少年犯罪は凶悪化してない? | この国のタブー

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いじめ、窃盗、お母さん助けて詐欺。連続殺傷、バラバラ殺人。凶悪な少年犯罪がメディアで報じられる度、若者の未来に関わる仕事をしている立場として、また子を持つひとりの親として、いつも憂鬱な気持ちを抱きます。

「少年犯罪の凶悪化」

事件がニュースで報じられるといつも、メディアにはこんな言葉が踊ります。そしてそこには必ず、お定まりの社会分析が紐付けられていますよね。
少年犯罪凶悪化の原因は、家庭であり地域であり学校であり、また親であり教師である。いつも同じような論が、あたかもそれが確固たる真実であるかのように平然と繰り返されていきます。そんな話を耳にする度、親としては「襟を正さねば」といつも感じてしまうものです。

私を含め、子育てに関する多くの論はいつも懐古的です。
我々の親は厳しかったとか、かつて先生は人格者だったとか、もっと極端なケースだと、昔はそんないじめは無かったという人まで居ます。同様に、教師による犯罪の報じられ方も、それがまるで今初めて起こった出来事かのようです。
でもそれ、本当でしょうか。記憶とは脳が都合よく作り変えているもので、必ず美化されていくものですし、違和感を感じます。



【戦前は凶悪殺人だらけ】

こうしたメディアの一方的な主張に真っ向から反論し、自ら実地検証した人がいます。彼は図書館に通って、過去の犯罪報道を戦前にまで遡り、新聞記事や公判記録をひとつひとつ調べ上げて「少年犯罪データベース」という巨大なサイトを作った方です。まだ読んでいませんが、管賀江留郎(かんがえるろう)という名前で『戦前の少年犯罪』という著書も出版しています。
 参考:少年犯罪データベース

このサイトを見ると、日頃の報道がとても偏向していることがよくわかります。親殺し、子殺し、放火殺、銃殺、毒殺、暴動、集団殺人、幼女強殺。少年によって様々な凶悪殺人が毎年のように起こっていたことが、少し読むだけでも明らかです。著書の目次を引用してみましょう。

1、 戦前は小学生が人を殺す時代
2、 戦前は脳の壊れた異常犯罪の時代
3、 戦前は親殺しの時代
4、 戦前は老人殺しの時代
5、 戦前は主殺しの時代
6、 戦前はいじめの時代
7、 戦前は桃色交遊の時代
8、 戦前は幼女レイプ殺人事件の時代
9、 戦前は体罰禁止の時代
10、戦前は教師を殴る時代
11、戦前はニートの時代
12、戦前は女学生最強の時代
13、戦前はキレやすい少年の時代
14、戦前は心中ブームの時代
15、戦前は教師が犯罪を重ねる時代
16、戦前は旧制高校生という史上最低の若者たちの時代
 参考:Amazon『戦前の少年犯罪』


ここから見えてくる真実はこうです。戦前は少年による凶悪事件が沢山あったし、別に増えたわけでもないし、凶悪化してなどいません。犯罪の温床と言われる、ゲームやエロ漫画も無い時代ですが、同じように少年による幼女強殺は起こっていました。



【戦前の犯罪統計は未検証】

こうした事実に目が向かない理由は、きちんとした統計が無いためです。もちろん、戦前と今では時代背景や価値観が全く異なります。何よりも法律が異なりますから、犯罪の定義すら異なるわけです。従って、犯罪件数を今から検証する手立ては無いということです。残っているのは、新聞報道と記憶だけということになります。

マスメディアはいつも、犯罪件数の増加を示す根拠として、統計データのある戦後だけに着目します。しかしこれは、地球温暖化の論拠となった「ホッケースティックカーブ」と同じです。直近の犯罪件数だけが急激な右肩上がりに見えてしまうために、観る者の印象を操作してしまうようです。
 参考:Wikipedia記事「ホッケースティック論争」

というか、マスメディア自身はこうした事件を当時からきんと報じていますし、実際に糾弾までしているのです。それを誰も覚えていないフリをしているとすれば、何か不穏な力学さえ感じてしまうのは、果たして穿ち過ぎなのでしょうか?



【戦前の子育て教育環境】

戦前の時代を子育てに厳格な時代と考えるのは、どうやら先入観と美化された記憶によるイメージのようです。

作者曰く、戦前から続く日本の子育ては極めて放任主義でした。子供同士で遊び、親は面倒を極力看ない。これは農家出身の私にはよくわかります。大人たちは田んぼと畑で忙しいですから、恐らく多くの家庭がこうした育児をしていたはずです。
子供を看ないから、ふとした拍子に凶悪事件は日常的に起こります。家に刀や猟銃があれば刺殺や銃殺ですし、兄弟喧嘩が殺人に至ることもしばしばです。バラバラ殺人や強姦殺人、放火殺や毒殺までも起こっています。

また教育環境も同様です。先生が犯罪を起こすと、今初めて起こったかのようにメディアは囃し立てますが、実際には昔も沢山あったし、体罰も日常茶飯事でした。ただし、そもそも体罰は今も昔も固く禁じられていて、戦前から体罰事件は新聞で報じられていたそうです。一方で、今や体罰を厳しく取り締まる欧米はむしろ反対で、当時は体罰を容認していたそうですね。この辺も全部誤解なのだと思います。恐らく、戦中の軍国教育のイメージ(恐らくは映画や書籍)が独り歩きしているのでしょう。

