新年の誓い | 大村あつしオフィシャルブログ「ボクは不死鳥」Powered by Ameba

新年の誓い

21世紀も10年が過ぎ、次の10年が始まりましたね。

この10年は、本当に激動の日々でした。

失意のどん底でもがき苦しんだ日々もあれば、自分の未熟さ、弱さで勘違いをして、東京で散財生活をした日々もありました。

六本木ヒルズクラブを特別開放してもらって、地上51階から初日の出を見たりしましたが、あの太陽はボクの心には刻まれてはいません。

むしろ、自己反省の材料として時々思い出すくらいです。

さて、そんな10年。

この長期に渡る日々を詳細にブログに書くにはとにかく色々な事があり過ぎましたので、それこそ自伝を書かなければなりません。

だけど、誰の言葉か忘れましたが、

「人間、誰でも本は書ける。それは自伝だ」

という名言がありますが、ボクはそれを自分流にアレンジした迷言を生み出しました。

「人間、誰でも本は書ける。それは自伝だ。しかし、人間、誰も読みたくない本がある。それは他人の自伝だ」

すなわち、この10年で学んだことは、もちろん「誰も読みたくない自伝」として書き下ろすはずもなく、今後の執筆に生かせればと思っています。

そうした中、昨年、大きな気付きを得ました。

昨年は、ベストセラーとなった『エブリ リトル シング』の文庫の出足が鈍く、6~11月頃が本当に苦しかったのですが、それこそ自問自答の毎日でした。

3年前の単行本は20万部も売れて、2回も舞台化されたのに、それが税込み500円というタバコ一箱並みの値段になったのに、「なぜ売れないのか?」

そうしたボクの苦悩は、9月に頂点に達しました。

ある人に言われました。

「大村さんって、『三流一発屋』ですね」

すなわち、『エブリ リトル シング』が20万部ではなく200万部売れていれば、これは立派な一発屋でしょう。

しかし、20万部では本の存在すらほとんど知られていません。

要するに、中途半端なベストセラーを出して、その後もコンスタントに20万部売れているならともかく、売れたのはそれ一冊。

だから「三流一発屋」

もちろん、反論したい事は山ほどありました。

作家の世界では、その「三流一発屋」にすらなれない人が95%を占める事や、確かに20万部なんて売り上げは『エブリ リトル シング』だけですが、その後の本も何冊かは増刷になり、『無限ループ』の場合は現在6刷、3万部まで版を伸ばしている事などなど。

だけど、どう言い訳しても、その人の言い分には一理あります。

その頃から、ボクは本が売れない理由を探し始めました。

しかも、その原因を外にばかり求めていました。

活字離れ、不況、新刊直後のスタートダッシュの失敗などなど。

ただ、「ROOKIES」というドラマをDVDで借りて観た時に、ボクの脳天に稲妻が落ちました。

あれは甲子園を目指すドラマでしたが(映画はまだ観ていません)、ドラマを観ながら夢を持つ大切さに触れるとともに、「この野球部は甲子園で優勝はできないよな」ということに気付いたのです。

それは当たり前です。

だって、最終目標が甲子園出場なんですから、甲子園で優勝を目指すようなチームに勝てるはずがありません。

でも、それでも彼らはアマチュアなのだから、甲子園を目指すことはとても意義があることです。

では、ボクの場合はどうか。

2004年に、「3年後には作家になる」と上京し、そして3年後に作家になりました。

しかも、そのデビュー作『エブリ リトル シング』が、前述のとおり20万部売れました。

「なんて簡単な世界だろう」と思ったのも束の間、それ以降は苦しいだけの3年間を過ごすこととなります。

理由は簡単です。

作家になる。

これは、「甲子園に出たい」というのと同じレベルの願望です。

換言すれば、アマチュアレベルの願望です。

しかし、このレベルでは、甲子園で活躍することはできません。

たとえば、作家で言えば、別に優勝する必要はありませんが、「甲子園に出て、活躍をしてベスト8に入る」くらいの志がないと、甲子園に出た後にとてつもなく大きな苦悩に押し潰されることになります。

そうです。

ボクは昨年の暮れも押し迫った頃、2004年に立てた自分の誓いが、そもそも根本から間違えている事に気付いたのです。

「作家になりたい」ではダメなんです。

「作家になって、そうしたら作家でい続けたい」

このレベルの願望がない限り、作家で食べていくことはできないことを「ROOKIES」が教えてくれました。

もしプロ野球選手を目指す人なら、「甲子園に出たい」とは言わないでしょう。

甲子園に出て、「そこで活躍したい」

そういう願望を持つに違いありません。

本当に、自分の志の低さに嘆息するしかありませんでした。

そして、この「志の低さ」が、その後ベストセラーを出せない原因である事に気付いたのです。

デビュー作が売れたのは、ビギナーズラックというよりも、「作家になりたい」という情熱の残り火が本に乗り移っていたからなのでしょう。

となれば、自分はどうすべきか。

答えは一つしかありません。

もう一度、2004年の初心に帰ることです。

しかし、今度の願望は違います。

「作家になりたい」ではなく「作家でい続けたい」

言い換えるならば、「甲子園に出たい」ではなく「甲子園に出て活躍したい」

これが目標です。

では、いつまで頑張れるのか。

よく、「一つの事を10年頑張れば誰でも一流になれる」と言いますが、「10年頑張る」ということ自体がいわば「素質」です。

ボクにはとてもできそうにありません。

だから、これから3年間は「作家でい続けたい」という夢を持ってがむしゃらに頑張ります。

3年は、ボクが頑張れる限界です。

ボクの「素質」の限界です。

そして、3年後に作家でいられなくてもなんの悔いもありません。

いえ、悔いを残さないようにこれからの3年間を頑張るのみです。

作家というのは、読者の数だけ、読者の夢を応援してあげることのできる、とてもやりがいのある仕事です。

ボクが日本や、ましてや世界を変えることはできませんが、ボクの読者ならそれができるかもしれません。

そして、そんな夢を陰ながらサポートできる作家という仕事に魅力を感じて止みません。

今日は元旦ですが、早速今日から小説を書きます。

苦悩の日々とは、昨日でおさらばです。

そして、今日から、新たなチャレンジの3年間の幕が切って落とされました。

今後もよろしくお願いいたします。

あ、申し遅れましたが・・・

みなさま

あけましておめでとうございます!

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