北陸のレコード歌謡

北陸のレコード歌謡

新民謡、社歌、俚謡etc

前回の記事から間隔が空いてしまった。
今回は、北陸地方の新潟、富山、石川、福井の4県民歌についてふれてみたい。

県民歌とは都道府県が制定した歌である。北陸4県の県民歌の制定時期は昭和20年代から30年代前半までで、歌詩には平和、躍進、生産など、戦後の復興から高度経済成長に差し掛かる当時の時代背景がうかがえるキーワード、弥彦・妙高山や佐渡島、立山連峰、白山など、県のシンボル的な山など名所が盛られている。


〇『新潟縣民歌』(コロムビアA568、SP盤)


  世紀明けゆく西北の 山河新たに旭(ひ)は映れて
  県民二百五十万 希望に燃えてこぞり起つ
  ここぞ民主の新潟県


昭和22(1948)年に新潟県が制定。歌詩は公募で、作曲は明本京静に依頼、レコードはコロムビアにて製作され、編曲は平川英夫が担当。歌唱は藤山一郎と前島節子。片面は新民謡で小唄勝太郎(新潟市出身)の『越佐小唄』。
躍動感、爽快感のある曲調で、レコード流行歌だけでなく地方の新民謡や社歌、団体歌も多く手掛ける藤山一郎の歌唱は安定感がある。


〇『富山県民の歌』(コロムビアPS-218、ソノシート)

  仰ぎ見る 立山連峰 青空に 輝くところ
  躍進の 理想かざして 高らかに 生産の歌
  声そろえ 声そろえ 共にうたわん 共にうたわん
  あゝ われら われら富山 富山県民


『富山県民の歌』の楽譜表紙(富山県立図書館蔵)

昭和33(1958)年の第13回国民体育大会開催を記念して富山県が制定。詩曲も一般公募され、歌詩は辻本俊夫、曲は牧野良二の作品が選ばれた。レコードはSP盤で製作されていないのか、33rpmのコロムビア製作ソノシート盤しか見かけない。同盤の編曲者は大野修、歌唱はコロムビア合唱団。伴奏は原信夫とシャープス・アンド・フラッツで、同バンドリーダーでジャズミュージシャンの原信夫(富山市出身)が監修を務めた。コロムビア合唱団の歌唱版のほか伴奏だけの軽音楽版も収録している。レーベル部分には富山県の県章が印刷されている。
行進曲調のメロディで「躍進」、「生産」といった歌詩の中の言葉が時代の空気を表している。とくに「生産」は1番に入れられており、インパクトがある。


〇『石川県民の歌』(コロムビアSPR1898=2代目、SP盤)

  白山に 朝日ははえて 青雲の はれゆくところ
  名にかおる 歴史をつぎて むすばれし われら県民
  躍進の 旗をかざして おおわが石川 ふるいおこさん


皇太子殿下(のちの昭仁天皇)御成婚を記念して昭和34(1959)年に石川県が制定。詩曲とも公募で歌詩は梅木宗一、曲は窪田新一の作品が選定された。レコードはコロムビアに委託製作され、服部逸郎の編曲で若山彰とコロムビア・ローズ(初代)の歌唱で吹込まれた。片面はフォークダンス用に編曲された演奏(服部逸郎編曲)。
メロディは行進曲調で、『喜びも悲しみも幾年月』の若山彰、『東京のバスガール』などのヒット曲があるコロムビア・ローズの共唱は親しみやすい。
実はこの『石川県民の歌』(SPR1898)は県民歌では2代目で、初代は昭和23(1948)年に製作された『石川県民の歌』(テイチク20005)。歌唱は菅原都々子と村澤良夫。そのSP盤は金沢蓄音器館に所蔵されている(注1)。


〇『福井縣民の歌』(ビクターPR1308、SP盤)

  長江は野に横はり 青海は岬にうたふ
  国どころ越前若狭 たたなはる山しうるはし

サンフランシスコ平和条約発効という事実上の日本の独立にあたって、県民の意気を高めるため県民歌制定の機運が盛り上がり、福井県が作詩・作曲を依頼し昭和29(1954)年に制定(注2)。作詩は県にゆかりがある詩人・三好達治、作編曲はクラシック音楽の作曲家、諸井三郎が手掛けた。レコードはビクターに委託製作され、倉田芳雄と小林滋子、日本ビクター混声合唱団の歌唱で録音されている。片面は『意気の若越』で渡辺はま子、羽山和男による共唱。レーベルには福井県の県章が記されている。
『福井縣民の歌』を聴いてみると、クラシックの歌曲調に作られていることに気づく。歌詩、曲ともに格調が高く、その道の文化人に依頼しただけのことはあると思うが、「県民の歌」という趣旨を考えると、正直なところ誰のための歌なのか?と思ってしまう。逆に片面の『意気の若越』は流行歌調のメロディで、歌詩は福井県の新民謡といってもよい仕上がりである。


注1 金沢蓄音器館ホームページ「館長ブログほっと物語」
注2 中山裕一郎監修『全国 都道府県の歌・市の歌』平成24年、216ページ