「科学主義」
:知を追究するための方法として科学を唯一視する立場、あり方。科学万能主義。あらゆる物事に科学の手法を適用しようとするあり方を指す事が多い。(実用日本語表現辞典)
:基本的には、いくつもある知のあり方のひとつである(あるいは、ひとつにすぎない)「科学」が、「科学」にふさわしい領域を越えて適用されうるというやり方、しようとするやり方について、不当な拡大適用だ、として批判的に指示する表現である。(Wikipedia)
タイトルを読むと、およそ宗教のタブーとは言い難いですよね。どちらかと言えば、ちょっと哲学寄りです。でも、私はこれをひとつの新宗教のカテゴリーに入れています。この科学主義に懐疑的な立場だからです。私に言わせれば、アイドルを信奉する価値観と大差ありません。
【遺伝子決定論】
人生最大の関心事。恋愛、結婚、仕事、家庭、家族。
すなわち、私はどのような人生を歩み、どのように死ぬのか。
遺伝子には、こうした人の一生の出来事が書かれていると考える人がいます。そうでなければ、別々の場所で育ったにもかかわらず、同じ才能や学力が芽生え、同じ仕事や同じ趣味を持ち、同じような恋人と出会い、同じ年齢で結婚し出産し、ほぼ同時期に亡くなった一卵性双生児を、科学的に説明できないからです。
人の一生のほとんどは遺伝子によって決定づけられる。その考え方を「遺伝子決定論」と呼びます。進化論を信じる生物学者はこの考え方に否定的ですが、遺伝学者や心理学者、精神医学者もこれを信じている傾向が強いのだそうですね。
参考:Wikipedia記事「遺伝子決定論」
さて、こうした研究は行動遺伝学というカテゴリーに位置づけられます。それによれば、人間の性格の半分は遺伝子によって決定づけられ、もう半分は学校や友人などの「非共有環境」によって左右されるのだそうです。反対に、家庭環境や育児方法などの「共有環境」は、統計的に有意なほどの影響は及ぼさないとのこと。
参考:ダイヤモンド社[橘玲の日々刻々]「遺伝は性格に影響を与えるが、家庭を調べても分からない」
これ、あなたはどこまで信じられるでしょうか。
【科学とは何か】
科学とは、反復可能性の証明によって存在します。すなわち、別の日、別の時間、別の場所で別の誰かが、同じ実験を行えば必ず同じ答えが得られる。それが科学です。太陽がなぜ東からのぼり、なぜ夜は訪れるのかは、科学が解き明かしました。科学はあらゆる自然摂理を説明し、社会理論を超越する絶対的なものです。少なくとも科学者達はそう信じています。
しかし一方で、宇宙の歴史、ウィルスの誕生、気象や環境など、これまで多くの研究が重ねられてはいるものの、未知の世界もまだ残っています。わかっているようでわかっていない世界。これらはいずれ解き明かされるかもしれないし、結局わからないかも知りません。
あなたは、科学がいずれ世界のすべてを解明すると思いますか。
【科学主義という新宗教の誕生】
以前の記事で、科学によって歴史の終わりが訪れるという話題に触れました。
今のところ、宇宙はかつて小さなひとつの点であり、それが爆発し膨張し続けている過程が現在の宇宙だということになっています。それが旧約聖書の天地創造にそっくりだっため、ビッグバン理論の証明は科学者たちを困惑させたという話です。
参考:過去記事「文明の衝突」
しかし一方ではこう考えた人もいました。
「科学はいずれ神をも証明する」と。
ところで私は、オカルトが好きです。いつの頃からか、映像に映る「オーブ」と呼ばれるツブのようなものが注目を集めるようになりましたが、これは空気中に浮かぶチリや、寒暖の差によって生じる空気の塊であることが既に証明されています。また、脳の特定部位に微弱な電流を流すと、実際にはそこに存在しない人物を錯覚することがわかっています。人魂もプラズマによって作り出されました。超常現象や神秘体験は、徐々に科学的によって証明されつつあるとも言えます。
これはつまり、行きつくところ伝統的な宗教概念の否定です。神を見たり預言を聞いたり、天地創造を創作したメカニズムすらもやがて解明されると考えるならば、それはもう科学という新宗教の誕生です。
【統計学による社会観測】
では現実の社会に目を向けてみましょう。株価はどのようなメカニズムで上下し、次の選挙では誰が勝ち、なぜ戦争は起こるのでしょうか。10年後のより良い未来を築くため、私達の社会は多くのデータを日々、観測しています。私自身も物事を語る上でしばしば数値データを用いますが、数値は時に一冊の本よりも雄弁です。一見すると測定や予測が不可能とも思える事象を、とても簡単に説明することができます。
アリが行列を作る理由や、空はどうして青く、飛行機はなぜ飛ぶのか。これらメカニズムを説明するのと同じように、風が吹けば桶屋が儲かる理由を解明する学問が、「カオス理論」という力学です。
カオス理論とは、社会科学を「因果」という力学から立証するアプローチのことです。世の中の事象には全て理由(因果)があり、そのひとつひとつを積みかねていけば全ての因果関係を解明することができます。ただし、全ての要素を詳細正確に計測することは不可能なので、それを統計的に数理解析するというものです。
