バイクの前カゴにミネラルウォーターのボトルを入れ、山のホットスパへ向かった。
チェンラーイ・ビーチ(パタヤ)へ続く道を通り過ぎ、舗装の悪い一本道を上って行く。人家はなくなり、のどかな風景が広がっているばかりだ。一度脱いだヘルメットを被り直して山肌の迫った急カーブをいくつも慎重に上りつめると、右手に山を映したメーコック川の川面が現れた。
「エレファントキャンプだ、見てごらん。」
ケイに言って路肩にバイクを停め、崖の傍まで行ってみた。
前回来た時と同じようにホットスパを通り過ぎてしまい、行き止まり(国立公園か何かだったかな。)まで来て引き返した。
バイクを停めてホットスパの敷地内に入った。源泉から白い湯気がもうもうと立ち上っている。プールのような温泉に入っている人はいない。いや、見渡すと観光客が誰もいない。
「あっちだよ。」
ケイに言って敷地内の右奥の方へ歩いて行った。
「おかしいな、この辺なんだけど。どこだっけ。」
探している売店がない。
テーブルの並んだ大きな食堂があったので中を覗いた。
「あれれ?」
奥の炊事場にロングヘアーの小柄な女性の後ろ姿が見える。振り返ってこちらを見た。
「おおっ!ああ~!」
女性が驚いた顔で飛び出して来た。ロンの姉だ。私のこと、大好き。
少し大きくなったブアイが裏手の部屋から出て来て、私にワイ(合掌)をして挨拶した。
カーオ・パット・ムーとムー・トート・クラティアムを頼んでから、生卵の入った竹かごを持って温泉卵を作りに行った。ケイが棒の先から紐で吊るした竹かごを温泉の中に沈め、時間を計る。硫黄の臭いが立ち込めている。
できあがった温泉卵を持って店に戻ると、しばらくしてアペーがバイクでやって来た。ワイをする彼女は、とっても綺麗。
ケイと食事をしてビールを飲む。非常に寛ぐ。幸せだなあ。
機械を使って草刈りをしていたおばちゃんが店に入って来て、皆で食事を始めた。
「一緒に食べない?」
チャーミングに微笑むアペーが聞いたので、何を食べているのか見に行った。
「いいや。お腹いっぱいだから。」
スズメの姿焼きは食えん。