今夜もカクテルストーリーを

私が若いころバーテンダーのアルバイトをしていたころ

片思いの彼女が好きだったカクテル「ギムレット」

 

ある小説の一部分を引用して紹介しましょう

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ギムレットは、世界最強だった頃の英国海軍で生まれたというジンとライム果汁のカクテルである。

女は、そのギムレットを待ちながら、夕陽を受けて青から黄金色に変わりはじめた海へ、ぼんやりと視線を放っていた。
湘南、逗子の海を過ぎ、さらに三浦半島の奥まった海辺の古い酒場。客は、窓際のテーブルに腰を降ろした彼女一人だけで、
潮の香がたっぶりしみこんだ店内は、まだひっそりとしていた。

一面ガラス張りの大きな窓の向こうには、遥か沖へと海が広がっている。


海岸沿いに、三艇の白いヨットとモーターボートが繋留されている小ぢんまりしたマリーナが見え、その後方には、いかにも昔ながらといった感じの漁港が眺められた。

 

穏やかな海の小さな波頭が、キラキラと金色にきらめいている。ヨットの白い帆も、うっすらとオレンジ色に染まりはじめた。

あの夕陽が沈む頃までには、なんとか心を決めねばならない・・。


女は、朝から思いまどい、まだ決心をつけかねていた。

 

「どうも、お待たせしました」
頭上からのしゃがれた声に、女は慌てて脚を組みかえ、背筋を伸ばした。
初老のバーテンデーが高い痩身を曲げ、白く半透明の酒が満たされたグラスを丸いテーブルの上に置く。

「ここからの海の眺め、ほんとに綺麗ですね。・・・・・・つい、見とれてしまって」

 女は、バーテンデーがカウンターから出たことも気づかずにいた自分の、その放心ぶリのいいわけをした。

「ありがとうございます。このぶんでは、明日も上天気ですかな」

かつては軟派の湘南ボーイ。そんなちょっとくずれた雰囲気が漂う老バーテンデーも、窓の外に目をやった。
しかし、女の様子に気をきかせたのか、

 「どうぞごゆっくり」
と、すぐカウンターへ戻って行った。

ライムが爽やかに香るグラスの細い脚をつまみ持ち、女は冷たいギムレットをそっと傾けた。


ジンの混じり合ったライム果汁の酸味が口いっぱいに広がり、

やがて冷たくのどを刺激しながら流れ落ちていく。

 

ああ、やはりちょっと酸っぱすぎる。わたしにはライムの酸味がきつすぎる。

女は唇を丸め、ライムが爽やかに香る息を海の方へ向けて小さく囁いた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・中略・・・・・・・・・・・・・・・・

 

甘味の優しいギムレットを手に、女はまだ心を決めかね、迷い続けていた。
 海は、黄昏の心もとない残照の中、鋭い鉛色に変わりはじめている。

これは「ギムレットの海」というオキ・シローさんの短編の一説です

親子ほど離れた男女の恋愛を書いてるの・・・かな??

*********** "Gimlet"ギムレット **************************
ドライ・ジンとフレッシュ・ライム・ジュースをシェーカーに入れ、シエークし、カクテル・グラスに注ぎます。

Dry Gin 3/4,  Fresh lime juice 1/4

 

私はこれを作るときにグラスの縁を少し湿らせて、塩を付けた

Snow style が好きでした(塩の代わりに砂糖を使う人も)


 ギムレットは19世紀、大英帝国の海軍で生まれたというカクテルの傑作。当時、英国の海軍では、艦隊の将校に毎日ジンを支給していたという。 この官給品のジンを、軍医だったギムレット卿が健康のため、ライム果汁で薄めて飲むことを提唱。
これがギムレットの最初だそうです。
このカクテルを世界的に有名にしたのは、ご存知マーロー探偵が大活躍する、レイモンド・チヤンドラーの『ロング・グッドバイ』という小説です。
映画化もされ、その大ヒットと共に、世界中にギムレットの愛飲者を増やしたと言われています。
 つくり方、レシピとも非常にシンプルであるだけに、かえってバーテンダーのセンスが問われるカクテルといわれています。
ライム果汁の野性的な酸味を、砂糖でうまくてなづけるのが、うまいギムレット作りののコツのようです。

 

ペタしてねペタしてね

 

 

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