どうしたことか、床の間がある。
違い棚も付け書院もある、立派な本床の間である。

その真ん中に、どでん、と炬燵が置かれているのである。

「ビャッコウさん、いま夏だよね・・・・・・?」

顔の前の隠し布にフーと息を吹き掛けて、炬燵と一体化している美女は天板に体を伸ばした。

「いいじゃないの」

概念だよ、と真っ白な彼女は赤い唇を歪める。

「概念ー?なんの概念だってゆーのだね。このくそ暑くなる一方の世界で、夏に炬燵!しかも本床の間!」

「解ってるだろ。お前の精神バランスだよ」

本床の間に炬燵。

庭に面した障子を開け放ったまま、ぐるりと180度首を巡らす。

炬燵にずっぽり入ったままのやる気のなさげな美女。
伝統と格式の高い、書院造りの床の間。

「理解しました」こくり

頷くしかなかった。

ここは正しくアマヲの精神世界である。