大学入試の長い一日が終わり、ようやく帰りの新幹線に乗ることができた
疲れ切った私は、座席の背もたれを倒しもたれかかるように座った
これでやっと少し眠れる、そう思った
一方で、母は一人上機嫌だった
娘(私)の入試を「無事に」済ませ、観光も買い物も楽しんだだからだろう
新幹線の3列シートには、私、母、そしてその隣には若い女の子が座っていた
元々、母は私の友達や同級生(私以外の子供)には不自然なほど明るく親しげに接する人だった
母は、いつもの調子で隣の女の子にも話しかけた
偶然、女の子も私と同じ高校三年生だった
そして、やはりどこかの大学を受験してきた帰りだと言う
すると、母は素っ頓狂な甲高い声を上げて言った
「んまぁ〜!一人で受けに来たの〜!?エライわぁ〜!うちなんて娘が心配で私が付いてきたのよぉ~!」
母は、たまたま新幹線で隣になっただけの名前も知らぬ女の子を褒めそやした
一方で、反対側の隣で疲れて青い顔をした実の娘(私)には興味がない
二三時間隣にいるだけの見知らぬ女の子には良い母アピールをするくせに、
実の娘(私)に対しては良い母であろうとは微塵も考えないようだ
キャンキャン騒ぐ母の声が耳障りで、私はそっと目を閉じ寝た振りをした
私は涙が流れるのを隠すように、顔を反対に向けた
涙の理由はわからなかった
私はずっと、母の言動が理解できないでいた
母は私に対して興味や関心はない、母の関心は母自身が他人からどう見られるかだけだ
私にも心や感情があるなんて、母にとってはどうでもよいことだったのだろう
私は、母のストレス発散の為のサンドバッグであり、母の承認欲求を満たす為の小道具だったにすぎない
でも私がこのことに気づくのは、もっとずっと後のことだった
この大学入試に行った一泊二日が、私と母の最初で最後の二人での「旅行」だった
