田舎に帰ったら、認知症の母がこんな話を始めた。

 ある日、畑から戻ったら庭に大きなダチョウが一羽坐っていた。びっくりしておまえはどこから来たんだと聞いたら、立ち上がってゆっくり山の方に歩き出した。後を付けて行くと、どんどん山を登っていって、うちの持ち山のてっぺんに着いたらそこにダチョウの小屋が建っていて、他に9羽もダチョウが飼われていた。うちには何の断りもなく木を伐りたおして空間を作って大きな藁葺きの母屋も建っていた。けしからん話だ、と言う。

 家族に話したが取り合ってくれないので、一度駐在さんに来て確認して貰ったけど、その後駐在さんは何の対処もしてくれない。ひとごとだと思ってけしからん、とまだ怒っている。

 私「どんな人が住んでいるの?」
 母「知らん、いつ行っても留守で見たことない。」
 私「じゃあ、今度待ち伏せして、ここはうちの山だから勝手に家を建てられたら困るって抗議   してみたら」
母「婆さんがひとりで抗議に行っても、追い返されるにきまっている。」
私「そうか、じゃあ、卵産んでいたらこっそり卵もらってくれば。相手が勝手にこちらの権利  侵しているんだから、卵くらいもらってもいいでしょう。それか、今度ダチョウが家に迷い  込んできたら、一羽くらいうちにもらったらどう?」
 母「……」

 私は初めての話で、笑い転げて聞いたが、2ヶ月くらい前から何度も聞かされているという家族は、うんざりしていた。
 後日、母が突然「ダチョウを見に行こう」と言いだして、妹が山に従いていったが、母が言う場所には何もなかった。あれ、思い違いかな、こっちかもしれない、と山を2時間くらい歩かされて、結局見つからずに戻ってきたそうだ。


◆「かまくらdeたんか」(blog.goo.ne.jp/david1993-2003)の妹版として、このブログを作 りました。「かりん」鎌倉支部の勉強会以外の私的な記事は、今後こちらに書き込んでいきます。よろしくお願いします。