参考:Wikipedia記事「カオス理論」
【カオス理論の問題】
コンピューターが発達し、人間では不可能なほど膨大な計算を瞬時に行うことができるようになれば、カオス理論が立証される。かつて、科学がいずれ世界のすべてを解明することが期待されました。
しかし、ここでバタフライ効果という問題に直面します。
「ブラジルで蝶が羽ばたいた結果としてテキサスで大風が起こるか」
つまり、投入される初期段階の変数にわずかな誤差があった場合、結果は大きく変わってしまう。データを採集するのが人間である以上、そこには誤差や主観が入り込むため、絶対の客観性は保証されません。この問題は初期値鋭敏性と呼ばれます。
参考:Wikipedia記事「バタフライ効果」
そしてもうひとつ。多体問題も克服できない課題です。人類の科学は太陽と地球、月と地球といったように、2つの対象物に対してのみ通用するものです。宇宙には太陽のような恒星が二つ連なる太陽系も多くありますが、その場合に人類の数理は全く歯が立ちません。つまり、地球から月や太陽の軌道を正確に算出することができても、太陽がひとつ増えたとたん、軌道計算は不可能となります。
参考:Wikipedia記事「多体問題」
これら課題を乗り越えることができず、カオス理論は成立しませんでした。それだけでなく、今では「カオス理論」という言葉を「解明不可能なもの」の隠語としても使うようにすらなってしまいました。
要するに、私は科学を信奉していません。統計学は科学的アプローチとしてとても有効だと思ってはいるものの、それが全能ではないとも考えています。所詮は数字。その程度です。こうなるともう、私が勉強が足りないとか、正しいか間違っているかという事ですらありません。イデオロギーの領域の問題なのです。
【科学が人の手を超えてしまっている?】
ところで、モノ造りには図面が欠かせません。しかし、従来の2次元図は、正面図と上面図、側面図と断面図を駆使して描くものの、その図面から立体物をイメージするのは容易ではありません。そこで登場したのが3DCADです。現在のモノ造りの多くは、3DCADによって3次元設計されています。
昔、IBMがITをテーマにTVコマーシャルをしていたのを覚えています。3次元曲面の多い大型航空機開発は3DCAD無しでは不可能なのだそうです。しかも、ネットワークで接続した複数設計者によるチーム設計を行う必要があり、一人の人間では一生かけても設計できない。最新テクノロジーによる道具は、とっくの昔に職人技術を超えてしまったわけですね。
参考:ダッソーシステムズ製品「CATIA V6」
科学技術の発達は社会を発展させ、生活を豊かにします。しかしその進歩があるレベルを超えると、科学技術はどんどん人の手から離れていくように感じます。Windowsにはマイクロソフトの設計者でも気付けないバグが多く潜んでいるし、ビルゲイツのような天才が何人居ても、その把握は難しいでしょう。高度化し過ぎた科学技術のどこかに、もしも致命的な綻びがあっても、誰もそれに気付けないようです。原発だって同じような気がします。
【経済は科学を使いこなせない】
もうひとつ別の例を挙げます。会社が引越しをする際、張り巡らされた既存のLANケーブルは全て捨ててしまうのですが、それを知る人は少ないかも知れません。
ネットワーク設備は、繋ぎ直すと必ずどこかで接続不良のようなものが生じます。その原因はケーブルの断線だったり、ちょっとしたコネクタの汚れだったりするのですが、規模が膨大になれば原因特定は困難を極めます。人員と時間とコストを無限に費やせば原因を特定できるでしょうが、そんなことはしません。新しいケーブルを張る方が安上がりだからです。だから、時にはトラック数台分にも上る新品同様のケーブルを、全て廃棄します。
しかし私から見れば、高度化し過ぎた科学技術はネットワーク設備そのものです。そこに経済性という原理が加わると、一見無価値でメリットが見出せないことについては、非常に疎かになりがちです。科学はとても尊いものですが、経済社会はいずれ科学を否定するのではないかとすら思えます。
【信ずる者は救われる?】
これから先の未来に、科学は幸せをもたらすのでしょうか。そのどちらを信じるかは人それぞれです。でも私は、遺伝子決定論など信じたくはありませんし、今日も家に帰ったら子育てに頑張ろうと思います。どちらが正しいかではなく、どちらを信じた方が幸せかという論点の方が重要に思えてなりません。かと言って、宗教の勧誘は遠慮させていただきますが。
今回も最後まで読んで下さりありがとうございました。脱線していたガンダム路線から、やっと本線復帰です。とは言えせっかくなので、空っぽで寂しかったプロフィール画像をアップしました。「ジオン革命を阻止した反省」の図です。
これからも引き続き、当ブログをご愛顧くだされば幸いです。
面白かったらランキング上げて下さい→