島田紳助さんとわたせせいぞうさん | 大村あつしオフィシャルブログ「ボクは不死鳥」Powered by Ameba

島田紳助さんとわたせせいぞうさん

昨日の「行列のできる法律相談所」で、再び、スーダンで活動する医師、川原尚行さん(NPO法人ロシナンテス)が紹介されましたね。

ボクは、2月に川原尚行さんのことを行列で知った時、みなさん同様に大きな衝撃を受けました。

外務省を辞めて、給料がほとんどない状態でスーダンで医療活動をする。

凄いな、と思いました。

外務省なんて、もうエリート中のエリートです。

中央省庁の中でも、財務省と並んで「別格」と言われる省です。

そこを辞めるだけでも凄い事なのに、さらに、家族を残して貧しいスーダンの人々のために現地で医師として働く。

もちろん、紳助さんの言うとおり、一番偉いのは、それを許した奥さんでありお子さんでしょうが、ボクの目には、川原尚行さんはどんなスーパースターよりも眩しく映りました。


そして、その晩、ボクは決意しました。


「もう、言い訳を言うのはよそう。
そして、現実を受け入れよう。
どうせチャレンジするなら、これからは『言い訳』を探すのではなく、『方法』を探そう」


川原尚行さんは、それくらいボクに大きな影響を与えてくれました。


さて、昨日の行列は、番組としてはとても感動的なものに仕上がっていましたが、最後に思わず爆笑してしまいました。

番組の最後に、「ハートカクテル」でお馴染みのわたせせいぞうさんが登場して、川原尚行さんの絵を披露していました。

とても素晴らしい絵でしたが、それを見て紳助さんが一言。


「1年も前から一緒に本を作ろうとと言ってるのに、わたせさんが全然、絵を描いてくれないから、まだ3分の1くらいしか完成していない。
この絵を描いている暇があったら、ボクの本の絵を描いてくれ(笑)」


まぁ、これだけだと、なにが面白いのかわからないと思いますが、下の絵を見てください。


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見た瞬間にわたせせいぞうさんの絵だとわかりますが、これはボクの本、『サラリーマンだから貧乏ですが、なにか?』(以下、『サラ貧』)の表紙です。


この絵を描いていただいたのは、昨年の11月です。

つまり、紳助さんが絵を待っている間に、わたせさんはこの素晴らしいイラストを描いてくれていたのかと思ったら、紳助さんには申し訳ないのですが、思わず吹き出してしまいました(笑)

しかも、「ハートカクテル」のど真ん中世代で、わたせせいぞうさんの大ファンだったボクが、出版社にお願いして、かなり無理をして描いていただいたイラストです。


わたせせいぞうさんは、プロ中のプロですから、本の内容をしっかり読んだ上で表紙イラストを描いてくださいました。

結果、完璧にボクのイメージどおりのイラストを描いてくださいました。


もっとも、わたせせいぞうさんは大御所ですので、当然、こだわりを持っていらっしゃいます。

そして、今回のこだわりは、色見と噴水でした。

わたせせいぞうさんは、パソコンではなく普通のペンで絵を描きます。

すなわち、アナログです。

ですから、それを一度デジタル分解しなければなりません。

ご存じない方に説明をしますと、カラーと言うのはたった4色のインクで再現されています。

イエロー、マゼンダ、シアン、クロ(黒)の4色で、この配合比率でカラー色を作るわけです。

これを「YMCK」というのですが、ちなみにクロはなくても表現できます。

ただ、黒を使う機会が圧倒的に多いために、それをわざわざ他の色で合成するのは極めて効率が悪いので、最初からクロが用意されています。


さて、ところがです。

アナログの物をデジタル分解して、それを印刷した時、いきなり最初から、完全にアナログの色を再現できるとは限りません。

アナログ → デジタル → アナログ

の作業をしているわけですから、どうしても色合いが変わってきてしまいます。

そこで、「色見」という作業をするわけですが、通常は「まぁ、こんなもんだろう」というレベルに仕上がっても、そこは天下のわたせせいぞうさん。

まったく妥協はありません。

結果、なかなか色見でOKが出ませんでしたが、編集者が根気強く、わたせさんと印刷所の往復を繰り返し、最終的には元々のイラストとまったく同じ色が再現できた、というわけです。


