スルーロマンス

冬野梅子

 

【あらすじ】

元・売れない役者の待宵マリと

フードコーディネーター菅野翠、

ともに32歳。

同時期に恋に破れたふたりが、

そんなふうに諦め半分に愛を求めつつ、

始めるのは女ふたり暮らし。

 

良い最終回だったびっくりマーク

 

 

マリの生き方も翠の生き方も素敵だ。

私はどちらにもなれない気がしてへこむけど。

 

やっぱ私に向いてるのは無職なんだよ

いつも漂ってる

↑マリの台詞だけど私のことかな??と思ってしまった。

でも私とマリの違うところは、

マリはうだうだと悩むのをやめて

やっぱ私はこの顔に似合う最高の人生を送らなくちゃ

そう切り替えて再び夢と掴みに行くところ。

 

 

翠は結婚をする。

愛してはいないが情を感じる相手と。

愛してない人を、大事にしていくと決意して。

分かり合えなくてもいい。

一緒にいて居心地がよく、

恋愛とは別の、情で繋がるちょうどいい関係。

分別ある大人としての確かな関係を求める翠にとって

それは最善の選択だったのだろう、と思う。

 

 

それを聞いたマリは、

それなら私も翠ちゃんと結婚できたらよかったのにと話す。

翠は自分が出会ってきた人間の中で

一番尊敬する、素晴らしい人だから。

自分はきっと翠のためなら頑張れる。

翠となら、辛い気持ちも楽しい気持ちも分かり合える。

でも私じゃ頼りないからしょうがないねと笑うマリ。

 

 

結婚と恋愛は違う。恋と愛も違う。

ならどうして同性の友情婚はだめなのか。

それはやはり国家が支援したくない婚姻関係だからだろうな。

国家は生産性のない関係性に価値を置かない。

では異性婚のDINKsは?っていう話にはなるけどね。

よくわからなくなってくる。

 

 

翠の素敵なところは、自分と他者との間に

しっかりと境界線を引けるところ。

自分が結婚することになり、つい

マリちゃんにも居心地のいい相手と

不安なく暮らしてほしい

「私のように」そう思ってすぐに

その思考が傲慢であると気が付くのだ。

それがマリちゃんの幸せかは分からない、と。

これができる人は案外少ない。

無意識に自分の幸福感を押し付けてしまうのよね。

 

 

例えば私は結婚も出産もしたくないと思っているけど

あえてそういったことを伝えたりもしない。

だから既婚者の友人は、

「子供産んだら手伝ってあげられるよ!」とか

「一緒に暮らす人は良く考えた方がいいよ!」とか

親切心で言ってくる。

そのたびにモヤっとしてしまう自分がいる。

私、子供ほしいなんて言ったっけ?

結婚して誰かと暮らしたいって言ったっけ?

思ってもないこと言うはずない。

彼女は、人はみな結婚・出産を望んでいるはずだという

価値観を持っているだけ。

でもそれが寂しかった。

こんなに長い付き合いなのに、私自身を

見てもらえてなかった気がして。

仕方のないことなんだろうけど。

 

 

そして翠は最後まで現実的だ。

結婚という確かな幸福を手に入れたことにより

妻・嫁・誰かの娘として

尽くすことを求められるかもしれない、

この本流に抗えるのだろうかと危惧する。

 

 

最後のエピローグの言葉もよかった。

マリは都合の悪い女だ

いつも自分の気持ちに従う

献身も自己犠牲も全て拒否する

「あなたは幸せになれない」

という言葉も無視する

どこまでも走り続ける

自分のために

女友達という伴走者のために

 

そう、女友達は人生の伴走者なのだ。

そして私もマリのように、

この世界にとって都合の悪い存在でいたい。

 

 

あと、わかる~って思ったのが

長らく彼氏のいなかった翠に彼氏ができて

周りが「よかったね!」って言うのよ。

今までの一人で生きてきた私は

よくなかったのか?ってなるやつ。

もちろん周りはそういう意味で

言ってないというか、何も考えずに

おはよう!くらいのテンションで言っているのは

わかるんだけど。だけどもだけど。

そういう些細な言動に気を配れる人って

素敵だなと思うし自分もそういう人間でありたい。

 

 

冬野梅子先生の漫画はどれもアラサー女性の

解像度が高くておススメ。

 

 

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