本日は、保存詩作品をまとめて数作品ほど、一気に載せました。
ご了承ください。
【 手紙形式による物語詩作品 】
【 リンドウの咲く丘 】
〜〜 自然への詩 〜〜
【 作者/彩鳥 桜花 】
全てがフィクションであり、現実に存在するものとは無関係な物語ふうの詩作品です。
【 ただし、モデルとなったお話は存在しています。】
あくまでも、これは物語ふうの詩作品に属します。
なお、手紙形式による物語詩作品です。
ご了承ください。
★★★★★★★★★★★★★★★★★
〜〜 前略 〜〜
リンドウの花は、まだその丘で咲いていますでしょうか。
リンドウは知っていたのでしょうか。
そこにいた小さな女の子が、どんなことを思いリンドウの花を眺めていたのかを。
おそらく、そこにいた小さな女の子にとってはリンドウの花こそが友人であり、話し相手となっていたのでしょう。
何故か、その里ではリンドウの花は嫌われていたのですね。
ムラサキ色の美しきリンドウの花が、里の人々に嫌われていた理由は定かではないけれども、偶然にも咲いていた丘の影だったので、暗い場所に咲く花だから悪いイメージで受け止められてしまったのだと思います。
いつだったのか、リンドウが咲く場所で、リンドウの花を話し相手にしていたら、通りかかった里人から、暗い影の場所に咲くリンドウの花は、何故か見ていると薄気味悪いと言われてしまったことがあります。
何故か、私は友人であるリンドウの花が、そんなふうに言われて悲しくなったことがあります。
リンドウが咲いていたの場所が、偶然にも丘の影だったので、暗くて悪いイメージとして里人には定着してしまって、咲いているリンドウの花を持ち帰ったら『 薄気味悪い花など……… 』と言われてしまい、捨てられたことがありましたね。
その時、もしかしたら私よりリンドウの花の方が悲しかったのではないかと、そんなことを考えたことがあります。
そうです。
リンドウの花を話し相手にしていたのは、かつて小さかった頃の私なのです。
ひたすら咲いているだけなのに、人間には嫌われて捨てられてしまった、哀れなリンドウの花よ。
さぞや、あのときリンドウの花は悲しかったことでしょう。
今でも、ふとリンドウの花を見るたびに悲しくなり涙が出て、とても切なくなってしまうのですね。
あの頃、里人からからはリンドウの花は嫌われており、また私も花を話し相手にするから変わり者だと嫌われていました。
リンドウの花は咲いているだけなのに嫌われてしまって、何故か私の姿と重なり合い、リンドウの花が自分自身の心と重なり合ったのでしょうね。
とても悲しかったことがありました。
里人にとって、リンドウの花が変わりものなら、私は人間の中での変わり者ということになるのでしょう。
私は大人になった今でも【 変わり者 】と呼ばれていますが、大人になると変わり者と呼ばれることに慣れてしまい、それらの切なさから心を逃げる術を知っていて、いつしか【 変わり者の大人 】と呼ばれることに知らんぷりをするようになりましたが、【 リンドウの咲く丘 】のリンドウの花はどうだったのでしょうね。
少しだけ心配になったのです。
リンドウの花は人間のような言葉を持たないからこそ、むしろ心配なのです。
リンドウの花は、誤解されたままで切なくはないでしょうか?
伝わらない言葉や花の内が、リンドウの花自身は悲しく切なく思ってはいませんか?
花に言葉がないなんて、誰が決めたのでしょうね。
花自身になったわけではないから、花自身に言葉がないとは言えませんものね。
もしかしたら、人間の知らないところで花自身にも言葉を語る術があるかもしれないと、私はそう思うのですね。
もしかしたら、リンドウの花が悲しいと言って泣いているかもしれない。
リンドウの花にだって、悲しみや切なさの心はあるのかもしれない。
凛として咲くリンドウの花は、表顔だけでリンドウの花の内までは見えません。
むしろ、凛として清々しく咲いているからこそ、その花の内は哀しみや切なさがあるのかもしれないからと思うのですね。
凛として咲くということは、そういうことなのではないでしょうか。
リンドウの花顔の中で、その花顔の見えないところで秘かに泣いていた心もあるのではないかと、今でもそんなことを思う私なのです。
私はいつも、あの頃からリンドウの花が心配でした。
今でも心配しています。
里人からは嫌われていても、私は【 リンドウの咲く丘 】のリンドウが大好きですよ。大人になった今でも。
いつか、何処かでリンドウの花を見つけたら、また話し相手になってあげましょう。
きっと、楽しい会話ができるかと思って楽しみにしているのです。
あのとき私は、その場所を【 リンドウの咲く丘 】と呼んでいました。
いつか何処かで、あなた方の友人と語り明かしましょう。
その日を楽しみにしております。
【 リンドウの咲く丘 】に咲いている、リンドウの花々たちへ。
******
リンドウの花よ
美しき色を風に揺らせて
小さなドレスを着るかのように
それらの花が
なんとも緑なす丘と
笑うかのように咲いている
リンドウの花よ
咲く花は
どの場所で咲こうとも
美しき花は花
花に言葉はありませぬ
人の思惑で咲いているわけでは
ありませぬ
美しき色を放ち
花の匂ひを奏でて
微かに花声を紡ぐとき
季節の風は愛しげに
リンドウの花の
あなた方を見ることでしょう
★★★★★★★★★★★★★★★★★
昔、ある里では、そのリンドウの咲く場所が神社の丘にあり、近くに人のお墓などもあったので、その里人の間では【 お墓に咲く花 】として嫌われていました。
ある地方の小さな、ある里のお話です。
そのお話をもとにして、この物語を作成しました。
昔のお話です。
今では地域開発により、リンドウの花も姿を消してしまい、リンドウの花は咲いていません。
リンドウの花に思いを込めて。
リンドウの可憐な花へ。
リンドウの花に愛を込めて。
【 作者/彩鳥 桜花 】
【 上・下三枚の写真は、すべてリンドウの花ですが、中には黄色いリンドウの花も存在します。
三枚目の写真が、黄色いリンドウの花になります。】
作品内に、誤字脱字がありましたら御容赦ください。
その際は、後日、直します。