「グレッド隊長!」
「遅いぞ!そいつは?」
「こいつは、D1地区で丸腰でクロチシムに襲われそうになっていた男です。怪しいので、取っ捕まえてきました」
「...おっさんがアンラッチャーの親玉なのか?」
「テメェ!隊長をおっさん呼びにするな!」
「おっさん。俺は...記憶がところどころないんだ。この虫たちがこの世界を蔓延る前の記憶が。俺は、この世界が今どうなってるのか知りたい。ずっと聞きたかった。アンタ達は、何故この虫たちと戦っている?このクロチシムを殺せば、この異様な惨事の理由がわかるのか?」
「ふむ...理由が分かるのか、という問いには、分かると答えよう」
「なぜそう言い切れる?」
「その答えを言う前に、お前の潔白を証明してもらう必要がある。お前は俺たちの敵となる存在か?味方となる存在か?お前の目的によっては、俺はお前をここにいることを許しはしない」
「...お前の仲間を知っている。隣だが、同じビルに暮らしている。少なくとも、俺はそいつの敵ではない」
「何?!それなのにアンタはあの危険区域にいたの?そいつの名前はなんだ!言え!」
「ショーン」
「ほう、ショーンか...何故得体も知れないお前とショーンが一緒にいる?」
「記憶をなくしてから、さまよっていたところを、危険だからと匿ってくれたんだ。アンラッチャーになるようにずっと言われていた。でも自分のことも、この世界のことも俺は何もわかっちゃいない。そんな状態で、何かと戦うことはできなかった。だから断っていた」
「そうか。ならば話は簡単だ。戦うことを選べ。
この世界は崩壊寸前だ。この虫どものせいでな。お前がお前自身を取り戻す前に、この世界は虫どもに食い尽くされて終わりを迎えてしまう。何かを知りたいというのなら、俺たちと戦え。お前はさっき、虫を殺せば何か分かるのかと言ったな。分かるさ。少なくとも、ここで死に絶えるよりはな。お前が俺たちの仲間にならないのなら、お前は何も知ることができない。今この状況で、戦わないのは、死ぬのと同じだ。虫どもが現れた今、このクレイヤで死ぬことは簡単なことだ」
「な...」
「ここで戦え」
「隊長!こんな身柄も分からないやつを...!いいんですか?!」
「ここにいる人間には、それしか残されていない。代わりに、教えてやれることは教えてやろう。どうだ?お前はこんなところで、何も分からず死んでいきたいのか?」
「違う...俺は生きて...生きて...この世界を...」
「ならば共に戦え。いいか。今日からお前はアンラッチャーだ。それがお前が世界を知る一番の近道だろう」
「一番の...近道」
「無知に身を滅ぼされるよりずっとな」
「...わかった」
「え、ええー!!」
「お前、名前は」
「俺は...」
『ロ...』
「いっ...!!」
「何だ?!どうした!」
「何でもない...俺は...俺は、シロだ。
シログレイズだ」
「お前もある程度は知っているだろうが、クロチシムに噛まれると、身体中にクロチシムの保有するウイルスがまわる。体内のウイルスの潜伏期間は3日間。この間に気がつかなければ、あとは骨髄細胞内の水分、活性酸素がなくなり、脆くなって終いにはバラバラ崩れ落ちる。建物に潜伏したときもおなじようなものだ。骨組の部分の金属を全て脆くさせるのだ」
「それで、自重に耐えきれずあちこちで建物が倒壊しているのか...」
「だから武装は必須だ。ちょっとでも油断をみせたら奴らは襲ってくるぞ。これを渡しておく」
「これはアンタ達の...見かけより軽いんだな...」
「クレイヤで長年研究されてきたものだ。着方はショーンに教えてもらえ。これで大抵のウイルスは浸入してこないようになっているはずだ。もちろん、クロチシムがもっているものもな」
「すごいな」
「クロチシムは蜘蛛のような足をもって集団で動いている。動きが早いため、できるだけ大きな集合体を狙っていく。少数、単体を狙ったり接近戦にするのは部が悪い。イリーのように体をあれほど早く動かせるのなら話は別だがな」
「グレッド隊長、私はまだまだで...」
「アンタ、イリーって名前なのか。動きが早いのは、アンラッチャーだから、というわけではなさそうだな...」
「私はスピード重視なだけだ。グレッド隊長に比べたら...」
「いいや。お前の動きは大したものだ。皆がこいつのように動けるわけではない。だから、普通のやつは、この光線銃を使うんだ。この熱光線を当てれば0.8コンマ秒対象の動きが停止する」
「ちょちょ、ちょっと待て。0.8コンマ?!」
「それだけあれば十分だ。動きを止めたら、このトリガーガードを二段階外し、内蔵されている弾丸をうつ」
「弾丸...どこに向かってうつんだ?」
「光線をあてた中でも一番クロチシムの多く集中している中心部だ。
...そうだな。この崩れた瓦礫に狙いを定めてやってみろ。熱光線をあて、トリガーを二段階はずす。そして、弾丸を放てば...」
「...!!!!!広範囲での爆発...!!銃の威力とは思えない!!」
「その弾丸は、プラズマ弾だ。熱光線に反応して最大限の威力がでるようになっている」
「そんな...元民間人が、これほどのものを持っているのか...」
「クレイヤを舐めないでよね!」
「それから、これが安全区域の記された地図だ」
「安全区域?...イリーと初めて会ったときも、安全区域と言っていたな。クロチシムが現れる場所が決まっているとでもいうのか?」
「それは私たちも、世界の研究者もまだ調査中なの。はっきりとここだから出ないと分かっているわけではないわ。
ただ、広い観点でいうと、静かなところ、寂れて何もないところ...そういったところは、世界中どこを見てもクロチシムの出現例はない。
でるのは、クレイヤのような発展都市や、文化や歴史がとても根深い都市、経済都市など...その中でもクロチシムが現れるのは...」
「ある、特定の場所を包囲するように出現するというデータがでている」
「虫がある特定の場所を、包囲している...?」
「それは...一言で言うとすれば、混沌の中心部」
「混沌の中心部...」
「そう。私たちアンラッチャーや国の調査では、クロチシムがより多く現れるのは、複雑怪奇な事件や事故、人物や建物、歴史の産物...その中心部の周囲なのよ」