あの日の海は凪いでいた

 

波の音はしない・・・・・・・静かな海。

 

彼女は赤いハイヒールを脱ぎ浜辺へ降りて行った。

 

長い長い海岸の先を眺めながら一人先を歩く

 

 

僕はあの娘の後ろ姿が好きだったから

 

10歩くらい後をついて行った

 

時折、波が足元に届き、くるぶしが濡れて光って見えた。

 

 

立ち止まって白い貝殻を拾って眺めていた横顔も

 

 

今はもう見ることができない

 

 

同じ海なのに・・・・・。

 

今は風と波の音だけが耳に残る。