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詩【 寄り添い合う花心 】



大きな岩場の影に咲く
一輪の白い花は
辺りから隠されたように咲くけれど
岩場の影は風も当たらず
反対側にまわれば
柔らかな陽射しは当たる


それらの岩場の影で
陽射しだけを受けて
微笑みながら咲き誇る白い花一輪


岩場の上をいく誰ぞも
通り過ぎていく
上をいく人が見つけたならば
人は口々に言うだろう


隠れた場所で咲き誇る花が
目立つわけもなく
目立たぬように咲く花が
なんとも寂しげであると


花心すらも見ずに
何故に言えるのかと


お花畑に咲く花は   あでやかに
見事な大輪を誇り咲くだろう


それらとは裏腹に
岩場の影で    ひそやかに
ひっそりと片隅で咲く花なれども
岩場に当たる嵐や雨の滴りを
白い花に必要な分だけの
生命の水を与えていると
誰が知るだろう


高山植物の花は
こうして
お互いがお互いを支え合って
山岳の地で生きていると
知るならば
岩場の影で隠されるように
ひっそり咲いている花が哀れだと
誰が言えるのだろう


大きな岩場の影で隠されるように
咲き誇る花は凛として
柔らかな陽射しを浴びて


片側だけを眺めて
岩場を登る人には
見えない姿かもしれぬ


なれども
白い花一輪は
穏やかな陽射しの中で咲き誇る


人の見方は
それぞれなれども
片側だけでは見えぬこともある


白い花一輪の向こう側で
浮かび上がるのは
いつぞや   大きな桜の木の下で
桜と寄り添うように咲いていた
一輪だけの野スミレの花が
映し出されては風の中に流れる


大きな岩場は
風と嵐や大雨から白い花一輪を
秘かに守りながら
そうして白い花の花心とともに
山岳の地で寄り添いながら
その場所で   ともに生きている


ひっそり片隅で目立たぬように咲く
白い花一輪の生命の水は
秘かに岩場が与えて支えていると
ともに   お互いを支え合いながら