歳時記 6月1日

小満/麦秋至(しょうまん/むぎのときいたる) 去年の秋に蒔いた麦が黄金色に実り、収穫の時を迎えた。

 

 

 

歳時記余話

恋愛至上主義という精神の牢獄(中江藤樹 第3回、内村鑑三、小林秀雄、渡部昇一の視点)

 

「恋愛=人生の目的」という洗脳

現代の日本は、テレビをつけても、SNSを見ても、流行りの歌を聴いても、溢れかえっているのはただ一つ、「恋愛至上主義」である。「好きな人と出会い、恋人になり、SEXをして結ばれ、結婚して夫婦になることが人生の最高峰であり、目的である」とされている。そして私たち現代日本人は、この価値観を疑うことすら忘れている。

しかし、これは“自然に生まれた価値観”ではない。 戦後の混乱の中で、マルクス主義と同様に、私たちの心に埋め込まれた“思想のウイルス”である。 恋愛を人生の中心に据えるよう仕向けられた結果、 日本人は人間の本来の目的である「魂の縦軸」を見失い、 恋愛という横の刺激だけを追い求める存在へと変質してしまった。恋愛そのものが悪だと言っているのではない。恋愛を「至上」とするアイディアが間違っているのである。

 

 

3S政策が隠した「横の快楽」「縦の生命」

内村鑑三が生きていれば、この現状に激怒してこう叫ぶだろう。「それは魂を骨抜きにする悪魔のプロパガンダだ!」と。 戦後メディアや左派知識人のプロパガンダによって浸透してきたのが3S(セックスの恋愛・スポーツ・スクリーン)である。3S政策はそれら「横の刺激」によって人々の意識を奪い去り、「縦の生命(宇宙と人間を結ぶ線)」を見えなくする仕組みだ。 17世紀から現在まで続く植民地主義(グローバリズム)は、各地の民族を巧妙に骨抜きにし、弱体化して、永遠に搾取し続けることを目的とする。すでに17世紀以降の世界中の植民地で、またそれに続く現在のグローバル企業社会主義(日本も含まれる)で、3S政策は世界の民族の弱体化に圧倒的な成果を上げてきた。グローバル企業社会主義とは現代の植民地主義(グローバリズム)である。国家や共同体の力を失わせ、国民をグローバル企業の家畜にする。3S政策はすでに400年にわたって成果を実証済みなのだ。

その中でも「恋愛」は、最も強力な“横の麻薬”になっている。 人間の承認欲求と快楽回路を同時に刺激し、 いつのまにか魂の背骨を溶かしている。

 

 

現代人が求める横の快楽が、縦の生命を遮断する

なぜ、恋愛や性愛がこれほどまでに神格化されるのか。 その理由は、支配する側の策略だけではない。 現代人の心に、恋愛至上主義に吸い寄せられる構造があるからだ。

第一に、戦後教育とメディアによって現代人の魂は空洞化している。 縦の軸(宇宙・祖先・親子・師弟・君臣)を失った人間は、 その空洞を埋めるために刺激と快楽を求める。 恋愛はその空洞に最も手っ取り早く入り込む。

第二に、現代人は孤独を恐れすぎている。 恋愛は孤独を一時的に麻痺させる。 「誰かに選ばれたい」「必要とされたい」という渇望が、現代人を恋愛という横の関係に夢中にさせる。

第三に、恋愛は“選べる関係”だからだ。 選べるということは、いつでも捨てることができる。 現代人はそこに自由を感じる。 しかしその自由とやらも、いつでもリセットできる関係を『自由』と呼んでいるだけだ。その自由な裏切りや別れに怯える現代人は自分でその自由を求め、けっきょく自分をその怯えの檻に閉じ込めている。小林秀雄が喝破したように、人は選べる偶然(恋愛)に酔い、選べない必然(縦軸)を恐れる。

こうして現代日本人は恋愛という横の快楽に吸い寄せられ、 恋愛を至上とするアイディアに絡めとられたわけだ。

 

