ナイルパーチの女子会

柚木麻子



【あらすじ】

商社で働く志村栄利子は

愛読していた主婦ブロガーの

丸尾翔子と出会い意気投合。

だが他人との距離感を

うまくつかめない彼女を

やがて翔子は拒否。

執着する栄利子は悩みを相談した

同僚の男と寝たことが

婚約者の派遣女子・高杉真織にばれ、

とんでもない約束を

させられてしまう。

一方、翔子も実家に問題を抱えー。



山本周五郎賞と高校生直木賞を
受賞した作品。
ずっと読んでみたくて
文庫化されていたのを
発見して即買い星
 

文字小さめでぎっしり!
なのでハードカバーで読んだ方が
読みやすいかもしれない…

 
それでも内容の面白さに引き込まれて
あっという間に読了。
しばし呆然。
高校生の頃に、出会いたかったな。
この作品に。
 

友達とは何か?
幼い時、何度も問いかけ
探し続けた答えが、
ここにある気がした。
 

今までは、
自分と同じくらい大切に思える存在。
と定義していたけど。
それもひとつの答えだと
今も思うけれど。
 

こんなにも、こんなにも、
言葉にならない気持ちが
言葉になっている作品は
なかなかないと思う。
普通はここまで奥深く、
見つめられないものだから。
 

ランチのアッコちゃん、
伊藤くんAtoE、
嘆きの美女と映像化されてきた
作品たちの面白さに、
ずっと注目していた柚木麻子さんの
本を読んだのはこれが初めて。
 

自分以上に自分のことを
理解しているんじゃないかと
錯覚を起こすほどの
洞察力がこわい。
そしてなにより真織が怖かった。
 
 
人間関係に完璧なんてない。
永遠もない。
家族でも友達でも恋人でも
会社の人間関係も。
コミュニケーションを怠れば、
すぐに壊れる。
絆なんて1秒で消えることもある。
 

私は『面倒くさい』が
小学生の頃から口癖だった。
それは今も変わらない。
だから一番翔子に近いのかもしれない。
でもそれじゃダメなのだと、
初めて思わされた。
 

同じ時間を巻き戻すなんて
決してできなくて。
でもそれは悲しいことじゃない。
一瞬一瞬過ぎ去って行く眩さを
閉じ込めて保存して、
時々取り出して思い出す。
それで十分なのだ。

 
そして、どんなに言葉を尽くしても
わかりあえない関係もあること。
血の繋がりのある親子でさえも。
 
 
かつて、あるカウンセラーに
どんなに嫌いでも
父親には感謝をし全てを許せ、
問題を解決するには
それしかないと言われ
絶望した思い出がある。
今ならそんなポンコツカウンセラーの
言うことなど無視するが
当時はまだ私も若かった。
どうしてもできないと答えると、
あなたは傲慢だと言われ、
愕然とした。
 

今なら彼女にこう言う。
親子であれば全てを許し合い
分かり合えるものだという
考え方自体が、
傲慢なのではないかと。
 

もしこの作品を映像化するなら
翔子…満島ひかり
栄利子…北川景子
圭子…水川あさみ
真織…伊藤沙莉
でやってほしい★



栄利子に伝えたいこと。

会話に間違いも正解もないよ。
心に浮かんだことを伝えるだけ。
ただ、これを伝えたら相手が
傷つくかも…悲しむかもって
気づいたことは言わない。
それでももし、うっかり
言ってしまって相手を不快に
させてしまったなら、謝ればいい。
謝っても許してもらえなかったら、
それまでの関係なだけ。
時間が解決してくれることもある。


うまく話そうなんて思わなくていい。
聞かれたことに、答えるだけでもいい。
話したくないときは
話さなくていいし、
ただ相手の話を聞くだけでも
いいんだよ。
そもそも会話って、
自分だけの責任じゃないからね。
その場にいる全員のもの。
つまらないって思われるのは
怖いかもしれない。
でも、つまらないと感じるのは
相手の責任でもある。
相性や笑いのツボなんて人それぞれ。
だからテキトーでいいんだ。


人間には言葉があるから、
つい会話を重要視してしまうけど
そもそも会話なんて
そんなに必要なのだろうか。
動物は言葉を話さないけど、
動物と友達になることはできるはず。
実家で飼っていた犬と、
私はたしかに友達であり、
家族だった。
一言も言葉を交わしたことはなくても。