ねぇ君は、確かに突然現れ
私の暗闇に光射した。


そして、少し笑って


大丈夫だって頷いて
私の手をとって歩き出した。


君の背に天使の羽をみた。



ねぇ君は、時々無防備すぎる位
私に全てでぶつかってくる。


それは、あまりにも眩しすぎる程で
私は、瞬きさえも惜しむの。



君は背に天使の羽を持つ。
突然のガン告知。


病名は一転二転した。



私は馬鹿だった。


病院に入院すれば、病気なんて治ると


本気で思ってた。



救急車で運ばれた兄の為に、スリッパを買ってお見舞いに行った。

帰ってくる時に、履くスリッパがないと兄は困るだろうと思ったから。




医者に余命を言われた。



人目を気にせず、泣き散らした。


他人が好奇心から遠慮なく向けてくる視線


全く気にならなかった。


なんで、なんとなく生きてた私じゃなく兄なのか。



高校卒業目前の兄をどうして連れていくのか。









病室の窓から見えた風景。


当たり前が当たり前じゃないって事を、初めて知った。






抗がん剤の治療



兄は笑いながら「ハゲたら殺してね」って言った。



私は笑えなかった。鼻の奥がツンとした。




モルヒネ治療



兄は幻覚が見えてるみたいで、「ごめんなさい、ごめんなさい」ってひたすら謝ってたかと思うと

「水だぁ、水だぁ」って天井を眺めたり。





ドラマで見るような機械、なんの機械かすら分からない
分かるのは、心電図くらい


兄の命の音、ピッピッピッ



兄は全身の痛さのあまり、暴れ狂って機械や点滴をもぎ取った。


看護婦さんに押さえ付けられ、薬で眠らされた。



苦しそうな顔。


温厚な兄からじゃ考えられない行動。



私は、また泣いた。






兄の大量の吐血。





大丈夫、大丈夫、絶対良くなるから。
往生際の悪い私は、いい事だけを信じた。



母に「あんたは何も分かってない」って泣かれた。







一人家に帰り、兄との二人部屋を初めて広く感じた。



一人ぼっちの夜の闇が怖かった。





兄の容態が急変し、急いで病院へ向かった。



もう危篤状態だった。




兄の名前を呼んだ。



何度も何度も。


ほっぺたを叩いた。起きて欲しかった。





もうこれ以上ないくらい泣いた。





泣いて泣いて立てないくらい。




ドラマでしか聞かないような音を聞いた


ピーーーーー




医者が処置をするからどうのこうの言ってた。




私は、まだ兄が生きてる気がした。


ホラ、動いた。まだ生きてるよ‥ねぇ



病室から無理矢理追い出された。




看護婦さん達も泣いてた。




家に帰った。兄と。



兄は寝てるみたいだった。

今にも起きて腹へったとか言いそうな顔をしながら眠ってた。


冷たい兄の横で寝た。






通夜をした。



兄の通夜だ。



私は来る人を慰めていた、涙はでなかった。




葬式で自分のお父さんと初めて会った。



自分に似てた。






兄の葬式だと言うのにお腹がすいた。そんな自分が嫌になった。





火葬場で泣き崩れた母。




兄は熱くないかな、そんな事を思った。





兄は、よき兄でよき父だった。







闘病中に一度たりとも泣き事を言わなかった。





母は、おかしくなった。





私が守ろうと思った。守れると思った。




守り方を間違えたかな。
お金が全てだと思ってた。




母はあれから笑ってくれない。





前向きに生きてきた。



無理矢理精神科に連れてかれ重度鬱と診断された私。




それでも入院せず、前向きに。



ただただ仕事に励んだ。









もう疲れたよ。



みんな兄の分まで頑張れとか



今のお前を見てたら兄が悲しむとか





そんなの5年間ひたすら自分に言い聞かせて生きてきたっつーの。




もうこれ以上頑張れないよ。




疲れたよ、笑えないよ、話せないよ、歩けない。







頑張ってて強くて泣かなくていつも笑顔な私は、弱い私を誰にも見せれない。






本当は強くないよ。



いつもギリギリだよ。



一人の夜が怖いし、約束のない明日は自分が生きてるのかすら不安になる。








だけど空けない夜はないね。




毎日が毎日、時間だけが平等に淡々とやってくるね。






ねぇ、お兄ちゃん、休憩していい?






ちょっと疲れちゃったみたい。







結局私は、母に何もしてやれず



兄すら救えず





メンタルすらダメになって



どうしようもなく弱い女だね。






悲劇のヒロインにだけは、なりたくなくて、頑張ってきたつもりだったのに



ただのつもりだったみたい。