仕事やめたい...
ある日夫から
深刻な声で電話がきた。






どうした、どうした。
私は慌てて鍋の火を止めた。






そういえば最近
元気ないなって思ってたんだよ。
家買いとか言い出してごめんね。
プレッシャーになっちゃったかな。
一旦休憩しようか。
ごめんねごめんね。






私のまくし立てを遮るように
夫が早口でこう言った。






おしりかじり虫が流れた。






ときを戻そう。






夫と私は同じタイミングで
スマホを変えた。






変えたは良いものの
使い方が分からなくて
四苦八苦している。






このときは
留守電設定に困っていた。






ちょっと電話をかけてみて。
ちょっと喋ってみて。






そう夫に言われたから
おしりかじり虫を歌った。






♪~♪

おしりかじり虫~
おしりかじり虫~
かじって、かじって、こんにちは。

♪~♪






正直おしりかじり虫がなんなのか分からない。
アニメをやっていたので
かじり虫のフォルムは分かるが
メロディーや歌詞は知らない。
歩いていたら突然
おしりをかじられるのだろうか。
あまりの痛みに泣いてしまうのだろうか。
でも怖いものみたさにちょっとかじれたい。
そんな願望をこめて私は歌った。
私が考えるおしりかじり虫を
全力で。






それが夫の会社で流れた。







留守電を消そうと思ったら
間違えて再生ボタンを押して
しまったらしい。






社内に響きわたるおしりの歌。
振り返る周りの人々。
顔を上げない夫。






想像しただけで





































笑える。






仮に私が会社で同じことをしても
こうはならないだろう。
普段から下品な歌をうたっているので
あーはいはいとあしらわれて終わりだと思う。






でも夫は真面目。
肩パットスーツの超真面目男。
メガネはメガネふきでしかふきません。
外出時のハンカチとタオルはかかせません。






そんなミスター真面目から
おしりかじり虫がこんにちは。






こんな奇跡を起こせる人
会社には必要だよ
そう言って私は電話を切った。






夫はその日
辞表を出さなかった。






日付は変わって今日の私。






駅のホームで
音楽を聴こうと思ったら
安室ちゃんの
ボディー・フィールズ・イグジットが
大音量で流れた。






イヤホンをスマホに
さしていなかったらしい。






ボディーフィーあたりであわあわした。






全力であわあわしてしまった。






なにこれ
めっちゃ恥ずかしいじゃん。






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