(長谷川町子 漫画『サザエさん』の原作者。 『サザエさん』のもともとの舞台である戦前の家族生活のころ、1935年の写真。当時、長谷川15歳、旧制山脇高等女学校4年生)
歳時記 5月12日
立夏/蚯蚓出(りっか/みみずいずる) 夏の始まり、冬眠していたミミズが地上に現れ始める。いよいよ土がやわらかく豊かになり、作物を育てる条件が整った。
歳時記余話
日本の「家族崩壊」の真実 ~失われた共同体の現実を見直す
偽りの平穏を捨て、冷徹な現実を直視しよう。今、日本の『家族』は、かつてない断崖絶壁で音を立てて崩壊した。その結果、日本の「故郷」と「伝統」も崩壊した。多くの日本人は、虚構の作り話「日本の家族は軍国主義によって疲弊していたが、戦後に民主化されて再生した」というインチキストーリーを今日まで信じてきた。この虚構の作り話こそが現実を覆い隠し、日本人を「家族の完全崩壊」へと追い込んできた最大のマジックである。
1)現代日本の家族崩壊の現実 ~徹底的な「孤独と荒廃」
1970年代~80年代、団塊の世代が結婚適齢期を迎えた。団塊の世代は、GHQが義務教育とメディアの洗脳を通して仕掛けた『日本弱体化プログラム(WGIPなど)』を、生まれながらに骨の髄まで植え付けられた最初の世代である。それで彼らは「家族」と同居することに反発し、新婚夫婦だけで核家族をつくっていく。ここから日本の「伝統的家族」は一挙に崩壊していった。それをメディアは「自由で平等な家族が再生した」と礼賛し続けた。
しかし半世紀を経て、現在、団塊の世代の多くは凄まじい孤独と絶望に陥っている。別居、離婚、孤立、無縁社会という地獄、自身の介護問題、孤独死などに直面している。そこにあるのは自由でも平等でもなく、誰にも頼れない「絶望的な孤立」である。さらに団塊ジュニアは、親世代が壊した「家族」の残骸の中で、核家族という砂上の楼閣で育った。今や彼らの多くは「家族のつながり」「地域の支え」「伝統の力」「親族のネットワーク」を失い、未婚、非正規雇用、親の介護、自身の老後という四重苦に直面している。こうした状況はかつての日本ではありえなかった。家族と地域が一体となって防げた悲劇が、現代では日常の風景となってしまった。再生などどこにもない。日本の家族は再生どころか、逆に総崩れになったのである。
2)日本の家と家族、~本来の姿
日本の三世代同居を基礎とした「家族」は、漫画の「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」の家族のように、おじいちゃん、おばあちゃん、娘夫婦(または息子夫婦)、孫たちがみな一つの家に同居して、みんなで力を合わせて家業(農業、大工、商い、サラリーマンなど)を営んできた。みんなで力を合わせてその日その日の問題に取り組み、奮闘し、解決するとみんなで一緒に喜び、笑ったのである。ご近所の家同士のお付き合いも、おばあちゃん世代、お母さん世代、子供たち世代で重層化されて固い絆の共同体を構築した。家と家、家族と家族の固い絆が地域・親族・農村・職場・国家を形成する核であった。この家族のあり方こそが、世界最高峰と言われた日本の江戸文化を築き上げ、後には世界最強と言われた明治日本の陸海軍を育て上げ、さらに後には松下幸之助や本田宗一郎の会社の日本型経営となって世界を牽引したのである。この日本の「家族」こそ、日本民族が数万年の風雪に耐え抜き、大東亜の荒波をも乗り越え、「Japan as Number One」と讃えられた不屈のエネルギーの根源であった。またこの家族のあり方こそが縄文時代以前から20世紀後半まで、じつに数万年にわたって日本人の遺伝子に刻み込まれてきた生存戦略でもある。日本民族の「家族」、「故郷」、「民族」の自然な姿、自然な形である。
3)GHQ改革は「家族の再生」ではなく、「家族の基盤の解体」だった
