この国のタブー -63ページ目

この国のタブー

素人がタブーに挑戦します。
素人だけに、それみんな知ってるよ?ってこともあるかもしれませんが。
コメント、質問、大歓迎です。お手やわらかにお願いします。

昔話を書いていて、終わってみたら長文になり過ぎました。
ここ最近、少し文章が長過ぎる傾向があるので、2回に分けて投稿いたします。



21歳の時、しばらく音信を絶っていた中学同級生2名から電話があり、ファミレスでの食事に呼ばれました。突然の誘い。その脈絡の無さに、心の中では不信感でいっぱいです。しかし、これはちょっと古い表現ですが、呼び出したご両名が中学の番長と裏番だったもので、断る訳にもいかず・・・。

金貸してって言われたらどうしよう?暴力団からのスカウトだったらどうしよう?とかなんとか、ビビりつつも行ってみると、そこにはスーツにネクタイのご両名。
ここで気づきました。マルチだと。

しかし!これでむしろ元気を取り戻した私。現在の理屈っぽいキャラクターが完成しつつあった頃ですので、撃退などお手の物です。1時間のセールスをひと通り聞いた後に1分で断って、逆に2時間も説教くれてやりました。
でもね、回心しないんですよ。何をどれだけ論理的に説明し説得しても、全く聞く耳は持ってくれませんでした。こうしてやがて音信不通となり、数年後に聞いた風の噂では、ご両名とも羽毛布団を売っているそうで。進歩しないなぁこの人達は、と思います。


私はマルチには大反対です。本人を目の前にして、「倫理的に腐りきってる」と断言します。
ただ、マルチをする人達は結構勉強もしていて、意外と面白い教訓を残します。今回はそんな話です。



【マルチ商法とは】

(以下、消費生活センター(2013年5月31日)「マルチ取引」より引用)
マルチ取引とは、商品・サービスを契約して、次は自分が買い手を探し、買い手が増えるごとにマージンが入るネズミ講式の取引形態です。扱われる商品・サービスは、健康器具、化粧品、学習教材、出資など、様々です。
(引用ここまで)

「あなたは今からいきなり問屋になれますよ」、「誰かを勧誘してピラミッド構造の上位に位置すれば楽して稼げますよ」という謳い文句です。私が客を集めれば私に利益が出る。私の客が客を集めれば、さらに利益が出る。こんな仕組みです。「ネットワークビジネス」という別称もあります。
現状、様々な規制はあるものの、それさえ満たしていればマルチは一応合法です。ただし倫理的には大問題です。実際、野田政権でマルチ信者の山岡賢次が国家公安委員長に就任した際は、国会やメディアで大きく問題となりました。
 参考:多摩湖畔日誌(2011年9月5日)「マルチのドンが国家公安委員長」

ちなみにネズミ講とは、この商品が存在せず投資のみを謳ったものです。1万円集めれば2千円バックするみたいなことです。こちらは明確な出資法違反です。



【番長達が売っていたゴミ商品】

時は98年。Windowsが猛烈な勢いで成長し、家庭にPCが普及するのも時間の問題と言われていた頃です。そんな時代に彼らが販売してた商品が、「インターネット・テレビ接続端末」です。
PCが無くても、モデムをテレビにつなぐと、家電製品のリモコン操作の如くネットサーフィンができるというスグレもの。同じような製品で、当時は「WebTV」が頻繁にCMされていました。また、ゲームコントローラーによって同じことができる「ピピンアットマーク」という製品もあり、一種の流行だったのかも知れません。
しかし、私は既にPCを2台持っていて家庭内LANを構築していました。だから彼らの知識量では、全く議論になりませんでした。

「そんなものは絶対に売れない。TVはPCモニタと似ているけど、解像度が数倍違う。50インチのブラウン管で見ても、Yahoo!の広告すら読めない。お年寄りにも使えるって言うけど、年寄りにネットは無理。やめとけ。」

