鷹の子権現と兵隊
母が温泉に入っていて聞いて来た話です。
終戦の翌年のこと、戦闘帽をかぶった二人の兵隊が入来駅に下車、「鷹ノ子権現という神社はどこにありますか。」と。
戦いに憔悴し、煤(スス)けた顔に鋭く真剣な目をしていたと云う。
復員してまだ家にも帰らず、入来村入来村と訪ねて来たと云うことでした。
話はこうである。
大陸に歩兵として参加し、或、夜戦の時、二人は本隊をを離れ、迷ってしまったのだと、行けども行けどもトウモロコシ畑、合流しようとあせればあせる程迷いに迷うトウモロコシ畑、地の涯(ハテ)まで続いているような果てしないトウモロコシ、トウモロコシ銃を荷いで立つ二人の兵隊。
すると突然と夜目にも白い衣に長い杖を持った老人が現はれ、杖で方向を指しながら兵隊を案内するように歩き出したと云う、その姿は歩くというより少し浮かんで漂っているように見えたと云う話です。
広大な黍(キビ)畑を行く白い衣と二人の兵隊の銃を荷ぐ姿。
不思議なことに二人の兵隊も又とぶように老人と共に走ったという。
気がつくと二人は本隊の兵隊達のすぐ前に立っていたと云う。