絶賛自宅待機継続中のため、撮りためたＨＤＤに残っている映画もどんどん消化中。
昨日やっと観たこのイギリス映画「アンコール！」、久しぶりに心に刺さった名作でした。
（原題は SONG FOR MARION）
以前あの「プリシラ」のヴァーナデッド役で拝見し、大好きな俳優さんに。
テレビ番組「アナザースカイ」で三上博史さんとお出になった時も、名言の連続で感動でした！
主役のアーサーは、無口で頑固で人付き合いの苦手な偏屈な72歳。息子にも怒鳴ってばかり。
妻のマリオンは真逆の
明るく気さくで、誰にでも愛される素敵な女性。人の輪に入ることが苦手なアーサー、妻の前でだけは
その優しさや寂しさを出せる武骨な男。
余命宣告をされてしまう。
抗がん剤治療で余命を伸ばすよりも、好きなことをして楽しむ時間を過ごすことを選択するマリオン。
しかしアーサーは唯一心を許せる伴侶を失うことをどうしても受け入れられず、マリオンやその仲間に
あたってしまう。
妻マリオンを演じるのはあの名優バネッサ。レッドグレーブさん。こちらも素晴らしかったです。名前を聞くまで本人だとわからないくらいでした。愛する夫に、時には優しく、時には厳しく諭す
賢い女性。こんな風に歳を取りたいな、と思いましたね。
二人が出会ったのだから。君にも合う相手がきっと待っているよ」と。本当は心優しいアーサーなのです。
自分でもよい父ではなかったと自覚しているアーサー、息子とはことあるごとに衝突し、疎遠なままの
状態。亡くなる前のマリオンが、二人に慰めあうように強く願うも、その願いは全くかなえられず。
ことあるごとに怒鳴りあいになり、お互いの想いを伝えることができない親子。
「今まで何を成し遂げても、もめてもらったことがない。認めてほしかった」という息子に「いつも誇りに思っていたよ」というアーサー。「じゃあそれを俺に伝えたことがあったのか？もう遅すぎるよ」という息子に
返す言葉がないアーサー。今の私だから、「年寄りにもっと優しくしてあげなさいよ！」と思えるけれど、
昔だと、この息子と同じような娘だったなと苦い思いがよみがえりました。
実は私も亡くなった父親が苦手でした。遊んでもらった記憶もほとんどなく、楽しく話をした思い出もほとんどない。認めてもらいたくて努力をしてもほめてもらったこともほとんどなく、機嫌が悪ければ手を挙げられたことも。自分の祖父が、漁師で子供にすぐ手を挙げるような人だったと（孫には優しかったけれど）。そんな環境では、愛情表現なんてできやしないよね、と父親が死んで自分が精神的に大人になってから知りました。今母親とは非常によい関係になっているので、父親が元気なうちに、あのぎこちない
関係を修復できていたら。もっと楽しい時間が作れていたら。愛情をかけてもらえていたと理解できていたら。18年前に亡くなった父親への後悔は数えきれません。
なので、老人が必死に自分の心を開こうと努力し、息子に許しを請い、撃沈する場面では、もう
涙でした。辛くて。唯一愛を受け入れてくれた人は去り、深い悲しみと孤独の中にいるのに、唯一の家族からは拒絶され。自分だったらどうしたんだろうか、といろいろな想いが交錯しました。
そんな気力の亡くなったアーサーが、マリオンがいた場所をみるべくコーラスの場に参加した
時にはやった！と思いました！その場にいるだけではなく、自ら歌を歌うまでに。それを温かく迎えるマリオンの仲間たち。
歳をとってから、新たに何かすることは勇気がいるし、しかも一人で立ち向かうとなるとなおさらです。
アーサーの姿、それを応援している息子と孫娘。そこではもう号泣。
もはや私にとっても老後は遠い未来ではなく、すぐそこにある現実。
心を閉ざした72歳が、自らを再生していくこの物語。とてもとても心にしみる作品でした。
やっぱりテレンス・スタンプ様は最高です！
きっとどこかで動画配信していると思うので、皆様もチャンスがあればぜひ！おすすめの1本です。
