結構ホラーな「ゴジラ対ヘドラ」 〜 映画レビュー | ふるふワールド

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ゴジラシリーズの中では異色中の異色作。
当時、社会問題だった公害をテーマにしています。
ヘドラが硫酸ミストをまき散らしながら、学校の上空を飛び去るシーンでは体操をしていた生徒たちが次々とバタバタ倒れるところは三重県の四日市ぜんそくを思わせます。
幼年4才にしていきなり公害問題を突きつけられました。
その影響で気が付いたら中学時代に公害関連の本を読みあさっていました。

4才には怖いシーンがたくさん。
地下のゴーゴー喫茶(当時のディスコ)の階段をドロドロと流れおりてくるヘドロ。
(ちょうど階段付近に野良猫がいてヘドロまみれになり、誰かニャンコロ拭いてやれよ、と思いました)

 


信号が青になり、発進しようとした車が動かず、乗っていたカップルが
「あれっ?動かない」
と言っているとフロントガラスにヘドロがドロドロ流れ落ちてきて、数十台の車の上にヘドラが乗っかって次々と車を呑み込んでいく(上の画像参照)
躯体工事の鉄筋のみのビルを飛行中のヘドラが通過し、作業員が転落。落ちた作業員が骸骨になっていたり。

今回数十年ぶりに改めてみてみましたが、若者たちが富士の裾野でキャンプファイヤーをしてギターを掻き鳴らし、歌い騒いでいるのを、離れたところでジッと見つめている5、6人の地元民らしき老人たちの表情は完全にホラー。

赤いヘドラの目と形状も不気味で、最近のクズホラーよりよっぽどホラーしてます。
幼年期に見たためにトラウマになってしまい、怖いものが苦手になるパターンも多いですが、自分の場合は逆に魅入られてしまい、この原体験がホラーや怪談、オカルトを好むようになった遠因になっている気がする。

ヘドラは小さなおたまじゃくし状の生き物が次々と合体して大きくなるのですが、最初にゴジラと対決したときは弱くて、ゴジラが盛んに挑発のポーズを取りますが乗ってこず、小手合わせ程度で海へ逃げ去ります。
その後、ヘドラは工場の有害物質を含む黒い煤煙をたらふく吸い込み、ゴジラよりも大きくなり空も飛べるようになります。接近戦には滅法弱いヘドラですが飛行型に変身してゴジラへ体当たり、硫酸ミストと赤い光線は効果的で、ゴジラは片目を潰され、大苦戦。

海洋生物博士が小さなおたまじゃくし状のヘドラを使って実験した結果、2枚の電極板の陰陽の間に電流を流したところ、おたまじゃくしヘドラは鉱物を含んだ砂状のものになって死んでしまうということがわかります。それをヘドラの弱点として自衛隊に伝え、対ヘドラ作戦として、急遽、巨大な電極板を急造。

 

 



あとはその電極板の間にヘドラをおびき寄せるだけでしたが、ゴジラとヘドラの戦いで送電線が切断され、作戦に必要な莫大な電力を得ることができなくなってしまいます。
すぐに送電線の修理を進める中、なんとかヘドラをおびき寄せ、あとは電流を流すだけ。
だが、まだ送電線は復旧しない。

ここでゴジラが電極板に放射。ゴジラやるやん。
この作戦を察知するなんて、すげぇーーー!

この1作のみ、坂野監督なのですが当時新進気鋭の監督だったらしい、才能ありますねー。
なんでゴジラシリーズ1作だけだったんでしょうね。
画面を40分割くらいにして、一つ一つのブラウン管の画面に、政府への不満を訴える市民数十人を映し出すシーンなど、当時は画期的だったと思いますし、非凡さを感じます。
ヘドラによる汚染で水槽の中の熱帯魚が一瞬にして死に絶えるなど、細かい演出が散りばめられていて、無駄なシーンはほとんどないように思えます。
ゴーゴー喫茶でのサイケデリックな衣装も時代を感じさせますね。

この作品で特筆すべきは、空を飛べないはずのゴジラが自力飛行してることです。火炎を放射し続けながら、後ろ向きで前進飛行するというゴジラシリーズではレアなシーンが見られます。単にゴジラの異色作というだけではなく、個人的にはシリーズ最高傑作だと思ってます。
点数をつけるなら98点ですね。

返せ返せ。ミドリと青い空、返せ♪
の主題歌『かえせ! 太陽を』も当時、かなりインパクトがありました。