私は毛見の海岸で初めて海水浴をしました。その頃の海岸線には立派な大きい黒松がずうっと生えていて、松ぼっくりと貝殻が白い砂の上に一緒にありました。小学生の高学年になった頃、毛見に住む友達が舟に乗せてくれました。学校では目立たないその友達が私達を自分のうちの舟に乗せ、櫓を漕いで行ったり来たりしてくれたそのたくましい姿に少しおどろきました。「浦島太郎」のお話を小さい頃に読んでもらったとき、浦島太郎が亀を助けたり、竜宮城から帰ってきたりした砂浜は、この毛見の海岸だと思いながら、お話を聴いていました。こういう思いでいるということを、先日、知り合った同年配くらいの方も毛見浜の思い出として語られていたので、おどろきました。

1994年にリゾート博のためにこの毛見浜の前の海を埋め立てて、人工島が造られました。私は、自分の幼いころから大切にしてきたものが壊されているのを見るに堪えなくて、それ以来、毛見の海には、近づかないようにしてきました。リゾート博が終わっても、ポルトヨーロッパがあり、ちょくちょく花火が打ち上げられる大きな音が家にいても聞こえてきました。
2019年、ここにカジノが造られるというのを聞いた時、もう、毛見の海から遠ざかっているわけにはいかない気持ちになりました。「もうこれ以上、やめてくれ!!!」と叫びたくなりました。和歌山から離れて暮らしている二人の兄たちにも、すぐ伝えたら、「絶対に、やめさせてくれ」と励まされました。博打場などを造らせてなるものか!