もうひとつ、わたせさんからは、「噴水に題字がかからないように」との注文があったのですが、装丁家も頑張ってくれたのですが、やはりどうしても噴水にタイトルの字がかぶってしまいます。

ここは、ボクが頭を下げて、わたせさんに納得していただきました。


いずれにせよ、こうして苦労に苦労を重ねて完成した表紙ですから、少なくともボクは物凄い思い入れがあります。

すると、編集者から驚きの電話がありました。


「わたせさんが、大村さんのサインを欲しがっています。『サラ貧』を送るので、サインをお願いできますか?」


もちろん、二つ返事で承諾し、直筆の手紙と一緒に、わたせさんにサイン入りの『サラ貧』をお送りしました。

そのとき、ダメもとで、「わたせさんのサインが欲しい」と一筆書き添えたのですが、そうしたら後日、今度はわたせさんが『サラ貧』にサインを入れて送ってくださいました。


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この本は、もちろん、ボクの宝物になっています。


さて、ボクがわたせせいぞうさんに表紙のイラストをお願いしたのは、なにもファンだから、だけではありません。


こちらのブログ、「また一人、会社を辞めました」に書いたとおり、『サラ貧』は読者が会社を辞めてしまうくらいの影響力を持った作品です。


このことは、アマゾンのレビューなどにも書かれています。


実際、目次の一部を見ても


エピソード7  サラリーマンは現代の奴隷か?
エピソード8  サラリーマンは資本家から見たら商品なのか?
エピソード9  なぜ、資本家は金持ちなのか?
エピソード10  本当にサラリーマンは不幸なのか?Ⅰ
エピソード11  本当にサラリーマンは不幸なのか?Ⅱ


と、扇動的な内容であることがわかります。


しかし、最後まで読むと、実はとても温かいストーリーである事に気付きます。

そうです。

内容が過激だからこそ、「その実、温かいストーリーなんですよ」ということを表現するためには、見ただけで心が温まるようなイラストが必要だったのです。

そして、そうしたイラストを描かせたら日本一。

それがわたせせいぞうさんなのです。

これが、ボクがわたせさんにイラストをお願いした経緯です。


ただ、残念なことに、この本の売れ行きは芳しくありません。

ちなみに、日本の書店の総本山、紀伊國屋本店(新宿東口)でも、新刊コーナーに並ばず、3Fの難しい経済学のコーナーにこんな具合に置かれていました。


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書いた本人が探すのに苦労したのですから、それは売れるはずがありません。

ただ、ボクは言い訳はしません。

上で書いたとおり、言い訳はやめました。

こういう状況になったとき、すぐに出版社を責める人がいます。

もちろん、気持ちはわかります。

ボクだって、こんな棚差しでは、「これじゃあ、せっかくのわたせさんのイラストが見えないじゃないか」と思います。


でも、一つだけ断言できることがあります。

それは、出版社も書店も、「こんな本売れなければいいのに」と思っている人は誰ひとりとしていないということです。

みんな、本が売れてほしいのです。

ところが、本は毎日250冊の新刊が出ますから、競争に勝てなければ、上の写真のようになってしまうわけです。


出版社も書店も、誰も悪くはありません。


悪いのは、出版社や書店に愛してもらえる本を書けなかったボクです。


すべて、ボクの責任です。


ただ、一方で、あきらめてしまったわけではありません。

最初の半年間はまったく売れていなかった『無限ループ』の場合、今では下のように売られています。


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ベストセラーコーナーに、なんと4面置きです。

写真ではわかりませんが、この上に、『告白』が16面置きされていましたが、その次に目立っていました。


ボクは、極端な事を言えば、日本中の大学生以上の人に読んでもらいたい。

それくらいの気持ちで『サラ貧』を書きました。

そして、わずかずつですが、今も売れています。

大切なのは継続です。

売れ続けることです。


きっと、いつの日か、わたせさんの描いたイラストが上の写真のようにずらっと書棚に並ぶ日が来る。

そう信じています。

また、そうでなければ、絵を待たされ続けている紳助さんが浮かばれません(笑)


『サラ貧』

これを機会に、みなさまも興味を持ってくださると幸いです。


『サラリーマンだから貧乏ですが、なにか?』
→ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569776620/fushicho-22/