戦後、GHQによる「家」制度の廃止は、家族の連続性を根本から断ち切った。家族を「再生」させたのではなく、解体したのである。渡部昇一が指摘する「戦後利得者」とは、GHQによる「日本国民弱体化計画(WGIPなど)」に協力して不当な地位や薄汚れた利益を得た知識人やメディアのことだ。 彼らはGHQによる日本の伝統的「家」制度の解体を「封建制度からの解放」と謳い、伝統的家族の崩壊・核家族化を「個人の自由と近代化」と言って礼賛し続けた。しかし現実には、日本民族を、家族の崩壊、故郷の消滅、ご先祖との断絶、孤独死の増加、地域共同体の断絶といった深刻な問題に追い込んだ。彼らの言う「再生」という言葉は、こうした現実を覆い隠すためのレトリックにすぎない。
その戦後メディアの「昭和のホームドラマ」が描いた「明るい核家族」という幻想は、実際には家族を崩壊させ、故郷を失わせ、先祖代々の繋がりを断ち切らせる甘い毒薬であった。彼らは、先祖への敬意を『重荷』と呼び、地域の絆を『束縛』と呼び変えることで日本人の魂を路頭に迷わせた。こうして、個人個人が家族・地域社会(共同体)と一心同体であった日本の豊かな伝統的精神構造は完膚なきまでに崩壊したのである。
私たちは、便利な電気製品や、誰にも干渉されないマンションの一室を手に入れるために、自分自身の『骨』を質に入れたのではないか。その骨とは、先祖から受け継ぎ、子孫へと渡すべき『家と家族の永続性』という名の尊厳である。
人物の概要
長谷川町子(はせがわ まちこ)
1920年1月30日~1992年5月27日 漫画「サザエさん」の作者。自ら生まれ育った戦前の日本の家族を生き生きと見事に表現した。日本初の女性プロ漫画家。福岡市生まれ、福岡県立福岡高等女学校(福岡中央高校)入学。1934年、一家で上京し、山脇高等女学校(山脇学園高等学校)に編入。田河水泡に入門して漫画を学ぶ。文藝春秋漫画賞、紫綬褒章、東京都文化賞、日本漫画家協会賞大賞、国民栄誉賞(漫画家として唯一の受賞者)。
渡部昇一(わたなべ しょういち)
1930年10月15日 ~ 2017年4月17日 日本の英語学者、評論家。山形県生まれ。上智大学名誉教授。専門の英語学のみならず、歴史、哲学、政治など幅広い分野で執筆活動を展開。『国民の歴史』などの著書を通じ、自虐史観を廃して「日本人のアイデンティティ」を回復することに尽力し続けた。伝統を「生きた力」と捉え、外来の知を吸収しつつも核を失わない日本精神の強靭さを論理的に構築した知の巨人。
出典・参考資料一覧
戦後利得者・WGIP 『「戦後」という名の虚構』(渡部昇一 著)
「戦後利得者」の定義、およびGHQによるウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(WGIP)が日本人の精神構造にいかに影響を与えたかの理論的支柱。
家制度の解体 『国民の歴史』(西尾幹二 著)
GHQによる家制度の廃止が、単なる民主化ではなく、日本という国家の最小単位である「家族」を解体するための工作であったことを見抜いた著書。
日本型経営の源流 『実践経営哲学』(松下幸之助 著)
家族的な絆を経営に活かした日本型経営の神髄。日本人が本来持っていた「一体感」が経済発展の原動力であったことの証左。
無縁社会と孤独 『無縁社会 ―“無縁死”三万二千人の衝撃―』(NHK取材班)
核家族化の果てに日本が直面した「無縁社会」の悲惨な実態。伝統的共同体が崩壊した現代の「荒野」の記録。
近代批評の精神 『無常といふ事』『考へるヒント』(小林秀雄 著)
「骨」を噛み砕くような批評精神、および死者(先祖)との対話を通じて歴史を捉える視点の背景。
国学と日本人の心 『国学の敗戦』(田中康二 著)
日本人の伝統的精神がいかに敗戦と戦後の思想によって変容・衰退させられたかという思想史的背景。
次回は、この断末魔の叫びを上げる「家族」を再び蘇生させ、荒野となった日本列島に再び灯をともす『家族復活の処方』に言及したい。