こうなってしまうと、先人達の言う教育論は、その信憑性がどんどん剥がれ落ちていきます。何を頼りに育児すれば良いのか、私自身も非常に自信が無くなってきます。



【どうして少年犯罪は起こるのか】

ところでここからは私見ですが、最近のきちんと検証された少年凶悪犯罪の本を読むたび、私はある共通項に目がいきます。それは犯人の両親が決まって、「うちの子に限って」という反応をすることです。

実は、これを少し実感させる出来事が我が家に最近起こりました。
数週間前、5歳の娘が通う幼稚園で、ある女の子がいじめを起こしていることがわかりました。とは言え5歳のやる事ですから、仲間外れ、からかい、いじわる、嘘つきなど高々知れたことです。

しかし私にはとても不思議なことが2つありました。ひとつは、この子がいじめを何度叱られても、時には泣き出すほど怒られても、その行動を繰り返しているということです。これには先生達も相当手を焼いています。担任と面談した妻曰く、うちの幼稚園でこれだけ長引いてしまうのは過去に例が無いのだそうです。いじめの事実に周りが気付いていて、先生が目を光らせているということがわかっているのに、5歳の子供がいじめを止められないというのは、少し不思議です。
もうひとつは、いじめられた子の親達も幼稚園の先生も、誰もがこの事実に気付いてましたが、当の母親だけが知らなかったという点です。いじめられた側の母親が、本人の母親に苦言を呈するまで、全くその事実に気付いていなかったのです。

この理由が最近になってわかってきました。ひとつ目は、公園で一緒に遊んでいる時、この子の母と小学生の姉は、この子を仲間外れにしたりからかったりすることがあるそうなのです。もちろん本人達はふざけ半分でしょうが、同い歳の子を持つ周囲の親から見るととても異質です。その結果、この子はそれを真似て、幼稚園でも同じ振る舞いをしているように見えます。

わかったことはもうひとつ。一般的に5歳頃の子は、親に誉められたい心理から今日の出来事を積極的に話すようになります。一方で、いじめたりいじめられたり、喧嘩をしたなどの都合の悪い事実は伏せてしまいます。だから親は、時々こちらから尋ねてみるわけです。
しかしこの母親は、どうやらそれをしていません。あまりに幼稚園での出来事を知らないので、他の母親達はしばしば違和感を感じていたようです。子供に関心が薄いから聞かないし、尋ねないから知らない。

問題行動が数週間続き、さすがに業を煮やしたある親から苦言を呈されたこの母親は、謝罪もそこそこにこう反応したそうです。

「え?うちの子だけなの?」

無関心で育つ子供は不幸です。別に虐待やネグレクトではありませんし、教育は親の権利ですから、余程の信頼関係でも無ければ指摘することもできません。少子化の時代に乗って私の方こそが大袈裟なのだと思いますが、それでも同じ親として複雑な気持ちになってしまいます。



【少年犯罪抑止のノイズ】

話がやや脱線しました。

子育ては今も昔も大仕事であることに変わりはありません。つい先日も高齢出産のテーマを書きましたが、出産と育児は生物としてのヒトにとっては、人生で最も優先すべきテーマである訳ですが、人間は考える葦であり、またホモ・ルーデンス(遊ぶ人)でもあるので、子育て以外にもやりたい事は沢山あります。

でも私はいつも思います。昔は放ったらかしだった育児が、社会の成熟や少子化などによって、そうもいかなくなりました。にもかかわらず、世は個人主義という無関心、不干渉。私が子供の頃は、あっちこっちにカミナリさんとも言うべき頑固親父がいて、叱ってくれました。でも今は、叱ると親が反撃する時代です。それだけ、親に圧し掛かる育児負担も増えてしまった気がします。

大切なのは、主観やイメージに囚われず、正しい経験則(統計でも良い)を参考にして育児することです。データを過信し過ぎるのは危険ですが、知らないこともやっぱりリスクです。勧善懲悪を作りたいメディアと視聴者、ゲームやエロ漫画を排除したいPTAやフェミニスト活動家の話も、信じすぎると危険です。これらは正しい育児教育においてノイズですから、鵜呑みにせず自分の頭でよく考えることが大切です。親は、本当の意味で襟を正さなければなりません。



【この話のネタ元】

ところで、ここからは余談ですが、このテーマにはネタ元があります。以前にも記事で少しご紹介したTV番組ですが、Youtubeに大量にアップされていて、社会の裏側をとてもわかりやすく説明し、私にインスピレーションをくれる番組です。

・ネット配信番組「博士も知らないニッポンのウラ」
・東京MX放送「博士の異常な鼎談」(前番組の続編的な内容)
 参考:Youtube動画「博士も知らない管賀江留郎(少年犯罪の現実(1/4))」

つい先日も橋下発言関連で取り上げた水道橋博士と、評論家の宮崎哲弥がゲストを招いて裏側を聴くと言う対談番組です。あ、3人だから鼎談ですね。

両出演者の賛否はともかく、なかなかメディアが報じない真実を突っ込んで掘り下げているので、私はついその先が知りたくなって、まんまとゲスト出演者の著作をよく買ってしまいます。しかし現在は打ち切られてしまったので、非常に残念ですね。当ブログも、この番組のような着眼点を持てればなと常々思っています。

今回も最後まで読んで下さりありがとうございました。



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