 

宇宙の星空を忘れた現代人

1945年以降、現代日本人は組織的な3Sのプロパガンダによって「派手な恋愛のネオンサイン」に夢中になり、 真実の世界で広がっている果てしない星空―― 宇宙の絶対秩序――を完全に見失っていった。 そして夜空を見上げる代わりにスマホの画面を見つめるようになったとき、 日本人は“宇宙の子”から“情報の奴隷”へと変わった。

恋愛小説、恋愛ドラマ、恋愛ソング、恋愛リアリティショー。 それらはすべて、「恋愛こそ人生の中心」という幻想を強化するための眩しいネオンサイン(横の光)である。 3S政策側も、現代日本人も、満たされることのない横の刺激という、鳴らないピアノを叩き続けていたいのだ。しかし、横の光がどれほど眩しくても、実際にピアノを鳴らす宇宙から降り注ぐ光(縦の光)を止めることはできない。

 

 

次回予告

次回は、 自然界が示す“縦の生命”の絶対秩序を明らかにする。

・動物のつがいは恋愛しない

・親鳥の命がけの抱卵

・宇宙が生命に埋め込んだ「縦の意志」

・恋愛を中心に置くと人生が崩壊する理由

そして、 恋愛至上主義がなぜ日本人の魂を弱体化させたのか その構造を徹底的に暴く。

 

(次回へ続く)

 

 

 

 

出典・参考一覧

  • 中江藤樹 関連
    • 『翁問答』(中江藤樹 著)
    • 『藤樹先生全集』
  • 内村鑑三 関連
    • 『代表的日本人』(内村鑑三 著)
    • 『余の尊敬する人物』(内村鑑三 著)
  • 小林秀雄 関連
    • 『考えるヒント』(小林秀雄 著)
    • 「学生との対話」等の講演録(宿命や必然に関する思索)
  • 渡部昇一 関連
    • 『知的生活の方法』(渡部昇一 著)
    • 『日本人の精神秩序』(渡部昇一 著)
  • 歴史・思想的背景
    • 『共同幻想論』(吉本隆明 著) ※戦後日本の空虚の構造理解として
    • GHQ占領政策(3S政策)および現代グローバリズムに関する各種歴史論考

 

 

 

本編を彩る思想家たちの肖像

 

中江藤樹(1608〜1648) 近江聖人と称えられた日本陽明学の開祖。形骸化した倫理ではなく、人間の内面にある宇宙の絶対真理(良知)に従って生きることを説いた。宇宙と繋がる縦軸をすべての徳の根本(縦軸)とし、時・処・位(状況)に応じた生きた実践を重んじた、日本の精神的背骨を築いた先駆者。

 

 

内村鑑三(1861〜1930) 明治・大正期の思想家、キリスト教無教会主義の創始者。武士道精神を根底に持ちながら、西欧の物質主義や魂を抜くプロパガンダを激しく批判した。「二つのJ(JesusとJapan)」に命を捧げ、時代の流行(横の刺激)に流されず、神と自然の絶対秩序(縦の生命)に生きた烈々たる預言者。

 

 

小林秀雄(1902〜1983) 近代日本を代表する文芸評論家。人間が「選べる偶然(恋愛や好悪)」に溺れて自己満足に陥ることを厳しく戒め、歴史や血統といった「選べない必然(宿命)」をそのまま受け入れることの中にこそ、人間の本物の知性と魂の救いがあることを喝破した。批評の神様と言われる。

 

 

渡部昇一(1930〜2017) 言語学者、高名な保守派の評論家。圧倒的な知的生活の実践者であり、戦後のGHQ占領政策(3S政策など)が日本人の伝統的精神秩序をいかに解体したかを鋭く分析した。グローバリズムの本質を見抜き、日本人が「国体」や「祖先」という縦の軸を取り戻すことの重要性を説き続けた。知の巨人と言われる。