新型コロナウイルス感染症の病態は、全身の血管に感染する「全身性血管炎症」である。呼吸器系や血管系(循環器系)が目立つが、これらとは異なる「神経系の症状」が見られるケースが増加している。様々な研究結果から、新型コロナウイルスは、鼻腔や肺の神経をさかのぼって中枢神経に到達するほか、脳関門を突破して血管から脳へ侵入する能力があることが示唆された。また重症化した3人に1人の患者が見当識障害や排尿困難などの後遺症があったという研究結果がある。

SARSMERSは脳へ感染すると言われており、新型コロナウイルスにも神経系への感染力が疑われた。実際に感染者の約3割で神経症の症状がみられ、そのうち約7割は中枢神経にかかわる深刻な症状を発症すると報告する論文もある。特に重症の場合、脳血管症・脳卒中・意識障害・けいれんなどが発生した。また、急性の脳血管障害を発症した後に新型コロナウイルス感染が判明した患者には、典型的な症状がみられず、これは呼吸器系よりも早く脳を障害したことを示している。

ウイルスが脳へダメージを与える仕組みとして考えられているもの。

     ウイルスが血管に感染し血管が損傷して血栓を生成し脳血管を詰まらせる。

加齢や生活習慣病により血管が弱っている人には血栓が生成される確率が高い。

     ウイルスが鼻腔や肺の神経からさかのぼって脳に到達した(SARSMERSによる脳血管障害はこの経路と考えられている)。これにより脳幹など生命中枢部の神経への感染もあり突然死などが起きる可能性がある。

     ウイルスが脳関門を通過して血管から脳に感染した。重症化したインフルエンザウイルスは脳関門を通過して脳内で増殖することが知られている。脳細胞の表面にはACE2が存在しており、新型コロナウイルスがこれに結合して増殖していく可能性がある。

これらを直接研究することは難しく現段階では可能性であるが、研究は継続されている。