「跡取り」よりも大切だったもの
毎日、本当に暑いですね。![]()
この暑さになると思い出す、忘れられない出来事があります。
5年ほど前の、蝉の鳴き声が響く真夏の日。![]()
私は、一軒の大きなお屋敷へ伺いました。
玄関では、お父様が待っていてくださいました
。
とても厳格そうで、口数は少なく、少し近寄りがたい雰囲気のある方でした。
席に着くと、お父様は静かに話し始めました。
「今日は、一人息子の結婚について相談したくて、お呼びしました。」
ぽつり、ぽつりと語られる息子さんのお話。
とても優しく、真面目だけれど、自分から前へ出ることが苦手な性格。
本当は跡取りとして家庭を築いてほしかった。
でも…。
少し間を置いて、お父様はこうおっしゃいました。
「もう、跡取りなんてどうでもいいんです。」
「この子が一人で生きていくことの方が心配なんです
」
その言葉が、今でも忘れられません。
後日、お父様は息子さんをサロンへ連れてきてくださいました。
お父様の隣で、息子さんはとても緊張した表情
をしていました。
私は、お父様に少し席を外していただき、二人だけでお話をしました。
「今まで女性と付き合ったこともありません。
結婚なんて考えたこともありません。
自分には取り柄もなく、生きていくだけで精一杯です💦。
婚活なんて、とてもできるとは思えません。
でも、父の気持ちも分かります。
だから、とりあえず頑張ってみます。」
その言葉どおり、彼はとても素直に活動してくださいました。
31歳。
優しい人柄と誠実さから、お見合いのお申し込みもいただくようになりました。
活動を始めて半年ほど経った頃、一人の女性とのご縁がありました。
20代の再婚で、お子さんのいる女性
でした。
「まずは会ってみよう。」
そんな気持ちでお見合いをしましたが、不思議なくらい話が弾み、お二人は自然と距離を縮めていきました。
そして、ご結婚。
彼は、お父様が思い描いていた「跡取り」とは違う道を選びました。
お相手のご家庭へ入り、一人のお子さんのお父さんになったのです。
私は正直、少し悩みました。
「これで本当に良かったのだろうか
。」
そんな思いもありました。
すると、お父様が笑顔でこうおっしゃったのです。
「本当にありがとうございました。
私にも、いきなり孫ができました。
息子は向こうのご両親にも、とてもかわいがっていただいているようです。
私は、これで良かったと思っています。」
その言葉を聞いたとき、胸がいっぱいになりました。
跡取りを守ることも、大切な使命です。
でも、それ以上に大切なのは、息子さんが幸せに生きていくこと。
お父様は、そのことを一番に考え、潔く決断されたのです。
私は、その姿に心から拍手を送りたいと思いました。
親の愛情とは、自分の願いを押し通すことではなく、子どもの幸せを願い、その人生を信じることなのかもしれません。
今、彼は家族に囲まれ、新しい人生を歩んでいます。
きっと、お父様への感謝を胸に、一歩一歩、自分らしい家庭を築いていくことでしょう。
私はこれからも、そんな親子の想いに寄り添いながら、一つひとつのご縁を大切につないでいきたいと思います。
