もう20年以上前のこと、
私の勤務していた高校にカナダ人の青年が英語科のALT(外国語指導助手)として働いていた。
陽気な青年で、私は英語科ではなかったが課外活動でいろんな催しをしてこの青年と接していた。
彼がカナダの高校でフランス語を習っていたというので、
うっかり、私はフランス語で大学受験したんですよ、という話をしてしまった。
それからが大変だった。
彼が毎朝、職員室に入ってくると大声でフランス語で挨拶するようになったのだ
黙っている訳にもいかないので、仕方なく私もフランス語で挨拶を交わした。
おはよう、とか、元気?とか、今日はどんな予定とかほんとうに初歩的な挨拶だったが、
職員室のみんながびっくりして私たちを見るので、
穴があったら入りたいほど恥ずかしかった
(おまけに、彼はちょっと発音が下手だった)
一ヶ月ほどそんなことが続いて、ほんとうに身も細る思いをしたが、
彼は全然へいっちゃらだった。
おおらかでいい子だった。
大学を卒業したばかりの若い青年だったが、おばあちゃんが鎌倉に住んでいるということで、
彼と一緒に北鎌倉を歩いて東慶寺のお墓などを眺めて歩いたことがあった。
今頃、彼はどうしているだろう。
冒頭の派手な刺繍の布は、彼がインドを旅した時に買ってきたとかで、
お別れにこの布を彼から2枚貰った
1枚は今も応接セットのガラスのテーブルに敷いて使っている。
(隙間無く物が乗っているので写真が撮れない)