことの方が多いだろう。

せっかく獲得した社会的地位や収入も虚しいもの
だ。対人関係を犠牲にしてでも地位や収入にこだ
わる男性の傾向は、進化心理学的な理由に依ると
ころも大きいだろうが、社会的な圧力も存在する
と思われる。
ボーヴォーワールは「人は女に生まれるのではな
い、女になるのだ」と言ったものだが、
「男になる」ことについて男性が感じている
プレッシャーの方がむしろ強いだろう、とジョイ
ナーは指摘する。

「あの人は一人前の男じゃない」という言葉に
比べれば、「あの人は一人前の女じゃない」とい
う言葉はなかなか言われないものだ。

このようにして孤独になる男性は、自殺率が高い。
世界の国のほとんどでは男性は女性よりも自殺率
が高い(中国は例外であり、女性の自殺率の方が
高い)。
鬱病などは若い女性の方が罹りやすいとはいえ、
年老いた男性は対人関係という最後のセーフティ
ネットを失っていることが多く、これが自殺につ
ながるのだ。 


世の男性諸君。
気づく必要がある。
この世はお金だけではない。
孤高は崇高なものではない。
孤高が崇高なのは、崇高な孤高のあなたを慕う
沢山の人がいてこその孤高である。

喧騒の中の孤高は崇高でも、一人ぼっちの孤高は
ただ単なる孤独でしかありえない。
孤独は死を呼ぶ。死を招き入れる。

哲学者の、詩人の、文学者の、知識人の
孤独賛美主義ほど、罪深いものは無い。

 

 

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