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この国のタブー

素人がタブーに挑戦します。
素人だけに、それみんな知ってるよ?ってこともあるかもしれませんが。
コメント、質問、大歓迎です。お手やわらかにお願いします。

ご無沙汰しております。
長期不定期更新で誠に恐縮なのですが、生存確認で投稿してみます。



昨日、新聞で気になるニュースが流れていました。

道路建設業界で何やら組織的な価格調整のカルテルが疑われているそうです。
産経新聞は一面で報じていましたから、ちょっと注目を惹きました。


 参考:道路舗装材でカルテル疑い 全国規模か、公取委が調査(2017.3.1,産経ニュース)


かつての「土建国家」という言葉に象徴される通り、建設業界は長年、その談合体質を批判されてきました。今回はアスファルト合材(道路舗装に使われているおなじみの黒いヤツです)の価格調整の疑いだそうです。同業界は昨年にも厳重な営業停止処分等を受けていますので、今回も処分が下れば業績への影響は必至だろうと思います。私もかつて、土木を学び土木で食べていた時期がありますので、他人事ではありません。

そこでちょっと、実際にその業界で働く同級生に取材してみたところ、報道から受けるイメージとは全く正反対の実情をこぼしていました。私はあまり驚きませんでしたが、久々にタブーのにおいがプンプンとしてきましたよ。



【談合天国東北における復興談合?】

ご存知の通り、東日本大震災では東北地方の道路が大きな打撃を受け、その復興工事には多額の税金が費やされました。どの家庭でも給料から復興税が天引きされていますので、その実感は今も生々しいですよね。しかし道路各社は、そんな中でも談合していたというのですから、矢面に立たされるのは当然です。税金ドロボー!とか言われちゃったりもします。


 参考:震災復旧談合、上位12社が主導か 親睦会「ハトの会」で結束(2015.3.5,産経ニュース)

しかし当時の現地は一体どういう状態だったのか。整理してみます。


①復興工事需要は官民問わず山積み
②資材不足と人手不足が慢性化
③材料費と労務費が高騰

原発事故はともかく、とにかく人と物資が無い。そもそもそれを運ぶ道路が壊れているから当然ですね。建設業界では、倍の費用を見積もっても、引き受けてくれる施工業者が見つからないといった、非常事態に陥ったのだそうです。

そんな中で、公共事業の実態はこうです。復興事業でも法に則り、指名競争入札(=一番安い業者が落札する建設業界の一般的な仕組み)で工事を発注しました。しかしその際の価格は、吊り上がった実際の市場価格と乖離していたため、落札業者は赤字を覚悟しなければなりません。もちろん税金の無駄遣いを抑制するために、公共事業は突貫工事や手抜き工事を許しません。となると、コストは上がる一方でも、建設業者には利益を出す術がありませんでした。



【進まない道路復興】

で、実際にどうなったのか。整理してみます。


①官庁工事に入札する業者がゼロ
②建設業者はより条件の良い民間工事へと流れる
③材料や人手は、東北以上に相場の吊り上がった市場(主に東京)へ流出
④結果的に復興は一向に進まない
 参考:【県内公共工事】入札中止相次ぐ 建設業 人手不足 復興需要に追いつかず(2011/12/02,福島新聞)

そして誰もいなくなった。ってまさにです。

道路会社も民間企業ですから、赤字工事なんてやりたくはありません。ましてや、日ごろから付き合いのある物流会社や製造工場あたりが、「2倍でも3倍でも出すから突貫工事やってくれ」と言って来るでしょうから、断る理由などありません。結果的に、高速道路の復興工事を発注する側のNEXCO東日本は、入札してくれると期待した建設業界から完全にそっぽを向かれ、手詰まりになりました。


しばらくして、事は急展開を迎えます。


これじゃダメだって志を持った侍がいらっしゃったみたいです。

「各社が1件ずつ高速道路を直そうぜ」


大赤字ですよ。材料も人手も高騰して手に入らないんですよ。中には自分の家、自分の会社だって壊れたままの作業員だっているんですよ。

それでもきっと誰かが言ったんでしょう。


「道路が無ければ復興できない」


なんでしょうねコレ。プロジェクトX?
いや、実際にそんな素敵なセリフがあったかどうかはわかりません。

でも友人の話を聞くうちに、なんだか泣けてきました。

で、その結果として逮捕されちゃうという始末。
 参考:東日本高速道路株式会社東北支社が発注する東日本大震災に係る舗装災害復旧工事の入札談合に係る告発について(平成28年2月29日,公正取引委員会)


【ブラック業界はどう変わる?】

現在、建設業界の業績見通しは非常に明るい状況です。公共事業が増える見通しはありませんが、2020年東京オリンピックの関連特需で、民間工事が増加。高層マンションや都心再開発事業、高度成長期資産の老朽化補修など、これでしばらくは食い繋げるそうです。
しかし一方では、作業員の満席的な不足から労務費が徐々に上昇しています。となれば、仕事はあるけど利益見通しはよくわかりません。過度な長時間労働は今や国民的な問題になりましたので、残業手当や技術手当を上乗せしても、現代の「理想の働き方」イメージには程遠いのでしょう。問題解決には時間が必要です。

加えて、公共事業の指名停止に営業停止ですからね。135日の営業停止処分を受けた会社もあるそうですから、潰れてしまわないかと少し心配になりました。

現在の日本、とりわけマスメディアにおいては、公共事業は悪です。しかし経済とインフラの両面から見れば、それが暮らしの生命線であることも事実です。あまり安く買いたたきすぎると、働き手がいなくなってしまうかも知れません。個人的には、過酷な自由競争は少し抑制して、社会インフラの整備体制をしっかり維持できるような仕組みづくりが必要な気がします。

建設業とご縁のない一般の皆さんは、こういうニュースをどう感じるのでしょうか。



今回も最後まで読んで下さりありがとうございました。