私から電話する、と言いつつ何もおもいつかなかった。
なんて言おうか…
「父が起きないので…あの、緊急のご用事でしょうか?」とか?
「あの、父の会社の方ならお伺いしたいんですけど、最近父に変わった様子はありませんか?」とか?
思い切って「父を返してよ!バカバカ!(もちろん泣き叫びながら)」とか?
浅はかだなぁ自分、と思いつつ電話する為に父の携帯を手に持った。
着信履歴からS原に電話。
ワンコールも鳴る前に通話状態になった。まさに音速。
そしてS原は今夜一番の醜態を晒す。
「○○ぅぅぅぅうううううううう!!!」
(あ、伏せ字は父の名です)
もんのすごく泣き叫んで父の名を呼んでいた。
耳がキンキンした。
私は冷静に、キョトンとしたふりを装い、
「あの…?娘ですけれど…」と。
相手は無言で電話を切りました。
フォローしてみろってんだ。
電話を切ってどっと力が抜けた。
父は、浮気をしていたんだ。
浮気をしていたんだ。
浮気をしていたんだ。
家族を、私を騙して他の女の人にいれあげていたんだ。
これからどうしよう。
父になんて言ったらいいんだろう。
知らないままの方がよかったのかな。
もしかしたら、私が家族をめちゃくちゃにしているのかなぁ。
不思議と涙は溢れて、その晩はそんな事ばかりを考えていました。
バカな女はとうとう墓穴を掘りました。
父の勤務先は上司を名前で呼び捨て、なんてフランクな事がまかり通る会社ではないはず。
この夜中に、動揺して泣き叫びながら電話をかけてくる。
そしてホテルで一緒にエレベーターに乗り込む時の写真。
言い逃れをしようと思えば出来るだろう弱い証拠しか集まってない。
だけど、これは現実で、私の気持ちは固まっていた。
明日の朝、父に話そう。
感情任せになってはいけないとは思っていた。
がなりたてて追いつめて、父がその愛人にますますハマってしまったらもう本当にどうしようもない。
でも手をこまねいている気はなかった。
子供に浮気を突きつけられる父親はどんな気持ちがするだろう。
一縷の望みにかけたかったのかもしれない。