「カイト」マイケル・モーパーゴ/ローラ・カーリン | 松岡奎葉/FutabaMatsuoka

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主に本の紹介をブログにしています。他にもたまにポツポツ。普段はビデオとフォトグラファー&日本ネイリスト協会ネイリスト&一児の母。
21歳の目線にうつる本やら物を書き綴ります。



皆様こんにちは、奎葉です。
最近やっと読書をする気力?が出てきたので
ネタが豊富でございます。
今回は、一見絵本のように見えるのに本当に心にずしりとくる作品をご紹介いたします。


あらすじ

1人のカメラマンが、映画(ムービー)を作るために、ひょろっと旅に出ます。
その先で、口を開かないけれど、彼の持つカメラに興味をそそられ近づいては彼からカメラを借りようと身振り手振りでお願いする少年と出会います。
ひょんな事から、カメラマンはその男の子の家に数日寝泊りすることに。
カメラに興味を持つ少年は、ほとんどの時間をカイト(立体紙飛行機のようなもの)を作ることに費やしていると知るカメラマン。
彼は、少年がどうして口をきかないのか。
どうしてカイトを作り続けてるのか。
少年の家族から聞かされることに。
その理由は、あまりに悲しく、聡明な理由でした。


さて、あらすじはここまで。
ここからは、感想です。

正直、ここまで困惑しながら読み始めた本は初めてでした。
最初は、カメラマンの視点から物語が始まるのに
次の章では、視点が変わり
誰が語っているのかすらほぼわからないまま、話が進みます。
あまりにも前のページと次のページが繋がらなくてなんどかめくり直しました。

この物語は、カメラマンが少年に出会うという、一言であらすじが言えてしまうほど単調な内容です。
でも、その単調さ故の複雑さが物語の感動を生み出していました。

まず、カメラマンの言葉が私には刺さりました。
映画の撮影をしているとき、それは自分がその場にいると思いながら仕事をする。
戦争中の物語ならば、自分の明日の生き死がわからない現状に、置かれるのだと。
戦争や、過去の出来事を演じたり、撮影したりする中の葛藤に、感動を覚えました。

少年が口をきけない理由。
彼は、話せないのではなく、話さないのです。
戦争中、目の前で、兄が撃たれ、亡くなった日から。

カメラマンの男は、壁をテーマにした作品を撮ろうとしています。常に人間は壁の向こう側と繋がって生きている、ような話が描かれています。
まさに、カメラマンの男からしたら、壁の向こう側と言ってもいい場所で出会った少年。
物語の最後では、少年がどうしてカイトを作り続けてるのかも明確にわかります。彼は、鉄格子でできた壁の向こう側の、敵国の子供に向かって、そのカイトを飛ばし、
カイトを送り返してくれることを願いながら飛ばしているのです。
兄が亡くなった日から、平和を祈りながらずっと。
そして、ラストではとうとう、少年の飛ばしたカイトを拾い上げる少女が現れます。

本当の平和を祈る彼らの物語は、一つの希望の光をさしたシーンで終わっています。

最後に、訳者の方も言っていますが
戦争が終わる日が来ることは、ないのかもしれません。
恨みが恨みを作り、悲しい結果を、今もなお世界のどこかで作ってしまっていることは事実です。その連鎖を止めることは中々できません。
でも、少年がカイトを飛ばしつづけたように
祈る人が1人でも多くなれば、いつの日か…そう思わせてくれる作品でした。

本当に、言葉では表せないくらいの
良い作品です。
多分、この記事では私の感動は2割ほどしか伝わってないと思います。
図書館で借りた本なのですが、是非手元に置いておきたいと思う本でした。
是非皆様も、機会があれば読んでみてください。
独特な物語の雰囲気と、込められた想いを直に読んで感じていただきたい作品でした。

では、また次の記事で。
ふたばでした。