私は今年から、地元の消防団に所属することになった。多少、市区町村から給付金が出るものの、学生の私からして時給換算すると、数百円にも満たない、ほぼボランティアといえる。その消防団には伝統として、操法大会というものがある。操法大会とは、迅速、確実かつ安全に行動するために定められた消防用機械器具の取扱及び操作の基本について、その技術を競う大会であり、ポンプ車への乗車、下車から、ホースを伸ばし、火点を倒すタイムまでを縮めるために各分団日々練習する。私の分団は、

1年生、2年生で構成され、毎年の操法大会は他の分団とは異なり、1年生が出場するという伝統がある。そのため、私たちは6月にある操法大会に向けて、2ヶ月で仕上げなければならない。他の分団は、過去に何回も、年に一度しかない操法大会に出場している人たちばかりの中で、私たちが初めてホースに触れたのは、今年の4月であり、

とても厳しいものである。4月の入団から、昨日の操法大会まで、週に2回〜3回、19時半〜22時半の間で近くの小学校を借りて、練習に取り組む。私は19歳大学生であるが、2倍以上歳が離れている人がほとんどである。最初、こんな人達と、気をつけ、右向け右、などの規律に時間を割き、本当に有事の際に役に立つのかわからない大会のために、自分の時間を使って集まりたいとは到底思えなかった。こんなことなら自分の予定に合わせられるバイトをしていた方が、良いと思うのは当然である。しかし、毎週練習を重ねていくうちに心に変化が起こっているのを自覚していた。2年生の先輩が、仕事終わりで疲れているはずなのに、わざわざ来て、自分のために教えてくれる。私はその指導に感化され、やるからにはやってやる、自分が出来ないわけがない、という気持ちに変化していた。やはり、指導者の熱は、指導される側に直接的に伝わり、プラスに働きかける。そこからというもの、私は操法大会というものの虜になり、YouTubeのおすすめ欄にはお手本の操法の動画が、寝る前のルーティンであった、好きなYouTubeを観ることが、その日の自分の操法練習を反省する時間に変わっていた。そして、当日を迎えた。これまで味わったことのない緊張感だった。親も彼女も友達も観に来てくれた。たった2ヶ月前に出会った1年生には、いつしか仲間意識が芽生え、年齢は遥かに上だが、大会直前には、改善点をお互いに指摘できるようになり、最年少の私自身、チームをまとめて鼓舞するようになっていた。高校時代の恩師から教わった言葉 "立場は人を成長させる" この言葉が完全証明されたような気がした。分団としては去年の先輩方の結果を越し、また個人としては、9分団の50人近くの選手がいる中で3人にしかもらえない、"敢闘賞"という個人賞を手にした。

たったの個人賞だけど、みんなの力なくしては手に入らなかった個人賞だけど、これまでの自分の努力が結果として現れ、これまでこの大会に向けて関わってもらった、全ての人に結果として少しだけ恩返しができたのではないかと思う。この2ヶ月忙しすぎたけど、大人になってからじゃ経験できないような緊張と注目度、達成感を味わえた。最近は本物の消防士もカッコよく見えてきた。たった2か月前までは消防団のことを考えることさえも進まなかったものの、2か月後には消防団に入ってよかった、そんな風に思えるようになっていた。会ったこともない全くの他人同士が、2か月間一つの目標に向けて努力することで、ここまで仲間意識が芽生えることに、

改めてチームスポーツというものの偉大さに気づかされた。