事実、これら端末で表示される画面は、後のガラケー初期のi-mode画面と大差ありません。テレビの大画面なのに、1行に表示できる文字数は10文字程度。それ以上縮小すると文字が潰れました。画像は全てピンボケして見えないという有様です。
結局これら商品は全部コケましたので、結局はIT弱者だった彼ら自身が騙されたというわけです。
 参考:INTERNET Watch('97/10/2)「家庭向けインターネットサービスの「WebTV」が国内でサービス開始」



【マルチ商法の勧誘常套句】

商品が変われど、親玉が変われど、この商法の基本は全て一緒です。というか、真の親玉は数名しかいないとも言われています。日本は経済犯の罪が軽いため、彼らは、出獄しては傀儡社長と新商品を探し、何度も同じことを繰り返します。

彼らが勧誘でしばしば用いる殺し文句がいくつかあります。


①権利ビジネスと不労所得
「土地を持っている人は働かずして稼ぐ。特許も著作権も同じ。これら権利ビジネスは不労所得を生むが、私達は土地を持っていない。だから権益を作ろう。」

いやいや、それは誤解です。不動産で生業を成す人は、多くの知識と労力を要して食べています。また特許や著作権の99.9%は利益を生みません。つまり本当に不労なのは極限られた人だけです。
また、実際にマルチはとても忙しく働きます。勧誘活動だけでなく、親ネズミの手伝いや子ネズミの教育、セールス勉強会などに年中無休で追われます。実際の不労所得者はピラミッドの上位数名だけです。


②人脈は価値
「あなたの持つ人脈には価値があり、その価値は利益を生む。無駄にするなどもったいない。」

人脈を金に換えようと思う人は公害です。私達の社会は相互信頼関係で成り立っています。決して金銭的な利益供与のみで成立しているのではありません。それがこの人たちにはわからないようです。


③全員が幸福
「皆がメンバーに加入すれば、私もあなたも家族も友人も、友人の友人までも、全員に利益がある。」

計算で言えば、1人が2人づつ勧誘すると27代目には日本の人口1億2千万を越えます。5人づつ勧誘するとわずか12代目で到達します。もちろん、日本人全員が加入することは無いので、これよりもずっと早い段階でビジネスは破綻します。つまり、無限連鎖講は数字として成立しないのです。この人達には、この算数の意味がわからないのです。
 参考:Wikipedia記事「無限連鎖講」

最近では日本のマルチも、裾野を広げるため中国や韓国へも展開しているそうです。しかし、途上国でネズミ講が破綻すると必ず暴動が起こります。歴史的に何度も殺されたり死刑になったことを、知らないのでしょう。それとも、これら国の法治水準が日本と同じとでも思っているのでしょうか。



【マルチの中にも凄い人】

ただ、マルチ商法に加担している人達の中には、経済を本当に勉強していて論破できない独自理論を展開する人も居るようです。

番長達がやっていた端末を購入しメンバーに入ると、親玉の会社から色々なものが安く通販購入できるようになります。例えばコーラ1缶は1円、醤油1本50円、ティッシュ1箱10円など。還元されたポイントでも購入できます。
ただし、購入数量は無制限ですが転売は禁止なので、儲けることはできません。親玉も、さすがに1円のコーラは大赤字です。余所でお金を使わせないようにはできるでしょうが、双方にとって何の得も無さそうですよね。

経済学的見地から見れば、これは一種の「地域通貨」です。よく、市町村や商店街が独自で発行して、その地域内では貨幣と同じように使える、商品券みたいな地域振興券みないなアレです。これには一体どんな意味があるのでしょうか。
 参考:地域通貨全リスト

実は、これを説明するには、地域経済の長い話が必要です。また地域通貨はとても奥が深く、マクロ経済への挑戦でもあります。以前の記事で取り上げた、政府紙幣とも関連があります。
 参考:過去記事「命を賭けて、お金の話」



ということで、前篇はここまで。後編にもご期待ください。
今回も最後までお付き合い下さりありがとうございました。



面白かったらランキング上げて下さい→

マルチ商法に勧誘された教訓(2)に続く