グラスに氷を落し、酒をそそぎこむ・・・・・・・・・
グラスを口にし、舌にちょっとしびれるような刺激と芳醇な香が鼻をつく・・・・・・
アァ・・・・・・・・ 吐息をつくように声が漏れる。
届いた郵便物を一つ一つ開く。
中に一通のはがきが眼を止めた・・・・・・・・「この9月末を以って閉店をさせていただきます」
長く、行っていないお店のクローズの挨拶状だった。
僕が東京で仕事を引き受ける前によく通ったあの店・・・・遠く離れて、店に顔を出すことも無かったが、
季節ごとに届く、挨拶の手紙があの頃をずっと思いださせてくれていた。
もう何年になるんだろう・・・・・・・また一つ、思い出の店が無くなってしまう。
小さな箱いっぱいの郵便物に眼を通し
また、グラスをつかむ、・・・・・・・冷えたグラスは冷たい水滴で僕の指を濡らした・・・・
今日の酒は少し苦い味がする・・・・・・・・・・・・・・・・・思い出がまた一つ消えていく
溶けていく氷がグラスを打つ音がする・・・・・今夜はそんな静かな夜
こんな静かな夜のせいか・・・・・・この酒のせいか・・・・・・・何がこの心を熱くさせるんだろう。
「もう一度、顔を出してみようか」




