入院してから2日後の4月29日

母が入院中に必要なものを届けに行き、父に会った
決して声を出さないよう言われたそうだ

父は食事を食べさせても、薬を飲ませても、全て吐き出してしまうため、点滴で栄養をとっており、薬は何も使っていないと言われたそうだ
完全固定され、閉鎖病棟の4人部屋にいた
何かしゃべってはいるようだが声は小さく呂律も回らず聞き取れなかったそうで、目も虚ろで母には気づかなかったそうだ


約1週間後の5月5日には弟と母とで見舞いに行った
その時も、何を言っているのか聞き取れない状態
帰るよと言うと涙ぐみ、帰らないで欲しいの?と言うと頷いたらしい

5月8日にGWも明け、やっと子供達が学校生活になったので私も会いに行った
やはり朦朧としていて良く聞かなければ何を言ってるのか聞き取れない 
それでも
  お前の後ろにいる先生は何してるの?
  〇〇先生呼んで来て〜
と言ったり、隣のおばあさんが看護婦さんに悪態をついているのを聞いて笑いながら
  おーい頑張ってるなぁ〜
  仲良くやろうよ、仲良い方が良いよ
なんて言ったりもする
何か飲もうかと言うと
  ばか、それに何か入ってるんだろうよ
  だからダメなんだよ
と言ったり、じゃあ私が何か買って来るからそれ飲む?と聞くと頷き、ナースステーションから貰ったポカリを飲ませるとゴクゴク吸い口から吸い込んで飲んだ
  こんなとこいたら良くなんてならないよ
  もうお終い!
と言い、子供達の名前を言うと反応し、迎えに行かなきゃいけないから帰るねと言うと頷いた
父の点滴には栄養補給の大きい袋以外に、生理食塩水の小さな袋にマジックでリントンAと書いたものが下がっていて、4分の1ほど減っていた
母は医師から薬は何も使っていないと言われていると言っていた
でも明らかに朦朧としているしろれつも回らない状態にずっとあり、薬は使っているだろうと思った

それから1週間後にまた訪ねると、前回よりさらに朦朧としており2時間いた間、ほとんど目を開けることはなく、うわ言を言っている感じだった
途中、入院時にいた医師が来て、
  お嬢さん来てくれたから、これ外そうかね
と言いながら腕と足のベルトをベットから外し、リントンAと書いた点滴も外して持って行こうとした
点滴をみる私と目が合い、医師は
  やっぱりね、暴れると大変なのよ〜
  そんなときはねお薬使うのよ〜
と言った
リントンAと書かれた脇には4日前の日にちが書かれていて、点滴は8割ほど無くなっていた
私は、まだレビーと診断されて間もないので薬の量を調整していた最中なんです
だからこれも効きすぎたりする事あるんじゃないかと心配で、と言った
続けて、食べられたし歩けたし話せた人が、入院からずっと食べられないし話せないので…と言うと
  こないだね〜食べさせてみたのよぉ、そしたら熱が出ちゃってね〜
  あ〜、でも、このお薬の後で食べさせたから誤嚥しちゃったのかなぁ?
と言いながら、看護師たちに向かって
  ねー!こないだ食べさせたのって薬やった後だったんじゃない?今度、薬やってない時に食べさせてみてよ
と叫んだ
そして
  〇〇さん!お嬢さん来てるのよ!分かる?
目を閉じて頷く父に
  ほら!ちゃんと見なさいよ!見てないじゃない!目を開けて!開けるの!ほら!
と言いながら、指で瞼をこじ開けた
  ほら見えた?こっちの目も!ほら!みえる?
嫌がりもがきながら、父は必死で頷いた
あまりの事に言葉を失ったし、動くこともできなかったが、家に帰ってからつぎにあんな事をしたら、キッパリとやめてくれと言おうと思った
もう帰らなくてはと思ったころ、看護婦さんが歯磨きしても良い?と寄ってきた
プラスティックのような棒の先に黄色いスポンジがついた物を薬剤で湿らせて口の中を磨き始めると、父はやはり嫌がり始めた
歯の内側の方を磨こうとした時、歯を食い縛ってしまい棒からスポンジが引っこ抜けてしまい、口の中にスポンジが残ってしまった
出してと言っても聞かず、看護婦さんがピンセットで指をかまれながら取り出した
後で歯医者に聞くと、そのブラシは入れ歯の人など歯茎を磨くような場合に使うもので、うちの父のように歯が全部残ってるような人は普通の歯ブラシの方が良いと聞いた
その際には両手に歯ブラシを持ち、片方の歯ブラシを噛ませて磨くと歯の間も磨けるし指を噛まれる心配もないと聞いた
次回、看護婦さんに教えてあげるつもりだ

この歯磨き事件ですっかり覚醒した父は、帰るまでずっと幻覚の世界にいた
仕事をしている様子で
  おーい!〇〇さーん!こっちに運んでもらってー!そのおじさんじゃないと分からないんだよー!その人に聞いてよ!
といって働いている様子だったかと思うと、次の瞬間には長唄を歌い始めた
私の知る限り、父はそうとうな音痴でカラオケの練習に良く付き合わされたが、歌の出だしに合図をしてくれと頼まれていたほどだった
しかし、その初めて聞いた長唄はなかなか上手で
  あれ?パパ上手いじゃん!私、パパは音痴だと思ってたよ
と言うと
  ばかッ
と言ってわらい、今度はお囃子のようなメロディを口ずさみ始めた
  わたしが、あ、お祭りのお囃子だね!と鼻歌交じりにお囃子を歌ったつもりだったが、よく考えたら野球拳のメロディで
  ごめん、わたしが歌ったのはお囃子じゃなくて野球拳だったね!と言うと吹き出して笑い、また口ずさみはじめ、また次の瞬間には仕事をしていた
  ちょっと?〇〇さん?どこいったのー?
と言うので、〇〇さんあっちで別の仕事してたよ
忙しいみたいだよと伝えると
  そーお?なんの仕事してんだろ?〇〇さんじゃないと分かんないんだよなー
などと言っていた

会話になっているようで、私が帰るね、と言っても無反応だったりと、1週間前より会話のやり取りにはならなくなっていた