平成27年2月26日に施行された空き家対策特別措置法は、一部条文の施行が留保されていましたが、同年5月26日から完全施行されました。

ところで、空き家対策特別措置法がどういった内容か理解しているでしょうか?
テレビなどで取り上げられていても、イマイチ実感がわかないのも無理はありません。

しかし、この法律は田舎に空き家を持つオーナーにとって、理解不足ではいられないほど重要で、しかも古い空き家ではすぐに対策が必要なほど緊急性も含んでいます。
もはや、空き家を放置できない時代であることくらいは自覚しておく必要があります。

法律は難しい言葉が出てくるので、どうしてもわかりにくいものですが、できるだけ理解できるように空き家対策特別措置法を解説します。

空き家対策特別措置法は、そもそも何の目的で制定されたのでしょうか。
なぜ特別措置法を作ってまで、空き家対策を進めなければならなかったのか、そのあたりの理解が法律を読み解く上で欠かせません。

最近のニュース・新聞で、古いビルの看板が落下し、実際に大ケガに繋がった事件も起こったように、建物は必ず朽ちていきます。
他にも外壁が歩道に落ちて、危うく通行人が被害に遭いそうなケースもありました。

個人の持つ空き家が、大きなビルと同じ被害をもたらすとは言えないですが、それでも老朽化の結果、付近や周辺に悪影響をもたらす可能性は十分にあります。
たとえば次のような点で、空き家がもたらす悪影響が懸念されています。

現状でも空き家問題は重要視されていますが、今後はより一層の対策強化を求められており、空き家の増加が予測されていることが背景にあります。
その理由は少子高齢化だけではなく、税制など多方面に関係しています。

既に人口減少は始まっていますが、国立社会保障・人口問題研究所の推計で、世帯数においても2019年にピークを迎え、徐々に世帯数が減ると見込まれています。
世帯が減っても同時に家が解体されるとは限らず、空き家が残るケースもあるでしょう。

親が高齢になっても子供と同居する世帯は少なく、離れて暮らす子供が心配になって、または親が自ら子供に負担をかけないように、介護施設を利用する例がみられます。
高齢者比率が高まるにつれ、親が介護施設に入って実家が空き家になっていきます。

建物がある土地は、土地の固定資産税が最大で1/6まで優遇される特例があります。
逆に考えると、解体するだけで土地の固定資産税が最大4.2倍に増えるのですから、空き家が古くなっても誰も解体しようとしません。
※6倍という話もありますが、更地の固定資産税は評価額の70%が課税標準額となるため、6倍×70%で4.2倍です。

予算が許せば、新しくきれいな家に住みたいのはみんな同じで、売買でも賃貸でも築年数の浅い物件の方がニーズは高くなります。
古くなった空き家ほど需要が小さく、活用が限られてしまうので残っていきます。

空き家を解体したからといって、すぐに土地が活用できるはずもなく、解体するとすれば建て替えか、土地を売買・貸借するタイミングが普通です。
費用をかけてまで解体しないのと、固定資産税の関係もあって空き家が減りません。

木造なら20年もすれば建物の市場価値はなくなり、土地だけの価値になります。
しかも田舎は土地が安いので、田舎の空き家が持つ市場価値は低く、投資目的の資金が流入しにくいこともあって、空き家が残りやすいと言えるでしょう。

空き家には悪影響があり、さらに空き家が増えることを考慮すると、国策として空き家対策を進める必要性が高まってきました。
そこで、特別措置法を制定して、市町村の空き家対策に法的根拠を与えたのです。

空き家対策特別措置法では、具体的に市町村が行う施策までは定めておらず、基本方針を示したに過ぎませんが、法律の制定で対策しやすくなったのは確かでしょう。
また、空き家の放置を抑制する効果(後述する税制上の措置)が見込まれています。

これらの目的を達成するため、国が基本方針を策定し、市町村が空家等対策計画の作成その他の空家等に関する施策を推進するために必要な事項を定めるとされました。

空き家対策特別措置法が施行されたからといって、すぐに全国の空き家を一斉に強制撤去する強行策がとられるようなことはないでしょう。
空き家も所有者の財産であり、勝手に撤去することは財産権の侵害になるからです。

では、市町村は空き家対策として一体何を始めるのでしょうか?

市町村が何をするにしても、まずは行政区域における空き家の現況を確認しなければ、対策や措置を講じることもできないのは言うまでもありません。
(逆に言えば把握しきれていないということです。。)

そのため、市町村が最初に行うのは空き家の所在と所有者の把握で、そのために必要な調査や情報の提供を求めることができると規定されています。

その上で、市町村は対策が必要な空き家を選別することになり、所有者に対して適切な管理を促進するため、情報の提供や助言その他必要な援助 を行います。
そして、特に対策が必要な「特定空家等」にみなされると措置が講じられます。

空き家対策特別措置法では、著しく保安上の危険となるおそれがある空き家、著しく衛生上有害となるおそれがある空き家について、強制的に対処できる規定が設けられました。
しかし、強制対処はいきなり行われるのではなく、段階的な手順を踏みます。

最初に行われるのは、除却(解体)、修繕、立木竹の伐採等の助言又は指導です。
助言や指導を受けても改善しなければ、猶予期限を付けて改善するように勧告します。

助言や指導、勧告ならば、まだ何もしなくて大丈夫だと思うでしょうか?
ところが、勧告の対象になると、後述する固定資産税の特例対象から除外されます 。
つまり、助言や指導の時点でイエローカードが出されていると思わなくてはなりません

勧告にも従わないと徐々に重くなり、猶予期限を付けて改善命令が出されます。
このとき、対象者には意見を述べる機会(意見書や意見聴取)が与えられるので、どうしても改善できない理由があるなら、この機会を利用して陳述できます。

命令の猶予期限を過ぎても改善を完了できないと、いよいよ強制対処の対象になります。
ここで気を付けなくてはならないのは、命令を受けて改善に着手すれば良いのではなく、猶予期限までに改善を“完了”しなくてはならない点です。

改善命令を無視した場合、改善に着手しても不十分な場合、改善が猶予期限までに完了の見込みがない場合のいずれでも、市町村は強制対処が可能です。
つまり、「改善しているフリ」は許されない厳しい規定になっています。

ちなみに、強制対処の内容は必要な改善なので、倒壊の危険がない空き家まで強制撤去するようなことはないですが、改善の費用は所有者負担です。
所有者が負担できなくても、市町村が負担してその費用を所有者に請求します。

ただ、所有者が分からなくなる経緯は、相続時に登記変更の手続きが行われていないことも関係しています。
相続の手続きを行わなくても、自動的に法廷相続人が次の所有者になるため、戸籍からそれを特定することはできますが、支払いに応じなかった場合はどうするのか?という問題は残ります。

特定空家等に対する市町村の改善勧告があると、土地に対する固定資産税の特例(優遇措置)から除外され、土地の固定資産税が最大で4.2倍にも増額されます。