米ロックフェラー財団の恐るべき「未来シナリオ」

『1984年』の現代版。コロナ禍で監視・検閲が横行する全体主義国家への移行をまざまざと予言。

米ロックフェラー財団が2010年5月に公表した「未来シナリオ」の報告書が、その10年後に到来したコロナ禍とポストコロナに向けた世界の変化を驚くほど克明に描き出していたと、密かに注目を集めている。世界の大手マスコミはほとんど報じていないが、この報告書は、新型ウイルス発生による世界的なパンデミックとロックダウン、経済の崩壊、そしてそれらの必然的結果としての政府による厳格な監視.統制社会への移行をまざまざと予言していた。

「シナリオは予測ではない」

54ページからなる報告書が描いた「シナリオ」によると、2012年、長年予想されていた大規模パンデミックが発生し、世界人口の約20%が感染し、わずか7か月で800万人が死に至る。人と物の国際的な移動や観光業が停止し、国際的なサプライチェーンは断ち切られ、オフィスビルや商店は何か月も閉鎖される。米国は国外渡航「自粛」などの寛容な措置を取ったが、それは米国外にウイルスが拡散するのを助けただけだった(20年に起きた現実は、米国による国境封鎖はむしろ迅速で、海外からの渡航に「寛容な措置」を取ったのは日本だった)。一方、国境の完全封鎖と市民への強制検疫を実施した中国だけが、迅速な経済再開を実現した。

各国政府はマスク着用や駅や空港での体温チェックを市民に義務付け、対面による接触を禁止。政府による統制管理の強化の必要性が世界で受容された。ウイルスを検出する新しい診断法が開発され、隔離から解放される条件となった。市民は身の安全と引き換えに、主権とプライバシーの一部を政府に進んで譲り渡す、と書かれている。

出張や旅行が制限されるため、安価で使いやすいビデオ会議が広く用いられる。国家安全保障上の懸念に駆り立てられ、中国のファイアウォールを模倣して国家ごとにブロック化したインターネット空間をつくるようになる。国民管理のための生体ID認証技術が日常生活に定着する。感染者が減った後でも政府による統制管理が長く続くため、25年までには不満を抱いた人々が組織的な反対運動を展開するようになる――といった具合だ。まさにジョージ・オーウェルが『1984年』で描いた、政府による監視・検閲が横行する全体主義国家の現代版のようでもある。

興味深いのは、同報告書が「このシナリオは予測ではない。むしろ私たちが将来に向けて準備していく方法、より良い未来を作るためにさまざま戦略を考え、リハーサルすることを可能にする仮説である」と、なぜかわざわざことわっている点だ。英語ではあるが、ウェブサイト上に今でも公開されているので、ご関心のある方は直接読まれてみるとよい(*http://www.nommeraadio.ee/meedia/pdf/RRS/Rockefeller%20Foundation.pdf)。

ロックフェラー財団(本部・米ニューヨーク)とは、ロックフェラー財閥創業者のジョン・D・ロックフェラーが1913年に設立した歴史ある民間慈善事業団体で、世界でも最も影響力があるNGOの一つとされる。「人類の福祉の増進、教育」を活動目的に掲げている。

「技術と国際発展の未来のためのシナリオ」と題されたこの報告書は、同財団(ジュディス・ロディン理事長=当時)が未来予測を得意とする米シンクタンク「グローバル・ビジネス・ネットワーク」(ピーター・シュワルツ会長)の協力を得て、1年間がかりで完成させたものだ。

鬼気迫るゲイツの予言

実は、マイクロソフト創業者の超富豪、ビル・ゲイツ氏も2017年、それに匹敵する鬼気迫る予言をしていた。スイス・ダボスで開催中の世界経済フォーラムに参加していたゲイツ氏は、CBSニュースのインタビューに答えて「ウイルスのパンデミックの影響は、すべてのサプライチェーンが崩壊するため驚くべきものになり、多くのパニックが発生するだろう。私たちの社会システムの多くが過負荷になる。しかし、パンデミックに備えてすべきことは多くある。その一つはワクチン開発に集中し、1年以内に新たなワクチンを開発できる方法を採用し、次の流行が起きたときに間に合わせることだ」と語った。

ゲイツ氏はさらに18年、マサチューセッツ医学会での講演で「パンデミックへの備えはほとんど進歩していない。軍が戦争に備える方法で世界がパンデミックに備える必要がある」と述べた。

新型コロナウイルスが世界に蔓延し始めた昨年2月には、ビル&メリンダ・ゲイツ財団を通じてコロナ対策に最大1億ドルもの巨額を拠出すると発表した。今年2月4日にはユーチューブチャンネル「ヴェリタシウム」のインタビューで「将来的にはパンデミックが確実に増えるだろう。(ファイザーとモデルナの新型コロナワクチンに使用されている)mRNAワクチン技術の研究を進め、1日あたりのPCR検査を(米国で)1千万回に増やし、検査とワクチンへの投資を増やすことで世界が次のパンデミックに備えることができる」と指摘した。

ゲイツ氏の予言が的中するとすれば、パンデミックの恐怖は今回で終わらず、ますます頻繁に発生し、世界を揺るがし続けることになる。また、ゲイツ氏の周辺で巨額が動くのには裏があるのではないかと、陰謀説も囁かれている。

少し話を戻すと、ロックフェラー財団の報告書が最近、注目されるようになったきっかけは、オランダの反EU、反移民を掲げる少数保守政党「民主主義フォーラム」のティエリー・ボーデ党首が今年6月5日、国会でこの報告書を取り上げたことだった。

ボーデ氏は「国民監視のための生体認証IDという話は現在のワクチンパスポートにつながっている。ロックフェラー財団やその他のゲイツ財団などは、大規模な世界のリセットを引き起こすために何十年も共謀してきた。グローバリストが計画したロックダウン、マスク、ソーシャルディスタンスといった国民に服従を訓練するための習慣をオランダ政府と議会は実行し、合格したのだ。おめでとうございます!」などと皮肉たっぷりの挑発的な演説を行った。

筆者はかかる証拠のない陰謀論に与するものではないが、世界最強財閥の一つとされるロックフェラーグループの中核をなす財団が描いた管理統制国家のシナリオが、世界各国で次々に現実化していくのを目の当たりにすると、事態の成り行きについて、いささか空恐ろしい気がするのもまた事実である。

著者プロフィール

八木沢安石

科学ジャーナリスト