専業主婦と聞くと、ネガティブなイメージを抱く人は少なくないようです。市場経済を崇拝するこの現代社会においても、専業主婦は生産に寄与しないなどとまるで悪者扱いです。Amazonで調べてみれば、直ぐにその現実を知ることができます。専業主婦を肯定する本は、10年以上前からほとんど出版されていないのです。否定的は本は山ほどあるのに、なぜでしょうか?
夫「お前はいいよなぁ、専業主婦なんて楽できて。」
この安易なセリフ、本当に事実でしょうか???
アメリカの人材派遣会社による就職情報サイト「salary.com」では、毎年母の日に合わせて、主婦業の年収というのをメディアリリースしているようです。日本でも時々ニュースになるのでご記憶の方もいるのではないでしょうか。
これによれば、主婦労働をサラリーに換算すると、年収は1,000万円を軽く超えるようです。
参考:J-CAST記事『主婦は「年収1200万円に相当」本当か』
ってことは、専業主婦が交通事故にあったら、とんでもない補償額を請求できるのかも。と思ったら、そうではないようです。調べてみると年換算でたったの200万円。おかしいですね。
参考:むさしの森法律事務所webサイト「いわゆる主婦(家事従事者)の休業損害について」
あぁなんだかタブーの予感がします・・・。
主婦って軽んじられていないか?と疑問が湧いてきます。
しかしこれは、専業主婦の妻を持つ恐妻家の私には、自らの首を絞めることになりはしないか。いやいや、ひょっとしてパンドラの箱ではないか。男友達が減ったらどうしよう・・・。
などなど葛藤した結果・・・、とりあえず知らなかったことに。
と、一旦は封印したのですが、とある主婦の方とのコメントとのやり取りが切っ掛けで、ちょっと真面目に調べてみることにしました。とは言え、冒頭述べたように、最新の統計データなどの参考文献はほとんど期待できません。よって、かなり個人的主観に基づく記述もありますが、何卒ご理解ください。
【専業主婦の時代と価値観】
「主婦労働」を論理的に考える時、最初にイメージするのは女子大教育です。かつては家政学という観点から、炊事洗濯などの家事労働を、実践的技法だけでなく科学的アプローチも織り交ぜて教育しました。さらに、立ち居振る舞いから始まる礼儀作法、茶道華道や音楽芸術などを通じた文化教育なども行われ、英語などの語学教育も強化されました。それが今では、炊事から管理栄養学へ、育児から幼児教育へと変わり、その道のスペシャリストを育成する場へと変貌してきています。
参考:日本女子大学webサイト「家政学部」
この女性高等教育が始まったのは、今から100年以上前の明治中期です。江戸時代の藩校制度は、主に男性にしか高等教育を行わなかったため、その流れの中で女性のための教育として生まれたのが、現在の女子大の前進組織です。結果として、男尊社会は女性による家事労働の恩恵を大いに受けることになりました。また同時に、女性の高等教育は、女性たちの知性や社会的地位をも向上することに繋がりました。
1960年代、ベトナム反戦運動を契機にしてアメリカでウーマンリブが起こります。男女平等の考え方は70年代に日本でも盛んになり、雇用機会均等法などを生む土壌ともなります。その土壌を日本で下支えしたのが、女子大教育です。
当時、女性の社会進出を推し進めたのはやっぱり女性でした。土井たか子が法律を作り、田嶋洋子がメディアで叫ぶのは、まさに定番だったように思います。しかし、連日テレビで女性達自身の口から「食っちゃ寝してる専業主婦は社会の敵」だとか、さも大袈裟に言うわけです。これが専業主婦の立場をさらに危うくしていきます。
参考:Wikipedia記事「ウーマン・リブ」
しかし、80年代を過ぎると欧米経済は鈍化し、超一流と呼ばれたキャリアウーマン達は、どんどん結婚し出産するようになり、専業主婦が憧れの仕事のひとつとして考えられるようになります。欧米がそうした回帰の流れにあるにもかかわらず、バブル全盛の日本では、女性の総合職採用などと、加速の一途をひた走ります。
やがてバブル崩壊に至ると、今度は経済的な理由から女性達が家庭に回帰することが困難になりました。良し悪しはともかく、これが現在の少子化、晩婚化や未婚化などを増長していることは否定できません。最近では、高齢者介護の問題も加わり、WLB(ワーク・ライフ・バランス)なども叫ばれるようになりました。
今度はさらに別の理由をつけて、専業主婦がまたもや悪者扱されるという構図です。
参考:(株)ワークライフバランスwebサイト「3分でわかるワークライフバランス」
さて、さすがにここまで並べてしまうと、世の主婦の皆様方はもう怒り心頭でしょう。ごもっともです。でも、一方ではこんな驚愕のデータもあります。
【家事労働の生産と市場規模】
家事労働を経済学的には「家計の無償労働」と呼びます。それを産業と比較すると次のような数字が導き出せます。
参考:『あなたの家事の値段はおいくらですか?』経済企画庁経済研究所(現 内閣府経済社会総合研究所)
・家での食事は80兆円の価値があり、外食産業(11兆円)の7.2倍です。
・家での洗濯は38兆円の価値があり、洗濯業(1.2兆円)の31.4倍です。
ちなみに上記数値は1991年のものですが、2009年推計の外食産業の市場規模は約24兆円で、未だ3倍以上の開きがあります。クリーニング業界の直近の市場規模は不明ですが、売上は減少の一途ですから1兆円はとうに割り込んでいるはずです。凄いですね~、家事労働業界。
参考:一般社団法人フードサービス協会webサイト「平成21年外食産業の市場規模」
数字はまだまだあります。
・日本の無償労働は99兆円で、GDP換算で20%に相当します。
・うち85%(84兆円)は女性が占めています。
これ、驚愕の数字です。世の経済学者は興味ないのかも知れませんが、この見えない数字の増減が社会生活に及ぼす影響は、TPPや消費税どころではありません。専業主婦の見えざる労働を、なぜ誰も語らないのか。これは社会的に大問題です。
ということで、次回はこの続きを数字を使って考えた記事を書きます。もうほぼ書きあがっているのですが、読んでいる参考書があと少し残っていますので。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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驚愕!専業主婦の経済生産性(2)に続く